イベントレポート(津田啓仁 文化人類学 秋田公立芸術大学)

第一回、無事終了いたしました。ご来場いただいた方ありがとうございました!満席につきご参加いただけなかった方は、本報告書をお読みいただきながら、次回以降のご参加をぜひお願いいたします。

<坂ノ途中・小野さんのお話し>

まずは坂ノ途中・小野さんから、坂ノ途中が大切にしていることと人類学を研究されたご経験の共通点についてお話しされました。興味深かった点を3点にまとめますと、

●学生時代に巡った「遺跡」から感じた「社会は終わってしまうものなのだ」という感覚が原点の一つ。だからこそ持続的な農業という企業の方針が見えてきた。 

小野さん「100年先もつづく農業を」

●野菜ビジネスも人類学も、身体感覚がとても重要。まず食べてみるという経験を重ねることで、事業領域の理解や自信が高まっていく。

●わかりやすさに逃げない。企業経営の中では、わかりやすい言葉に頼ってしまいがちだが、さまざまなステークホルダーと関わる上では、わかりあえなさを楽しむことこそ、遅くても近道なことがある。

こうした点は、フィールドワークの経験がある人や人類学を学んだ人にとってとても重要なポイントかもしれません。

また、トークの最中、坂ノ途中のチャイとクッキーが振舞われました。大変濃く、おいしいチャイでした!

<魚草・大橋さんのお話し>

続いて、魚草・大橋さんから上野に構えるお店のご様子と店での様々な取り組みについてお話がありました。

あんこうの肝の刺し身を調理する大橋さん

大橋さんからは、魚草の目玉メニューの一つ、あんこうの肝刺しがご提供されました。こちらもびっくりするほど美味しかったです・・!

●大学在学中に、上野の街に”感染”してしまった。以来、直接人と関わっていく感覚を仕事に。

●食材だけではなく、運ぶ技術も魚屋の重要な要素。魚草では肝をよく扱う。肝は海のエネルギーを凝縮したようなものであり、それを運搬・冷凍技術をうまく組み合わせることで提供している。

●お店の中に「よくわからないもの」を置いておく。例えば「音楽+酒 1000円」のようなメニューを用意し料理ではなく体験を提供したり、アルバイト学生の研究発表の報告会をしたり。

この他、様々なお話が写真スライドと一緒にご紹介されました。

アメ横を語る大橋さん

<4人でクロストーク>

クロストークでは、お二人に加えて、バナナの研究者・佐藤靖明さんと、秋田を拠点に活動する津田も交えて、4人でトークを行いました。来場者からも積極的にご質問いただく中で、2つ印象的だったことを抜粋します。

●ぼんやりとわかっている、という状態の難しさがある。例えば、農業や野菜に対する一般的なイメージとは裏腹に、品種や有機・無機栽培には様々な知識や制度が絡まっている。中途半端な知識で理解するのではなく、実際に身体感覚でわかること(例えば、いろんな食べ方で比較してみること)を大事にしたい。

●異業種の人とのお仕事の中で、彼らが使う言葉に注目する。普段馴染みがない表現には、その人の仕事観や世界観が含み込まれていて、それをトレースすることでわかることがある。相手にこちらの意図や主張をうまく理解してもらおうとするより先に、相手への理解が必要。

お二人とも、これまでの農業や食にまつわる常識を超えて、ある意味、アマチュア的に「わからない」という状態からくる発想のジャンプを取り入れて、ユニークにお仕事を展開されているように感じました。フィールドワークという経験は、そうしたことの土台になる重要な要素なのかもしれません。