FENICS メルマガ Vol.21 2016/4/25
1.今月のFENICS
熊本・大分を中心に、たいへんな地震に見舞われました。FENICS会員のみなさん、ご家族ご親戚、ご友人など被災なさっている方もいらっしゃるかと思います。
ぜひとも、FENICSの会員登録をウェブサイトでも行い、コミュニティに自由に投稿し情報を交換、拡散してください。投稿があるとメール送信がされわかります。今後、研究やさまざまな活動にも関わるかと思います。まさに分野横断で協力できることもあるかと考えます。
ご活用を。人類学者の慶田勝彦さん(熊本大学・アフリカ研究)も被災、大学生のご子息が東京で活動を始めたそうです。ご協力をお願いします。ほかにも多くあると思いますが、コミュをどうか、お使いください。わからない場合はお問い合わせください。
https://twitter.com/bewithkumamoto
http://youngkumamons-tokyo.jimdo.com
・13巻『フィールドノート古今東西』がついに完成しました!!!http://www.kokon.co.jp/book/b222719.html
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・12巻『女も男もフィールドへ』、ももうすぐです!
・学会誌『文化人類学』80-4の資料と通信に、代表の椎野がFENICS立ち上げの意気込みについて書きました。
「NPO法人化したFENICSの挑戦ーーフィールドワーカーである市民を中心に、大学の外で学問を基に知的活動をする」pp.635-641
ご関心あるかたは、こちらで、ぜひ⇒http://bit.ly/1SI6cLg
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(菊地滋夫)
3.フィールドワーカーのおすすめ(鈴木良枝)
4.フィールドごはん(坂本麻衣子)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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朝のラジオ
菊地滋夫(12巻『女も男もフィールドへ』分担執筆者)
フィールド滞在中に慣れ親しんだ慣習が、いつしか自分の生活の一部になることはないだろうか。わたしの場合、屋外での食事や(春から秋にかけての気持ちの良い夜にベランダで飲食を楽しむ)、ピラウとカチュンバリ(サラダ)を作って食べることのほか、毎朝、起床したらまずラジオのスイッチを入れる、といったことが挙げられる。ここでは「朝のラジオ」について記そう。
東アフリカ・ケニア海岸地方。ちょっとした高台に登ればインド洋が見える静かな農村部の朝は、鶏の鳴き声とラジオの音で始まる。都市部から遠く離れた地域にまでケータイが普及した今日でも、電気の通っていない農村部の一般家庭にテレビはない。毎日の重要な情報源は、今も昔もラジオである。そこから流れるスワヒリ語のニュースや軽快なポップミュージックは、間違いなく朝のひと時の欠かすことのできない一部となっている。
わたしがお世話になっている家族でラジオを管理しているのは、屋敷の所有者(mwenye mudzi)と呼ばれる親父さんだ。彼の古くてちょっと大きめのトランジスタラジオの周波数は、常にKBC(Kenya Broadcasting Corporation)のスワヒリ語放送にチューニングされている。夕方には、ニュースや音楽に加えてコメディー番組などにも耳を傾けて、家族みんなで笑っていたりする。ラジオは夕べのひとときの家族団欒の重要なアイテムだと言えよう。
東京の我が家の家族構成は、共働きの夫婦と大学生の娘、高校生の息子だ。ご想像の通り、帰宅時間はバラバラで、「夕べのひとときの家族団欒」などは遥か昔の夢か幻のように思える。朝食だけが、家族全員がほぼ揃う貴重な時間である。J-WAVEの交通情報や天気予報、音楽などを聞きながら、「今日は(ナビゲーターの)別所さん、休みかな?」「天気は持ちそうだね」「小田急止まってるな…」とか喋っている。毎朝ラジオのスイッチを入れるのもわたしの役目なので、この点もフィールドの慣習を踏襲しているように見えなくもない。
FENICSメルマガの読者のみなさんは、フィールドからどんな慣習を持ち帰っているのだろうか。ちょっと気になるところだ。
フィールドへの主な行き方:
カタール航空やエミレーツ航空を利用して中東経由で首都ナイロビへ飛び、そこからは夜行列車で港町モンバサへというのがお気に入りのルート。モンバサまで飛行機で行くこともできる。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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アニメとガムラン
鈴木良枝
私は某音楽大学で民族音楽学を教えている。新米教師の私は、アニメから諸民族の音楽のネタを探して紹介し、学生の興味を惹くために日々奮闘しているのだが、探してみると私のフィールドであるバリのガムラン音楽も様々な映像で使われていた。その中でも紹介したいのは緑川ゆき原作のアニメ「蛍火の杜へ」だ。この話の主人公の蛍は幼少の頃、祖父の住む田舎の森に迷い込み、幽霊のような存在のギンと交流を深め、互いに惹かれあっていく。ギンは蛍を妖怪達が集まる夏祭りに誘い出かけるのだが、その場面でガムランとケチャが用いられている。音楽を提供しているのはガムランを使って様々なパフォーマンスを行っている滞空時間というユニットだが、私はそのシーンをみて自然とバリの儀礼や祭りの風景を思いだした。(バリの音楽をよく知っている彼らは、バリの祭りを連想させるような音をあてたのかもしれない)。私は授業などを通し、身近な人々にガムランの魅力を伝えていくつもりだ。また滞空時間のメンバーには多くの人にバリの音楽を知ってもらう糸口を作ってもらいたいと思う。そしていつかは日本でもガムランが日常的に演奏されるような楽器になって欲しいと真剣に願っている。
<参考情報>
「蛍火の杜へ」公式ウェブサイト
http://www.hotarubi.info/
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4.フィールドごはん
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坂本 麻衣子(2巻『フィールドの見方』分担執筆、土木計画学)
インドにプチカ(phuchka)と呼ばれるスナックがある。ポテトをマッシュしたものにチリやスパイスを加え、小麦粉の薄い皮で出来たじゃがいもサイズの空洞のボールに1/3程度詰める。そしてこれをスパイスの効いたタマリンド水につけて食べるものである。街角ではプチカを売る小さな屋台をよく見かける。特に若い人の間で人気のようで、屋台の周りはぐるりと人に囲まれていることも多い。店の人はポテトをこねる作業をしばらくしていたかと思うと、おもむろに皮のボールを取って中身を詰め始め、タマリンド水にそれを浸してから、1つずつ客に配っていく。最初にお金を払うと小皿を渡されるのだが、その上に次々と置いていくのだ。すると待っていましたとばかりに、客はそれを一口で平らげる。インドの片田舎だと10個で1セット10ルピー程度。好きな人は20個ぐらい食べるらしい。1回のポテトこね作業で3個ほど配給されるので、10個、まして20個食べるには、それなりの待ち時間を経なければならない。この間、店を取り囲む人々は小皿を持って待ち構えながら、作業をずっと眺めている。1日の調査が終わった後、調査員の女性たちが、今日はプチカパーティーするかー!と言って連れて行かれたのだが、お腹が心配で、私は3個しか食べられなかった。残り7個は、連れの女性たちの間で配分され、あっさり平らげられていった。お腹は全然問題なかったので、次はちゃんと10個食べたいと思う。
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5.今後のFENICSイベント
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(1) 5月28日、名古屋の南山大学で開催される文化人類学会研究大会にて、出版間近の12巻『女も男もフィールドへ』にちなんだ分科会が開かれます。ぜひお運びください!!
http://www.jasca.org/meeting/50th/information.html
9:30-11:55 分科会 A(1) 調査者のライフイベントとフィールドワーク人生
代表者:椎野若菜(東京外国語大学)
A1 趣旨説明
A2 椎野若菜(東京外国語大学)
女性人類学者のライフコースに沿った民族誌研究にむけて―等身大でのフィールドとの対話へ
A3 杉田映理(東洋大学)
子連れフィールドワーク―フィールドワーカーの立ち位置はどう変わるのか
A4 大門碧(京都大学)
二重の受動性を生きるフィールドワークと「子どもをもつ」ことを両立させる難しさ
A5 菅野美佐子(東京福祉大学)
ジェンダー価値の交差点としてのフィールドワーク―子連れ調査の経験から考える
A6 國弘暁子(早稲田大学)
容赦 (forgiveness)としてのギフト (gift) について考える―フィールドワークでの異邦者から参与者、そして当事者へのプロセスを通じて
コメンテータ:高橋絵里香(千葉大学)、友永雄吾(龍谷大学)
(2) 6月11日(土)の午後、都内で総会を行います!FENICSの会員、100万人のフィールドワーカーシリーズ15巻に執筆のみなさんが集まる、年に一回の機会の楽しい機会です。
どうか是非とも、スケジュールをお開けください!近日中に場所をお知らせします。新しい仕事の展開の打ち合わせ!にもお使いください。
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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第13巻
『フィールドノート古今東西』(梶丸岳・丹羽朋子・椎野若菜編)
「カスカの古老と絵を描く人類学者」
(山口未花子)
その後の町での調査においても、相変わらず文字を書くところは人に見せないでいたのであるが、私が絵を描くということは集落の人びとに知られるようになった。とはいえ私が描く絵は動物の画か、罠や狩猟の様子の図解のようなものに限定されていたのだが、それをカスカの人びとはおもしろがってくれた。自分たちは絵を描かないのに私の書いた動物に対し、「ヘラジカの背中はもう少し盛り上がっている」「オオカミの足の付け根の幅は犬より狭い」など動物の形についての的確なアドバイスをくれるだけでなく、ちゃんと納得できる形になるまで何度も書き直させられることもあった。こうやってインフォーマントとのやり取りのなかで記録したものを修正するという行為というのは、カメラやビデオのような記録媒体ではなく、自分の手で描くものだからこそできるものであり、フィールドノートの利点の一つといえるだろう。
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(13巻のご注文はFENICSホームページhttps://fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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座馬耕一郎さん(15巻『フィールド映像術』分担執筆)がご出版の本と、それにかかわる展示のご紹介です。
・出版『チンパンジーは365日ベッドを作る』 座馬耕一郎著 ポプラ新書
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=82010840
※15巻フィールド映像術の中にもある「夜間撮影」の裏話が出てきます。
・博物館の展示
「ねむり展 -眠れるものの文化誌-」
2016年6月26日まで、京都大学総合博物館にて
http://sleepculture.net/nemuriten.html
※博物館のなかでゴロゴロしながらねむりについて考えることができます。
・ギャラリートーク
『チンパンジーはベッド職人』
場所:京都大学総合博物館 ミューズラボにて
日時:2016年5月14日(土)14:00~14:45
参加:無料(入館料は必要)
申込み:不要、先着40名
講師:座馬耕一郎(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研究員)
※チンパンジーはベッドを作ります。その作り方の秘密などのお話です。
・ワークショップ
『チンパンジーのベッドを作ってみよう』
場所:京都大学総合博物館 ミュゼップ中庭
日時:2016年5月14日(土)15:00~16:00
定員:15名(すでに申込み多数のため、締め切りました)
参加:無料(入館料は必要)
講師:座馬耕一郎(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研究員)
※枝葉のベッドを自分で作って寝てみよう!というイベントです。
「ワークショップは満員となっておりますが、じつは、ワークショップ後に枝のベッドで寝るチャンスがあったりします」とのこと!
ぜひお運びください!
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書名と冊数(例:13巻を1冊)/名前(ふりがな)/送り先住所と郵便番号/電話番号を入力
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メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
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