FENICS メルマガ Vol.124 2024/11/25
1.今月のFENICS
はや、師走に入ってしまいました。日本の国政選挙のあとの、アメリカ大統領の選挙のあり方にも、多くの人が驚いたことでしょう。来年から、また世界がどうなっていくのか。女川原発も選挙騒ぎの最中、再稼働されてしまいました。
世のなかの状況に憂えていたら、我が家は風邪のオンパレード、編集人はワンオペの疲れがたたって種類の異なる風邪に次から次へとやられております。インフルか、コロナか、風邪か。日本にいても、海外にいても、体力がおちるとこれぞと入ってくるウイルス、バクテリア。みなさまも、どうか日本の冬に負けないよう、お気をつけください。
世のなかの状況に憂えていたら、我が家は風邪のオンパレード、編集人はワンオペの疲れがたたって種類の異なる風邪に次から次へとやられております。インフルか、コロナか、風邪か。日本にいても、海外にいても、体力がおちるとこれぞと入ってくるウイルス、バクテリア。みなさまも、どうか日本の冬に負けないよう、お気をつけください。
フィールドから、ほやほやの投稿をしてくださった佐藤靖明さんの記事もお楽しみください。そして、FENICSの新春企画は韓智仁さんのアイディアで川柳のワークショップです!予定をみて参加をご検討ください!改めて広報いたします。
さて、本号の目次です。
ーーーーーーーーーーーがおちたときに、
1 今月のFENICS
2 私のフィールドワーク
3 フィールドごはん(佐藤靖明)
4 子連れフィールドワーク(椎野若菜)
5 FENICSよりお知らせ
6 会員の活躍(飯塚宜子/久世濃子/佐藤靖明)
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2. フィールドごはん
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「アフリカ都市・のホームガーデン料理」
佐藤靖明(第11巻『衣食住からの発見』編者)
ウガンダの首都カンパラは、人込み激しく活気にあふれる都市である。人口増加が著しく食材の価格が高騰していて、近年肥満の人が増えているとも聞く。人びとはどうやって健康的な食生活を送ることができるのだろうか?滞在調査中、あるウガンダ人から自宅での昼食に招待され、それを考える機会を得た。
招いてくれたのは、古い友人であるジェラードの妹、アリスである。ジェラードとアリスの実家はウガンダ西部の田舎にあり、私は何度か滞在して調査をさせてもらったことがあり、家族ぐるみでお世話になっている。
ジェラードが運転する車に乗り、郊外の渋滞の道を抜けて一軒家がつづく住宅街をしばらく走ると、コンクリート打ちっぱなしの2階建ての建物がみえた。アリスの家だ。
到着すると、アリスと19歳、4歳、3歳の子どもたちが迎えてくれた。そして、待ってましたとばかりにすぐ食事の時間となった。
用意してくれたのは、家で育てた野菜やニワトリを中心とする、健康志向の料理だった。アリスは「主食以外はだいたい家で育てたものを使っているの」と自慢げに話してくれた。食堂やパーティーでよくあるビュッフェスタイルのように、自分で好きなだけとって食べた。野菜や鶏肉はしっかりとしたかみごたえで、味が実に濃い。さまざまな種類の野菜は新鮮で、そのいろどりも深く、さすがウガンダだと思わせてくれる。思わず何度もおかわりをしてしまった。なお、バナナは、甘くない状態のものを皮ごと煮ていて、おかずとの相性もよかった。
出してくれた料理の中に、ゆでたウズラの卵があるのを見つけた。皮をむいて食べてみたら、大きな黄身が入っていたが味に変な癖がなく、何個も食べられる感じだった。
食後に、家の裏小屋でウズラを飼う様子を見せてくれた。横4m×奥行1.5mの檻4層の中に、すごい数のウズラが入れられている。400羽以上いるそうだ。ウズラは成長すると毎日産卵するので、いつもたくさんの卵が手に入れられる。化学的な薬などは与えず、トウモロコシを粉にする際にでるふすま、ヒマワリや綿花の種をケーキ状にしたものなどを与えているという。生でも安心して食べられるところも見せてくれた。アリスいわく、「ウズラは都市の狭い家でも育てることができる。栄養があり、おかげで子どもたちが病気にかからずに元気に成長してくれている。私も肌艶がよくなったよ。また、お金稼ぎにもなるのよ。他の家でも育てたら、カンパラの食がもっと良くなるのに」とのことだった。ウズラの卵はオレンジの果実とともにカプセルに入れて栄養食品としても販売しているのだそうだ。
自宅の周辺や庭では、ウズラ以外にも、ニワトリや野菜、果物をオーガニックで育てていた。アフリカの都市では、一般に経済的な理由から、田舎に比べて多様性のない貧相で偏った食生活になりがちになる。アリスは10年以上前から、都市でのよりよい食事を追求していて、自分のことを「都市食生活研究者」と呼んでいる。私は彼女の活動をみて、将来のアフリカの食をみたような気分になった。
※アリス氏は、YouTubeで「ECO BACKYARD FARM」というチャンネルを運営している。興味がある人はぜひご覧になってください。
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3. 子連れフィールドワーク⑤
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5歳児と10歳児とともに、ウガンダ調査へ 2023夏⑤
椎野若菜(社会人類学・アフリカ研究/FENICS・東京外国語大学)
無事に二国間交流事業の二日間の研究会を終えてほっとしたいところだが、嘔吐と下痢を繰り返した5歳児の先行きが不安なので、引き続き点滴を受けるために病院通いをする。私たちの滞在先には、ひっきりなしに夫の知りあいや親戚がやってくるので、ほっとする間もない。フィールドワークと腹をくくると楽しいのだが、連れてきた子どもがひどい咳をしていたりすると、心のなかで「弱ってるんだからうつさないで!!」と叫んでしまう。二男のLがそれでも、少しずつ、治ってきたので安心し始めた矢先。今度は、帰国日の前々日、なんと、長男Jが嘔吐・下痢に苦しみだした。子どものクリニックに連れて行くと、必ずマラリアチェックをする。幸い結果は陰性だった。微熱や腹痛、食欲不振は続き、帰国前日の朝方に、頭が痛い痛い、お腹が痛いと11歳の男子が泣くので、朝5時すぎに病院に改めて走る。いつも渋滞する道も車がまばらである。24H小児クリニックにて検査を再びするが、バクテリアが悪さしているのだという。翌日が日本への長旅の日であるのに、不安が募った。
帰国当日。Jはなんとか動けそうである。毎度ながら大騒ぎでパッキングをして、エンテベ空港に向かう。長蛇の列に並びチェックインしたあとも、子どもたちはそれぞれのヴァイオリンを背負い、自分たちの鞄を持ち、親子3人の帰路に着いた。
子どもがいるので交渉して機内に早く入れてもらい、なんとか、飛行機に入った~、座席に着いた~!と思ったとたん、Jが嘔吐。ほとんど人がいなかったのでよかったが、私は内心うろたえた。なんとか始末をして、人と隔離した座席がないか聞くが、「本日は満席です」とそのままでいることになった。近くにいた日本人男性が驚いて、離れた座席への変更を求めて移動した。(反対の立場になれば、もちろん気分はよくないだろう、嘔吐だけみると「コロナか?!」などと思うのはふつうだ)。とにかく、よほどでなければ降りるという選択肢はないので、なんとかまず、アジスアベバまでもってくれ~!と祈るばかり。エチオピア航空に乗ったことのある人はご存じのように、アジスでの乗り換え時間が1時間ちょっとしかない。少しでも飛行機が遅れると、荷物検査の列に並ぶ時間が長いと子連れでも何度も走ったことがある。手荷物のカートなどほとんど手に入らない。二男Lは走れるものの、気を張っていないと面白いものがあればふらふら寄り道してしまう。長男Jはよろよろ走る・・・何とか間に合い、Jはアジスーソウル―成田では、ぐっすり眠った。
3人での帰国、帰宅を果たしほっとしていたところ、Lも微熱、またJが高熱、頭痛を訴えて泣きだした・・・その痛がり方から、私自身は自分自身のマラリア発症時をどうしても思い出してしまう。検査してほしいと改めて夜中に日本の医療機関に電話してみるが、私自身が入院経験のある駒込病院の感染症科では「小児は扱っておりません」
さっそく購入して持ち帰ったマラリア治療薬にふみきった。三日間、飲み切ったものの、Jは夜中も頭痛を訴え続け、さすがに怖くなってきた。新たに、今度はネットで調べた「国立国際医療研究センター」に連絡し、小児科の医師が、連れてきたら診ますよ、と言われたのが午前3時。しくしく泣いては寝入る、を繰り返すJと、ぐっすり寝入ったLを連れて行くしかない。二人を車に寝かせながら、住まいのある府中から高速を使って新宿に向かう。こんな二人を乗せた初めての病院に向かう都心の夜中のドライブも、なかなか緊張が走る。
いざ病院につくと警備の年配のおじさんが、車椅子はあちら、と遠くを指さす。「私1人なので、手伝っていただけませんか?」といっても、指さすばかり。走って、二つの車椅子を運んでくる。寝こけているとはいえ、Lを車内においておけない。いまさらもう一方の警備の人が「1人なの?」二人を車椅子にのせ、さすがに1人はインターホンででた看護師に助けを求め、夜間入口から入る。コロナ禍、コロナの可能性も考え隔離モードだ。いくつかのドアをくぐり、診察を受ける。電話にでてくれた医師はちらりと姿をみせ、ほかの女医さんが見てくれることに。
いくつか、マラリアも含め血液検査をする。そして結果は・・・・なんとマラリアでもなく、インフルエンザBだった。注射と点滴をしましょう、という。ところが、驚くことがおこった。その医師は、自らの袖で点滴の針を曲げてしまったものの、同じ曲がった針をふたたび刺そうと何度も試みたのだ・・・ぐりぐり、えぐるように。。正直、針が曲がった時点で、針に限りがあるとは思えない日本の病院で、換えるべきではないのか?ただでさえ苦しいのに、針で拷問を受けたかのようになったJは消耗してしまった。ベテランと思われる看護師が近くにいたが、彼女も無言だった。驚いた。ただ、驚いた。安心して医療の手当を受けられると思い気や、このような経験を日本でさせられた。患者に医師からの説明もなく、点滴はおこなわなかった。
検査結果は想定外のインフルエンザBの疾患。すでに弱っていたJは空港からの道中で、もらってしまったのだろう。マラリア治療薬の投入、そしてインフルエンザの治療薬。身体に大きな負担をかけてしまった。8月後半から帰国後までの病気で、いつもの元気なJが、すっかり体力を落としてしまい、9月末の運動会ではいつもの実力を発揮するまで身体が戻らなかった。
アフリカでのバクテリア疾患は、アフリカに慣れていない日本人、また特に子どもはよくあることである。今回、カンパラで小児のクリニックを探す過程で、現地の家庭でも、バクテリア疾患で子どもたちがいつもクリニックに行っていることが分かった。
今回の教訓は、子連れでアフリカから日本に帰ることになった際は、アフリカにいる間にマラリア治療薬を購入しておくのは常識。日本に帰国したからの対応としては、高熱と頭痛が続く場合は、マラリアの検査が受けられる病院に早く行くのが、やはり先決である。アフリカではすぐ、「その辺にある」クリニックですぐにマラリアの検査をしてくれるのだが、日本は検査をしている病院自体がかなり少ない。すぐに動けるよう、検査を実施する病院名がいくつかアタマに入っているほうがよい。
来年にアフリカに行く際には、もっと強くなってくれている!と期待して、子連れ調査を楽しみにしたい。
(終)
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4. FENICSよりお知らせ
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FENICSでは、下記のように新春のイベントを企画しています。
まもなく、参加申し込みを始めますので、少々お待ちください!
①2024.12.7~8日に、FENICS理事の白石壮一郎と椎野若菜が企画し、ウガンダ研究者と共に調査を実施した二国間交流事業(ウガンダ)の成果として、シンポジウムを開催します。フィールドとの関係、フィールドにおける研究者との関係、フィールドにおける疑問を現地の研究者と共に考えて行く研究手法と体制づくり、といったことにご関心のあるかたもお出でください。
AA研 国際集会 「状況のなかの選択、学生のアイデンティティとエイジェンシー:ウガンダの大学教育と若者たち」
場所:東京外国語大学AA研大会議室303
言語:英語
Access: http://www.aa.tufs.ac.jp/en/about/access
詳しくはこちら https://www.aajoint.live-on.net/en/2024/11/2024-12-7sat-8sun-ilcaa-symposium/
詳しくはこちら https://www.aajoint.live-on.net/en/2024/11/2024-12-7sat-8sun-ilcaa-symposium/
②FENICS 新春・川柳ワークショップ:野にでると川柳にあうぞ(仮)
企画:韓智仁
企画:韓智仁
フィールドワークをしているとさまざまなことを体験しますが、論文でもエッセイでもうまく表現できない物事ってたくさんあります。そうしたフィールドでの経験を表現するひとつのツールとして、川柳(現代川柳)を学んで、実際につくってみる、そしてフィールドワーカーとしてどういった使い出が川柳にはあるのかを一緒に考えてみるワークショップを実施することになりました。いろいろな表現活動にご関心のある方も、川柳ってサラリーマン川柳ぐらいしか知らないよという方も、ふるってご参加ください。
講師の暮田真名さんは、著書の『宇宙人のためのせんりゅう入門』で、現代川柳を社会の「普通」からこぼれ落ちていこうとするもの・マイノリティに目を向けるものだと述べています。そうであるならば、野に出て、世の中から目を向けられてこなかった人たちのもとに話を聞きに行き、あまり注意を払われてこなかったものを探しに行くフィールドワーカーの態度には、現代川柳の実践と重なる部分が多くあるのではないでしょうか。
今回のワークショップでは、暮田さんから川柳・現代川柳のレクチャーを受けたあと、参加者みんなで外に出て川柳のタネを探し、一緒に川柳を作り、そして発表会(句会)をする、「知る」と「やってみる」を全部込みで行います。
2025年新春、川柳という新しい世界を訪ねてみませんか。
■日時
2025年1月5日(日) 10:00~18:00
■場所
昭和のくらし博物館
東急池上線の久ヶ原駅より徒歩8分(*久ヶ原駅までは五反田駅から約15分、蒲田駅から約10分)
東急多摩川線「下丸子」駅より徒歩約8分(*下丸子駅までは渋谷から多摩川駅経由で約20分)。
■参加費
1500円(博物館入館料の500円込み)の予定
■募集人数
7名程度(先着順の予定)
■応募資格
フィールドワークを行う研究者・院生で、川柳や詩の表現に関心がある方
※当日までに『宇宙人のためのせんりゅう入門』(左右社)を一読されることを推奨します
■講師:暮田真名さん
1997 年生。川柳句集『ふりょの星』(左右社)。他に『補遺』『ぺら』(私家版)。『はじめまして現代川柳』(書肆侃侃房) 入集。「川柳句会こんとん」主宰。「当たり」「砕氷船」メンバー。
NHK 文化センター青山教室で「現代川柳ことはじめ」講師、荻窪「鱗」で「水曜日のこんとん」主催。
〈代表句〉
いけにえにフリルがあって恥ずかしい
コングラチュレーション 寝ない子 コングラチュレーション
2×2=4って夏の季語なの?
〈主な著作〉
句集『ふりょの星』(左右社)
川柳入門書『宇宙人のためのせんりゅう入門』(左右社)
■当日スケジュール(予定)
10:00- 開会、暮田さんより現代川柳についてミニレクチャー
12:00- 外に出て言葉を集める(途中各自で昼食)
14:00- 集めた言葉をもとに川柳をつくってみる
16:00- 発表会(句会)
17:30 閉会
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5. FENICS会員の活躍
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・飯塚宜子さん(正会員)
本メルマガでも何度か紹介しました、飯塚さん主宰の「マナラボ ー環境と平和の学び」ーー「子どもや市民を中心に、地域研究者や文化人類学者、俳優、ファシリテーターらが集い、〈頭〉だけではなく〈身体〉を使い、「共に構成し理解を深める学びの場」としてのワークショップやプロジェクト実践を行うプラットフォーム」が地域研究コンソーシアム(JCAS)賞を受賞しました。おめでとうございます。
・久世濃子(正会員)
久世濃子さんが監修した子ども向けの本が出版されました!ぜひともご入手ください!
たけがみたえ 作・絵/久世濃子 監修 あかね書房
1,650円 (本体1,500円+税)
ISBN 978-4-251-09981-5
初版 2024年11月
・佐藤靖明(理事)
生き物文化誌学会の雑誌『ビオストーリー』42号が出版されました。この中で、「信州から考える日本の唐辛子文化」という特集を松島憲一さん、山本宗立さん、私が企画しました。唐辛子研究は学術書も多く、松島さんも数年前に『とうがらしの世界』を出版されていますので、それらと違った側面を打ち出すことに工夫を凝らしました。グローバルとローカルの両方を視野に入れた内容になっています。
・大石高典(東京外国語大学)
アフリカからの交換留学生の渡航費の工面のためのクラウドファンディング
「アフリカの留学生を東京外大へ!日本とアフリカの交換留学を続けたい。」
ぜひご協力ください!プロジェクト概要について、こちらをご覧ください。
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以上です。お楽しみいただけましたか?
みなさまからの情報、企画、お待ちしています。
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お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/