FENICS メルマガ Vol.18 2016/1/25
1.今月のFENICS
暖冬も終わり、今度はたいへんな大雪が東京や西日本、そして沖縄に・・・雪に慣れない地域では、たいへんな思いをされているかと想像。日本の四季、楽しみたいものですが・・
FENICSのコアメンバーはただいま、13巻『フィールドノート古今東西』がもう少しで生まれそう、追い込みです。また12巻『女も男もフィールドへ』も絶賛編集中ですが、それにともない、あらためまして、アンケート、拡散の協力をお願いいたします。
巻末にその結果を掲載予定です。
★「フィールドワークとキャリアアップ、子育て、介護などとの両立を考えるアンケート」を12巻にちなんで実施中です。まだのかた、ぜひとも、ご協力をお願いいたします。会員に限りませんので、ご存知のMLやFBなどでお知らせくださるとありがたいです。https://goo.gl/e1nRGg
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(塚原高広)
3.フィールドワーカーのおすすめ(竹ノ下祐二)
4.フィールドごはん(國弘暁子)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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雨季でもないのに
塚原高広(2巻『フィールドの見方』分担執筆者)
パプアニューギニア北西部沿岸、東セピック州とサンダウン州の州境近くの村々に長年通っている。後ろに山を仰ぎ、わずかな沿岸の平地に家がへばりつくように連なっている。仕事の合間に潮騒の音を聞きながら山を眺めていると何とも幸せな気分になる。
2012年9月、医療施設利用のアンケート調査準備のため東セピック州都のウェワクを訪れた。初めの1週間で20の村々を巡回して調査員をリクルートし、翌週に彼らを1か所に集めて調査説明会を開く予定である。最も遠い州境の村までランドクルーザーなら3時間で行ける。しかし、山からいくつもの急流が海に注ぎ込んでいて、じゃぶじゃぶと渡って行かなければならない。
ここでは観光産業が発達しておらずレンタカー代は一日25,000円もする。業者も少ないので、車を借りたり信頼できる運転手を確保したりするのも一苦労だ。このときは、なじみの運転手は別の仕事で手配できず新しい運転手を雇った。昨夜は雨が降っておらず路面は乾いていて車は快走していく。運転手は信頼できる性格だったが、私の行く村には何年も行ったことがないという。最後の川を渡ろうとして事件は起きた。
この川は途中に深みがあるのでそこを避けて大回りをしなければならない。運転手は不注意にもまっすぐに川に突っ込み、あっという間に左後輪を深みに入れてしまう。脱出しようとしてアクセル全開にするが、よけい川底が掘れるだけである。後部ドアからキャビンに水が入ってきたので、後部座席にいた者はわれさきに窓から脱出する。みんなで車を持ち上げようとするが全く動かない。運転手が、「俺も車を降りて押すので、替わりに運転してくれ。」と助手席の私に真顔でいう。ペーパードライバーの私が川にはまった車を操作できるわけもない。
そこに、偶然1台のランドクルーザーが対岸から渡って来るのが見えた。150キナ(約6000円)出せばロープで引っ張り上げてくれるという。どんどん車に水が入ってきていてこのままだと車が壊れかねない。そのまま言い値でお願いするしかなかった。あっけなく引き上げてもらったが、左後輪は完全にパンクしている。スペアタイヤに替えて州境の村まで行ったが、調査員候補の村人は不在だった。 いったん町に戻って翌日、出直すことにする。翌朝、レンタカー業者に行くとまだパンクを直しておらず修理代を先に払えという。もめていても時間が無駄になるだけなので、とりあえず古いスペアタイヤを借りて出発する。ところが、こんどは昨夜の大雨のせいで川が増水していて渡れない。
その後、雨季でもないのに雨が続き、結局、州境の村にたどり着くことはできずに終わった。
【フィールドへの行き方】
成田空港からの直行便、もしくはオーストラリアのケアンズ経由でパプアニューギニアの首都ポートモレスビーへ。直行便なら所要時間は7時間、ただし、週1便だけで土曜日の夜出て翌日の早朝に着く。ポートモレスビーで昼過ぎの国内線に乗り継ぎ約2時間で東セピック州ウェワクへ。そこから西へ100km、ランドクルーザーで(道さえよければ)3時間程度で州境の村に到着。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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竹ノ下祐二(1巻『フィールドに入る』分担執筆者)
アフリカ、ガボンで大型類人猿のフィールドワークをしています。
外国で長期フィールドワークをしていると、日本語に飢えますね。
そんな時は、古典がおすすめです。
私のおすすめは、桂川甫周の「北槎聞略」です。
これは文学作品ではありません。
幕府に仕える蘭学者であった著者が、ロシアに漂流し、10年後に皇帝エカテリーナ2世のはからいで日本に送り返された和歌山の商人、大黒屋光太夫への聞きとりにもとづいて記した、18世紀ロシアの地誌です。
光太夫は、明日をも知れぬ漂民の身分でありながら、放浪中に見聞したことを、時にはイラストも交えながら実に詳しくノートに記していたのです。
それは、当代一の博学である甫周をも舌を巻くほどでした。
「北槎聞略」は、18世紀のロシアの風俗に関する世界的に貴重な資料だそうです。
これぞ、フィールドワークです。
漂民ではなく、自発的にフィールドへゆく私たちは、大いに見習わなくてはなりませんね。
古典といっても江戸時代後期の文書ですから、楽に読めます。
そうはいっても古典はちょっとしんどいなあ、という人は、これをもとにした井上靖の小説「おろしや国酔夢譚」がおすすめです。
<参考情報>
「北槎聞略」(岩波文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/4003345614
「おろしや国酔夢譚」(文春文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/416312960X
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4.フィールドごはん
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國弘暁子
数年前に話題となったインド映画『めぐり逢わせのお弁当』(2013)をご覧の方はもうご存知だと思うが、インドで多く出回っている弁当箱というのはステンレス製の筒状をしており、蓋付きの丸い容器(ダッバー)を3個、4個と縦に重ねて持ち歩くタイプのものだ。それぞれの容器には、香辛料で味付けしたオイルたっぷりの炒めもの、香辛料入りの豆スープ、そして、チャパティやライス等の炭水化物が入る。私がフィールドとしていたインドの女神寺院では、取手の付いた大きなステンレス製の筒状容器が弁当箱として使用されていた。多めに用意した手料理を皆で持ち寄って、仲間と分け合うのだ。このように弁当持参で寺院に集う人々とは、女神の帰依者として参詣者に対して呪言をする者たちであり、ヒジュラとも知られる。早朝から夕方近くまで、陽射しの強い中、境内でじっとしているだけでも体力を消耗する。そんな時の楽しみといえば食べること。雑穀の粉に水を混ぜてこねた生地を両手でパタパタと叩きながら平たくし、それを鉄板の上で焼いた厚手のパン(ロトロ)は、単品で食べてもなぜか格別にうまい。
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5.今後のFENICSイベント
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きたる3月5日に京都市内にて、13巻『フィールドノート古今東西』にまつわるイベントを開催予定です。
詳細は、おってお知らせいたします。
それまでに13巻を出版すべく、ただいま追い込み中!!!
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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第2巻
『フィールドの見方』(増田研・梶丸岳・椎野若菜編)
「人との交わりから見る――人類学者の見方と、はみだし方」
(梶丸岳)
2013年5月、ラオス人民民主共和国ホアパン県のある村。わたしはホアパン県で歌われている伝統的な掛け合い歌「カップ・サムヌア」の調査のために、この村の村長の家に滞在していた。村長は50代前半でカップ・サムヌアの名手であり、しかも歌の伴奏に使うラオスの民族楽器ケーンの名工で、さらに楽器を作るだけではなく吹いてもすばらしい腕前という多才な人だ。3カ月前の2月にも葬儀や村の寺の祭りで歌われる歌や、儀礼について調べるためここにのべ2週間ほど滞在しており、今回はその続きをするために来ていた。村にいるときはほとんどずっと彼についてまわっているので知り合いは増えてきたが、それでも時々私のことを知らない人に出会う。そんなとき、彼は私を紹介して言う。「日本から来た息子だよ」…..
(2巻のご注文はFENICSホームページhttps://fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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13巻『フィールド映像術』にご執筆の高倉浩樹さんより、ご著書のご案内です。
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皆様こんにちは。
このたび、拙編著『シベリアからの声ー民俗写真展示のメイキングと調査地から日本へ向けたメッセージ』(東北大学東北アジア研究センター)を刊行しました。
これは2012年に調査地シベリアで行った写真展の制作過程の記述+動画と現地で収集した来場者の感想を翻訳したものです。ある種の応用映像人類学の仕事になるかと考えています。
この展示については、「展示する人類学」(高倉編、昭和堂)、「フィールド映像術」(分藤ほか編、古今書院)で分析、考察しています。上記はその資料編という位置づけになっています。
詳細は以下
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/news/2012/publication07.html#18
非売品なのですが、もし欲しい方には無料で差し上げます。角形2号の封筒にご自分の住所とお名前、切手で215円をはったものを以下の住所ににお送りください。
高倉浩樹 東北大学東北アジア研究センター
980-8576 仙台市青葉区川内41 022-795-7572
以上です。またみなさまのご活躍についても、お知らせください!
寄稿者紹介