★イベントレポート(韓智仁)★ FENICS新春・川柳ワークショップ「野に出ると川柳にあうぞ」(2025年1月5日開催)
韓智仁(文化人類学/大阪大学・春風社)
年始休みのおしまいの日曜日、東京大田区にある昭和のくらし博物館にて、FENICS主催の新春・川柳ワークショップ「野に出ると川柳にあうぞ」を開催しました。
川柳人の暮田真名さんを講師として、フィールドワーカー・人類学者たちが川柳をいちから学び、博物館の展示や街なかから川柳の素材を探し、川柳をつくって、句会をしてみました。一日をかけて、川柳の世界の深みを体験することになりました。
午前中は、暮田さんからの川柳についてのレクチャー。川柳の歴史や、現代川柳の鑑賞方法を解説していただきます。
午後は、川柳につかう語を集めるために、昭和のくらし博物館の展示を見学したり、博物館のある久が原の町中を歩き回ったり。川柳につかえそうな言葉を見つけるために、まわりを見る目がふだんとはちょっと変わります。博物館のパネルの文言も注視しながら、展示物とその言葉にあらたに出会いなおす感覚をめいめいに持つことになりました。
その後、川柳を作る時間に。川柳(それも現代川柳!)をつくるのははじめてですが、午前中のレクチャーも思い出しながら、集めてきた言葉を組みあわせながら、575に当てはめたり当てはめなかったり、こんなもんだろうかと各々試行錯誤。
この日の最後には、こうして作った句を発表し評しあう句会をおこないました。川柳をつくるのもはじめてなら、他の人の川柳を批評するのもはじめてでしたが、各々の感想を素直に出しあいます。「この句はこんな印象をもちました」「自分のつくった句は町中のどこどこ看板にあった言葉をつかっていて…」「実はこの句はこういうつもりで作ったんですが」などなど、すっかり夜になっていましたが、大盛りあがりで会は終了しました。
今回のワークショップから、フィールドワーカーはどのようなレッスンを得られたでしょうか。
もちろん、で出会った言葉や出来事をもとに川柳をつくる、その作法の最初のステップを学ぶこともできたでしょう。そしてさらに、現代川柳という、なにが書かれているのかちょっとわからないし、作っている本人もそれを知っているわけではない、けれどもそれを丸ごと味わおうとする、そういう活動や作品から、「他の人が言っていることややっていることが理解できないこと」「自分の書いたものにいまいちピンと来てもらえないこと」の、ポジティブな側面を考えるヒントを得たようにも思います。
年始も年始から、充実の1日になりました。
【今回のワークショップでつくった句のなかから】
*きしゃぽんピロティ そいつがルパンだ 佐竹真悠子
*環八の馬がいろいろあって 韓智仁
*黒電話にでんわをかける今日もきました 下中菜穂
*あのへやで死んだつもりはなかったが 小暮めいりん
*内弁慶もうじきうちのサンタが死ぬ 丹羽朋子
*君を失ってからのオール電化 小西公大
*わんにゃんとひとつ歳とる商行為 津田啓仁
*泣き笛がからだのどこかにあるでしょう 暮田真名