FENICS メルマガ Vol.1 2014/08/25
1.今月のFENICS
☆FENICSメルマガ創刊!☆
このたび、フィールドワーカーをつなげるグループ
FENICS(NPO法人申請中)のメルマガが創刊の運びとなりました。
メンバーのみなさまに地球のさまざまなフィールドワークの様子を
楽しんでいただくとともに、
このメルマガが新たな創造的つながりを生み出すきっかけとなれば嬉しいです。
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(柄谷友香)
3.フィールドワーカーのおすすめ本(増野亜子)
4.フィールドごはん(大橋麻里子)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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被災地に学び、防災に生かすためのフィールドワーク
(柄谷友香)
東日本大震災後、すぐさま私は一人被災地に向かい、岩手県陸前高田市の避難所に暮らし始めた。半年後には、被災者らと共に仮設住宅に移り、長期にわたるアクションリサーチを継続してきた。最大のリサーチクエスチョンは、被災という急激な環境変化と喪失の中でも、自ら知識や情報を収集し、自ら内外の社会的ネットワークを活用し、そして自ら生活や人生を再構築しようとする力「被災者のレジリエンス」の究明である。東日本大震災を経験し、ハード対策やそれを補うべき行政主導による災害対応の限界が露呈した。一方、私が共に暮らした被災者は、行政の支援が行き届かず、暖も食事もない中で身を寄せ合い、周囲の混乱に惑わされず、危機の間自らを統治し、復興事業の遅れなど状況変化にも上手く適応してきたのである。
超広域大規模災害では、「行政=支援する側」、「住民=支援される側」の構図が成立せず、従来「公助」が担ってきた部分を被災地の「自助」、「共助」で担わなければならない事態となる。すなわち、被災者自身が生活再建に必要な知識や知恵、ノウハウを学びながら、いかに主体性を発揮できるかが真に問われるのである。被災地でのフィールドワークは、まさにその実態と可能性を学ばせてくれる。
災害対応にヒントはあっても、“正解”を見出すのは難しい。災害発生時期、時刻、場所によっても被災状況は様々である。しかも、想定外力が巨大化するほど、災害経験のない者にとっては、災害像をイメージし難く、具体的な対策に結びつかない可能性がある。一方で、災害は繰り返し発生しており、その時に現場に居合わせた人々、関わった人々が対応に迫られ、被災を乗り越えるための膨大なノウハウが蓄積されてきている。
被災地に暮らすフィールドワークでは、被災者と調査者(非被災者)という異なる境遇にある者同士が「災害現場」という厳しい環境を共有し、互いの主観をぶつけ合い、「被災するということ」を客観的かつリアリティをもって描き出すことができる。そこには、災害対応の断片的な記述(形式知)だけでなく、それを乗り越えてきた経験者らの表象化されない知識や知恵、ノウハウ(暗黙知)が含まれ、経験なき者への理解と共感を促す生きた教材になり得るものと考えている。
東日本大震災から3年、復興の途についたばかりだ。「被災するということ」、そして「被災を乗り越える」術を生きた教材として語り継ぎ、減災社会の実現に向けて生かしていきたい。
「フィールドへの行き方」
JR一ノ関駅からバス・車で約1時間半。JR仙台駅から気仙沼・大船渡方面バスで約3時間。復興地・陸前高田にぜひお越しください!
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3.フィールドワーカーのおすすめ本
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ジェイムズ・エルロイ+オットー・ペンズラー編「ベスト・アメリカン・ミステリ」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 2005年
(増野亜子)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/211769.html
フィールドワーク中はほとんど本を読まない。とくに学術書は読む気がしないし、読んでも頭に入らない。私の専門はバリの芸能と音楽の研究。調査中はくたくたになるまで楽器を練習し、芸能を見に行き、人々の芸談を聞いてすごすうちに、脳味噌の働き方が変わってしまい、文字による思考を受け付けなくなる。
しかし本は持っていく。長雨や体調不良で外出できない時、せっかく来たのにみんな多忙で相手にしてもらえない時、貴重な時間を無駄にしていると感じて落ち込みそうになると、寝っ転がって本を読み、心を鎮める。バリの暮らしとまるでちがうアメリカのミステリにいっとき現実逃避する。雨がやんだらさっと行動再開できるように、途中で中断しやすく、のめりこみすぎない短編集で、軽くて小さい新書か文庫がいい。
アメリカ・ミステリの凄腕目利きであるペンズラーは、著名なミステリ作家のゲスト・エディターと一緒にたくさんの短編集を出しており、どれも条件に合っていて、はずれがない。短時間の気分転換が必要なフィールドワーカーにお勧めです。
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4.フィールドごはん
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アマゾンで造る口噛み酒
(大橋麻里子)
キャッサバの口噛み酒、これが実に美味い。見た目はどぶろくのように白くてドロッとしているが、味には何ともいえないコクがあるのだ。
ペルー・アマゾンのウカヤリ川沿いに住むシピボの人びとは、お祝いがあると決まって口噛み酒を準備する。できあがった口噛み酒は、村中の人に振る舞われる。大人であれば2リットルほどの量でも、グイッグイッと喉を鳴らしながら一気に飲んでしまう。こうして、酒が底をつくまで宴は続く。
口噛み酒を造るのは女性の仕事である。鍋で煮たてたキャッサバを大きなしゃもじで潰しつつ、同時にその一部を口一杯に入れて唾液を含ませるようにしながら噛み、それを鍋に戻すという作業を繰り返す。これまでにわたしも何度か酒造りを手伝ってきたが、噛む回数が足りない上にどうやらもともと唾液が少ない人間のようで、みなからは「もっと水っぽく!」と怒られてばかり。よく噛まれた酒は仕上がりが違うのだ。
口噛み酒が上手に造れることは、一人前の女性として認めてもらうためのひとつの基準ようである。わたしも飲むばかりではなくて、いつかはみなを唸らせる口噛み酒を造れるようになりたい。
*FENICSメンバーサイトのメルマガコミュニティに
写真を掲載していますのでぜひコミュニティに参加してご覧下さい!
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5.今後のFENICSイベント
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2014年11月1日(土)FENICS 100万人のField Workerシリーズ出版記念会
場所:清澄庭園大正記念館(東京都江東区)
http://teien.tokyo-park.or.jp/contents/index033.html
会費:1500円
13:30開始(13:15開場)、16:00終了
(閉会後、近くで親睦会を開く予定です)
出版企画「100万人のField Workerシリーズ」刊行開始と
FENICSの活動本格始動を記念いたしまして、
FENICSの活動紹介とメンバーの交流を目的とする会を企画いたしました。
私たちの団体の活動と「100万人のField Workerシリーズ」の全体を紹介するとともに
対談企画や写真展示、メンバーの交流を図る機会を企画しております。
詳細については後日お知らせいたします。
ぜひみなさま万障お繰り合わせの上、ご参加いただきますようお願い申し上げます。
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6.チラ見せ!FENICS
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5巻『災害フィールドワーク論』(木村周平、杉戸信彦、柄谷友香編)
http://www.kokon.co.jp/book/b182624.html
国際的にも国内的にも、災害が今後ますます重要な社会的課題となることは明らかです。
災害は、ある社会集団が、それを取り巻く自然的・社会的環境の変動に対応できなくなる
ことで姿を現します。その意味で、自然災害の被害軽減は、自然的なメカニズムの理解と
社会的な対応力の向上という、両側面から取り組むべき問題であり、そこで重要になるの
は、狭い学問領域にとどまらず、問題に合わせて多様なアプローチを組み合わせていくこ
とです。このため本書は、人文社会系・理学系・工学系の研究者が集まり、それぞれのフ
ィールドワークのアプローチと、自身の失敗や驚きも含めた試行錯誤の経験を共有するこ
とを目指しました。ぜひ「ポスト・東日本大震災」世代のフィールドワーカーたちが本書
を手に取ってくれることを願っています。
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7.FENICS会員の活動
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増野亜子『声の世界を旅する』(オルフェ・ライブラリー)音楽之友社
2,700円
http://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?code=371090
今回コラムをお寄せいただいた民族音楽学者増野さんの新著。
11の章で読者を声の世界の旅路へいざないます。
冒頭「各章の関係図」から、それらの章の位置関係が明示されており
全体の見取り図として役に立ちます。
著者はバリの音楽が専門ですが、それにとどまらず
世界各地のさまざまな民族音楽を取りあげており
人の声の世界の広がりと奥深さに圧倒されます。
「声の響きには私たちがもって生まれたものと、文化や歴史によって培われた美学や技法の両方が鮮明に刻印されている。……声の表現が興味深いのは、この世に一つしかないその人自身の個としての声のあり方と、その声のもつ文化的・社会的な側面の両方が、分かちがたく結びついていることにある」(p.14より)
みなさんも、声の世界を旅してみませんか。
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寄稿者紹介