FENICS メルマガ Vol.34 2017/5/25

1.今月のFENICS

 夏日の続いた5月も、そろそろおわりです。先週末の信州大学では、会員の四方篝さんと椎野が企画しFENICSサロン@信州大学「フィールドワーカーとライフイベント:アフリカ編」を開催しました。http://www.fenics.jpn.org/modules/blog/2017/05/574

このサロンのために、神奈川からもお越しいただきました。ありがとうございました。盛会でした。山極寿一さんによる、ご自身はサル/ゴリラをみるのに夢中、画家のお連れ合いも絵をかくのに夢中でフィールドに連れて行ってもほったらかしになる、そのために子どもが早くから自治を身に着けた、という話、また会員の網中昭世さんの、自らを背水の陣に追い込むお話、刺激的でした。また詳しくご報告します。

今週末の27日もつづいてサロンを神戸大で開きます。
http://www.fenics.jpn.org/modules/blog/2017/05/587 

来月もFENICSサロン@小金井、もお見逃しなく!
http://www.fenics.jpn.org/modules/blog/2017/05/647

待望の7巻、6巻は来月にでます、もうすぐ生まれそうです!!!

それでは本号の目次です。

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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(三谷曜子)
3.フィールドワーカーのおすすめ(村尾るみこ)
4.フィールドごはん(田中利和)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS 7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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GWだった
三谷曜子(12巻執筆者、海棲哺乳類学)

4月末から5月初めはゴールデン(G)・ウィーク(W)。多くの人が旅行や遊びの予定について話をしている。私も天気図とにらめっこして、学生たちとスケジュールを調整していた。

連休の中休み、5/2は天気良好、行き先は日本海。桜の名所、松前である。朝6時に集合し、車(公用車のキャンターというダンプカー。乗り心地はお世辞にも良いと言えない。)で学生達と片道2時間の旅。桜祭りで盛り上がる町を通過し、港へ向かいチャーターした船(イカ釣り漁船)に乗って、いざ海へ。港を出るとカマイルカ達と遭遇。が、追跡せず、双眼鏡で波間に浮かぶ黒いものを探す。

曇っていても,紫外線はふりそそぐ.晴れていたら水面からも反射する.日焼け止めを何回も塗り直しつつ、目を凝らす。発見!私達が探していたオットセイだ。今回のミッションはオットセイを捕まえて、発信器を着けること。この日は、格闘したが逃げられてしまった。翌日も天気良好の予報。日本海は時化る日も多いので、海況の良い日は貴重である。しかし流石のGW.学生たちは帰省したり,親が来ていたり,バイトを入れていたり,遅れて流行るインフルエンザにかかったりと,人員調整は難航する.同じGWでも、学振(G)ウィーク(W)を過ごしているM2やDの学生も動員することに.

翌日の5/3も朝から松前へ.今回は成功!発信器を装着して放す.元気に泳いで行って一安心.翌日も天気が良さそうである。もちろんまた来なくてはならない。そしてこの海域では、モニタリングのためのオットセイ捕殺調査も行われており、そちらでも捕獲の連絡が来た。帰りはその個体達を荷台に載せて函館へ戻る。GWで賑わう函館の観光地を突っ切るダンプカー.あちこちで写真を撮っている観光客は,この荷台にオットセイの死体があるとは思ってもいないだろう.夕方6時に研究室まで帰りつき,早速解体作業である。体重150kgを超える個体の解体作業は、重労働。9時過ぎまでかかる。そして、翌日も朝からドライブ。車の中で、学生と学振の申請書についてディスカッション。結局、5/5まで海況は持ち、オットセイを捕まえて、発信器を着けることができた。私にとってのGWはガッツリオットセイ(G)・ウィーク(W)だった(こじつけ).

フィールドに日帰りで行ける,というのは海況が安定しないフィールド調査にはとても良い.このような調査をできる機会は少ないので,学生たちにも参加して欲しいのだが,いつ行くかわからない,泊まりこまないことから,スケジュール的な優先順位が低くなる(他の用事などが優先されがち),という欠点もある.来年度の調査に向けて,対策を講じたいところである.

アクセス:函館から車で2時間.船で港を出てすぐにオットセイが見つかることもあるが,探し回ることもある.

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3.フィールドワーカーのおすすめ
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『祇園祭―都市人類学ことはじめ』 米山俊直著
村尾るみこ(11巻共編者、地域研究)

「この本、修論を書くうえで参考にしています。おもしろいですよね」 大学で、日本の地方における社会課題をフィールドワークする院生にそういわれ、久方ぶりにこの本を手に取り、フィールドへもっていくことにした。アフリカの農村で、民族誌も言語の辞書もない民族集団をひたすらフィールドワークする私にとって、都市人類学とタイトルのつくこの本はいつ読んでも何か距離を感じさせるものだった。だが変わらないのは、本書で祇園祭を捉えていく若い学生の取り組みへの共感である。この本は祇園祭を立体的に描いた名著であるが、大規模に長期間取り組まれるこの祭りをフィールドワークする学生たちが現場の人びととかかわりながら自分で課題を解題しようとするプロセスも読みどころだ。そして、多くの学生の目を通じて、祇園祭の様々な裏舞台が素朴な視点から描写され、祇園祭を「見に行く祭り」から「参加する祭り」に私たちをいざなう。それは、伝統行事という祇園祭の宣伝文句を超え、常に多くの人びとが関わり新しく作り上げられている祭りであることを、今日も私たちに再認識させてくれる。毎年、気が付いたら本山のニュースをみる事が多くなった祇園祭であるが、また人びとの営みが積み重ねられたあの祭りを、近い将来見たい。遠い国で新たなフィールドワークに取り組んでいてもなお、そう思わせられる一作である。

   『祇園祭―都市人類学ことはじめ』 米山俊直著
  http://amzn.asia/1ZRj6kj

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4.フィールドごはん
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「こどもの食べ物」
田中利和  (10巻執筆者、アフリカ地域研究)

エチオピア正教の祝日、村で屠った雄の羊の解体する作業を見せてもらっていた。友人のラブマは、ニヤニヤしながら、町の肉屋にはない、珍しく美味しい部位を食べさせてやろうと言った。彼がナイフで切りとり差し出してくれたのは2つの精巣だった。本当に人が食べるのか?絶品なのか?とラブマに問うと、ああ、でもこれは「こどもの食べ物」だといって、物欲しげにこっちをみている牧童のゲッチョ(13歳)を呼んだ。

ゲッチョはその精巣をいそいそと持ちさり、こっちへ来いと、私をかまどによんだ。そのまま2つの精巣を20秒程度、焚き木の中に直接くべて、表面を少しだけ炙る程度に焼いてすぐに取り出した。ナイフで薄切りにすると、中身は半生の状態だった。彼は唐辛子の粉をすこしつけて、一口で食べた。

続いて、美味しいから食べてみなと、私の口に入れてくれた。あたたかくプルッとした柔らかい食感で、噛むと口のなかでとろけ、やや独特のくさみも感じたが、その珍味は濃厚で、確かに「絶品」であった。蒸留酒でクイッとおっかけると最高だというラブマの助言に従うと、くさみはみごとに口のなかで中和され、心地よい余韻が口のなかに残った。

でも、どうしてこれが「こどもの食べ物」なのだろうか? ゲッチョは「精力がつくんだよ!」と嬉しそうだ。子孫繁栄への願いが、このご馳走に込められているのだろう。

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5.今後のFENICSイベント
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今回は、明後日にせまった12巻にまつわる神戸でのサロン、また来月の総会とサロンという下記2件について、このたびは詳細をお知らせします。

(1) FENICSサロン
5月27日(土)@神戸大学 FENICSサロン「子連れでフィールドに行く場合」  

(2) FENICS総会+FENICSサロン
6月18日(日)@小金井アートスポット シャトー2F

14:00〜15:00   FENICS総会
15:30〜17:30    FENICSサロン「世界を変える教育:フィールド教育・アート教育・変人教育」  

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(1) FENICSサロン 5月27日(土)@神戸大学 FENICSサロン「子連れでフィールドに行く場合」

このたび、神戸大学で文化人類学会が開催される時期にあわせ、フィールドワーカーとライフイベントにかんするサロンをフィールドワーカー有志で開催します。 お昼休みに、ランチを食べながらで、ぜひとも情報共有、交換のためにいらしてください。もちろん子連れもOKです。 フィールドワークをどう継続させるか考えている方やカップル、そうしたライフイベント最中/予定の学生をもつ教員の方々など、お待ちしております。

日時 2017年5月27日(土)
場所 神戸大学鶴甲第1キャンパス      E棟4F 国際文化学研究科学術国際交流ルーム

*学会会場からは建物内の移動で5-6分です。研究大会受付会場から、サインボードに従ってお進みください。 セキュリティのためドアがロックされています。現在のところ、ウガンダ人留学生がドアを開けてくれることになっています。
地図上の23番 http://www.kobe-u.ac.jp/documents/guid/rokko/t1.pdf

*とくに参加資格や参加料はありません。

<プログラム>
11:30〜 開場 フリー交流タイム (子連れOK)
12:00 本サロンの趣旨
12:05〜12:15 中川加奈子(文化人類学・ネパール/追手門学院大学) 「連れていく/預けていくー―家族を巻き込んだフィールドワーク:ネパールの場合」
12:20〜12:30 石井美保(文化人類学・アフリカ、インド/京都大学) 「南インドのフィールド・ライフ――子連れで村に住む」
12:30〜12:40 子どもの成長とともにflexibleにフィールドを変える?! 石井美保×椎野若菜
12:40〜13:00  フリーディスカッション
〜13:30 フリー交流タイム

本サロンは、12巻『女も男もフィールドへ』http://www.kokon.co.jp/book/b238440.html(目次やはじめに、もこのHPで読むことができます)に大きく関連しています。 連絡先:wakanatokyo@gmail.com (椎野) 企画:フィールドワーカー有志、FENICS 参考:FENICS100万人のフィールドワーカーシリーズ12巻『女も男もフィールドへ』 cf.) 文化人類学会 研究大会@神戸大  http://www.jasca.org/meeting/51st/index.html

(2) FENICS総会+FENICSサロン  
日時:6月18日(日)
場所:小金井アートスポット シャトー2F http://www.chateau2f.com/access/index.php

14:00〜15:00
 FENICS総会

15:30〜17:30
 FENICSサロン「世界を変える教育:フィールド教育・アート教育・変人教育」 (FENICS×変人類学研究所×こども未来研究所×小金井アートフルアクション共同開催)

「義務教育におけるフィールドワーク」
「南極兄弟」こと澤柿教伸(自然地理学・法政大学)×澤柿教淳(松本大学/小学校教諭時代、フィールドからの授業を実践)

「映像のフィールドワーク: 映像を観察し、手で考え身体で感じる学びの実験
下中菜穂(造形作家・切り紙研究)×宮下美穂(小金井アートフル・アクション)×丹羽朋子(文化人類学・人間文化研究機構)

「<変差値>を伸ばす、変人教育の可能性」(変人類学研究所の活動)
小西公大(社会人類学・東京学芸大)×正木賢一(design/アート・東京学芸大)

18:00〜
まちのカルチャーカフェ(NPO法人こども未来研究所)
「子連れフィールドワーカーが見た世界の子育て」
椎野若菜(社会人類学・東京外国語大学AA研)  

*FENICSサロン 参加費500円(学生無料)
*まちのカルチャーカフェ 参加費 1000円(学生500円)
*お子様連れOKです!その場合、念のためお子さんの年齢や人数等をご連絡ください。
fenicsevent@gmail.com

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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第14巻
『フィールド写真術』(秋山裕之、小西公大編) 「遺跡を撮る」 遠藤仁

遺跡の撮影というと、読者の皆さんは観光整備された状態の遺跡を想像される方も多いと思う。しかし、フィールドワーカーが撮影するのは発掘中の遺跡であり、私の場合は北アフリカや西アジア、インド北西部の遺跡が調査対象で、それらの地域は半乾燥から乾燥地(わかりやすくいうと沙漠)に属している。砂漠での調査は季節を問わず過酷であるが、写真撮影もまた、過酷である。ここではエジプトでの発掘調査時の撮影談を少し提供してみたい。  砂漠における写真撮影の最も大きな障害は、砂である。砂漠が形成される地域は、暑いだけではなく、季節的に強風が吹き、砂を巻き上げ、カメラにダメージを与える。レンズ交換は、至難の業であり、コンパクトデジタルカメラは砂のおかげで、数台壊した経験がある……

(14巻のご注文はFENICSホームページhttps://fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)

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7.FENICS会員の活動
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明日!からのイベントです。 15巻『フィールド映像術』編者の分藤さんが登壇です。
http://www.mina-perhonen.jp/metsa/EV/0183/

街と家 -六九クラフトストリート@松本
www.69-matsumoto.jp/

トークスケジュール 5月26日(金)計5回、入替制
1回.11:00〜12:00「洗練と素朴」分藤大翼+三谷龍二+皆川明
2回.12:30〜13:30「デザインと手仕事」竹俣勇壱+猿山修+森岡督行
3回.14:00〜15:00「ロマネスクとゴシック」金沢百枝+菅野康晴
4回.15:30〜16:30「竹籠とステンレス笊」井出幸亮+小林和人+山本忠臣
5回.17:00〜18:00「都市と地方」串田和美+三谷龍二+皆川明

会場 mm(ミリメートル)
長野県松本市大手2丁目2-5

※チケットのご予約注文は終了いたしました。
※2回、3回、4回は、当日チケットがございます。

ぜひ会場にてご参加くださいませ。

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以上です。お知らせ、いつでもご連絡ください。来月は小金井でおめにかかれること、楽しみにしております。


寄稿者紹介

海棲哺乳類学 at 北海道大学 |

地域研究

アフリカ地域研究

10巻執筆者