FENICS メルマガ Vol.6 2015/1/25

1.今月のFENICS

明けましておめでとうございます…と言うには
ずいぶんと日が経ってしまいましたが、
FENICSも無事新年を迎えることができました。
また、ついに東京都よりNPO法人の認証を得ることができました!
これから会員の皆様とともにフィールドワーカー同士の/フィールドワーカーとの
よきつながりを作っていけるようがんばって参ります。

それでは本号の目次です。

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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(村尾静二)
3.フィールドワーカーのおすすめ(森田剛光)
4.フィールドごはん(藤田良治)
5.チラ見せ!FENICS
6.FENICS会員の活動

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2.私のフィールドワーク
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村尾静二(第15巻『フィールド映像術』共編者)
私のフィールドワーク

村尾静二

年末年始にかけて、インドネシアを再訪した。十数年前にインドネシアの文化に関心を持ち、それ以来、スマトラ島とジャワ島の複数の街や農村を訪れ、ときには長期滞在するなかで、身体技法や芸術と宗教との関わりについて調査し、それをテーマにした民族誌映画を制作してきた。ここ数年間、継続的に訪れているのはバリ島内陸部の農村である。
農村社会において、高齢の人々は「老い」をどのように生きているのか、そして、家族や社会はどのように関わっているのか——この問題を、高齢のダランの生活世界にまつわる民族誌映画を制作するなかで考察している。ダランとは、ジャワ島とバリ島で伝承されている影絵人形芝居ワヤン・クリの遣い手のことである(ワヤン・クリは2009年、ユネスコにより世界無形文化遺産に指定されている)。

バリの社会においてダランはパフォーマー以上の存在であり、地域社会が長い歳月をかけて伝承し、共有してきた知識や感性を光と闇のなかに蘇らせる舞台監督、そして、宗教者である。したがって、映像には、からだ(身体技法)、社会的地位、仕事、伝統知識、技術、伝承、超越など、「老い」の社会的位置づけにまつわる様々な問題が入り込んでいる。最初にダランと出会ってから約10年が経過し、ダランはすでに80歳となった。映像は個人の生活世界の記録であると同時に、社会の記憶の一部を形成してもいる。

今回の訪問時、地域社会の儀礼で上演が続くと、ダランは上演後に疲労のため自力で立ち上がることができなくなっていた。ダランの老いに戸惑いつつ、撮影をとめて手を差し出すと、ダランはいつも「撮影を続けなさい」といって、近くにいる人の助けを借りて立ち上がるのだった。撮影済み映像を一緒に視聴し、意見交換し、撮影内容を相談しながら撮影調査を進めてきたからこそ、ダランは映像の重要性を理解し、私に撮影を優先するようにうながしてくれているのだと理解しつつも、ためらわれる瞬間だ。映像は私とダランの交流の記録でもある。

※本研究のこれまでの成果は次の拙書をご参照ください。
『映像人類学(シネ・アンスロポロジー)−人類学の新たな実践へ』村尾静二・箭内匡・久保正敏編、せりか書房、2014年。本書関連『民族誌映画DVD』に拙作品が収録されています(本書にある引換券を出版社に送ることにより入手可)。

【フィールドへの行き方】
日本から飛行機(直行便)に乗り、約7時間でバリ国際空港に到着。そこからエアポート・タクシーかバスに乗り、約2時間かけて内陸部、ギャニャール県ウブドへ。そこでバイクか自動車をチャーターして、約1時間かけて移動したところに調査地の農村があります。

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3.フィールドワーカーのおすすめ
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三菱鉛筆株式会社 加圧ボールペン 『パワータンク シリーズ』
(森田剛光 / 第15巻『フィールド映像術』分担執筆者)

過酷な環境で知られるヒマラヤに持っていくものを思いうかべる。映像機材やデジタル機器は、新しいものに常に入れ替わっている。ウェアやシューズも毎回交換している。そんな中で必ず持っていくのは、三菱鉛筆の加圧ボールペン。
ボールペンは、高度と気圧変化の関係でリフィルに空気が入ってしまい書けなくなることがある。ヒマラヤ行きを前にして何かないかとずっと探していた。一つあったのが、通称スペースペン。NASAのアポロ計画でも使われたというもの。ただ高価で手が出なかった。そんな中、2001年1月に、三菱鉛筆が加圧式のボールペンを発売すると知りとびついた。逆さにしても濡れた紙でも書けるという説明とともに、「宇宙でも書ける」というフレーズにワクワクした。
そのペンを携え、フィールドにむかった。出会った人に連絡先を書いてもらおうとペンを渡す。書き始める際、一瞬相手のペンが止まる。書き終わると今手にしているペンの話をしだす。日本製だと伝えると納得した顔。その様子を見て試し書きしたいという人もあらわれる。繰り返される人々の感嘆にちょっと得意げになってしまった。あれから十年以上経つけれど、このペンだけはいつも忘れずに持っていく。

三菱鉛筆株式会社 加圧ボールペン 『パワータンク シリーズ』
http://www.mpuni.co.jp/products/ballpoint_pens/ballpoint/powertank/standerd.html

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4.フィールドごはん
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おしょろ飯、60日分(藤田良治/ 第15巻『フィールド映像術』分担執筆者)

北海道大学の練習船「おしょろ丸」。この船では、約100人の研究者や学生、乗組員が乗船している。彼らは、揺れる海の上で寝食をともにしている。そして、狭い空間ながら、常に秩序を保って生活しているのだ。衣食住は、我々人間の活動にどれも欠かせない。船の上では、単調な日常生活を送るた
め、食事の楽しみは格別である。「おしょろ丸」には、食事を専門に作るスタッフとして司厨員が 4名常駐している。
彼らは、海がどんなに荒れていようとも、乗組員全員の食事を、決められた時間までに作る。一日3食、24時間移動し続ける船では、夜食も加わるので、一日4食の食事を作るのだ。食事の内容は、司厨員のトップである司厨長が決める。出航前におおよその料理内容を決めて食材を調達する。昨年度は、地球温暖化の謎を解明するため、北極海へ航海に出た。その時は、母港である函館で60日間分の食材として米1,400?、ジャガイモ80?、豚肉400?を積み込んだ。出航時の食料庫は、食材でいっぱいだったが函館帰港時にはほぼ空の状態になる。長期間食材を保存するコツは、冷蔵庫に入れたときに、段ボールなどで風から食材を守ることだという。特に、葉物野菜は、風などの刺激に弱いため、丁寧に優しく扱う必要がある。
「おしょろ 飯」と呼ばれる、おしょろ丸の食事は、和食が中心で乗組員の生活に溶け込み、単調な生活を華やかに変えてくれる。乗船していた学生
は、「陸上での生活より、充実した食生活を送ることができる」と言う。充実した食生活は、フィールドワーカーにとって何よりも楽しみ
で、喜びでもある。是非、おしょろ丸に乗って、同じ釜の飯「おしょろ飯」を体験してほしい。

OSR_5799 司厨員の技が光る OSR_5809 北極海でも美味しい和食を口にする贅沢な時間 OSR_9102 肉厚なうなぎもおしょろ飯

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5.チラ見せ!FENICS
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百万人のフィールドワーカーシリーズ15巻
『フィールド映像術』(分藤大翼・川瀬慈・村尾静二編)

「フィールドにおける映像の撮影——歴史的・理論的背景から」(箭内匡)

カメラは不思議な機械だ。今さっき撮影した写真やビデオを眺める時の、ちょっとわくわくするような気持ちは、いったいどこから来るのだろうか?

撮影という行為は、現実を写し取るだけのようでいて、意外に複雑である。第一に、カメラは撮影する私が撮るだけでなく、カメラが撮るものであるから(望遠や広角など、カメラ特有の機能を利用して撮影した場合にはなおさらである)、与えられた撮影条件のもとで正確にカメラが何を撮ったのか、わからない部分がある。第二に、人間がカメラを手に持って撮影する限り、——————

(15巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/
よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)

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6.FENICS会員の活動
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1)会員の星泉さんが本を出版されました。自薦の一文もいただきました。

『チベット文学の新世代 雪を待つ』ラシャムジャ著、星泉訳、勉誠出版、2015年1月刊行
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100424

チベットはもともと文学が盛んな土地柄だが、近年は世界文学の潮流に触れ、新しい文学が誕生しつつある。今回紹介するのはチベットの文学界の中でもキラリと光る気鋭の若手作家による長編小説。読み物として面白いのはもちろん、1980年代以降激動の変化にさらされたチベットの山村の暮らしが手にとるように分かる小説としてもおすすめだ。(星泉)

2)EC上映会
FENICSコアメンバーで『100万人のフィールドワーカーシリーズ』1巻の執筆者でもある丹羽朋子さんがFENICSとしてかかわる「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ上映会」が催されます。

■日時 : 2015年2月5日(木)18:30 open/19:00 start
■会場 : Space&Cafeポレポレ坐 (東中野)
■料金 : 予約1,500円/当日2,000円(ワンドリンク付)
■予約 : 03-3227-1405 (ポレポレタイムス社)Email : event@polepoletimes.jp

ゲスト
林のり子(はやし のりこ)パテ屋/〈食〉研究工房
本橋成一(もとはし せいいち)写真家・映画監督
プログラム(予定)
【ECフィルムより】
・中央ヨーロッパ シュレースヴィッヒ ホルムの領民の冬季漁撈アイスワーデ/1965年
・南東ヨーロッパ ルーマニア ヴァデアの焼壺によるパン焼き/1969年
・南東ヨーロッパ ルーマニア ヴァデアのトウモロコシ粥料理“ママリガ”/1969年
・中央ヨーロッパ オーバーエステルライヒ アイゲン・シュレーゲルの橇犬による木材運搬/1968年
・中央ヨーロッパ バーデン南部 エルツァッハのシュディッヒのカーニバルの行事/1963年

【特別上映】
「長野県北安曇郡小谷村真木集落の雪下ろし」(映画『真木で暮すこと(仮)』より)
本橋成一監督最新作『真木で暮すこと(仮)』予告編
*第9回上映会「雪国の暮らし」の概要やゲストについて

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みなさまのご活躍のご予定、お知らせをいつもお待ちしております。
それでは、みなさま本年もよろしくお願いします!

お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
https://fenics.jpn.org/contact/
メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:https://fenics.jpn.org/

寄稿者紹介

文化人類学 at 国立民族学博物館 |

文化人類学 at 南山大学 |

サイエンス映像学 at 愛知淑徳大学 |