FENICS メルマガ Vol.80 2021/3/25 
 
Web版  https://fenics.jpn.org/fenics/mailmagazine-vol-80-2021-3-25/
 
1.今月のFENICS
 
 今月はメルマガ80号を迎えました。いつもお読みくださり、ありがとうございます。来年度からもよろしくお願いいたします。
 
日本の3月は、人生の区切りを迎えられているかたも多いかもしれません。コロナ禍、卒業式はそれぞれ、どのように行われていたでしょうか。
先日、フィールドワークにいけない学生さんらと話す機会をつくりました。どうも先が読めなくて、やる気がでない、と言っていた人もいました。大事な区切り、人生の節目であればあるほど、このコロナ禍での行動の判断が難しいところ。さまざまなメンターが必要と思われます。
 
これまで、伝染病、クーデター、自然災害等で、予定していたフィールドワークができなくなったご経験があり、その後どうなさったか。その体験談を話していただける方を探しています。自薦、他薦、歓迎です。よろしくお願いします。
 
 FENICSが応援している、学生自身がたちあげた性被害を訴えるグループSayno!の活動についてお知らせがあります。このにふれながら、3月22日の文教委員会で横沢高徳議員(立憲)が萩生田文部科学大臣に昨日3/22 参議院文部科学委員会にて大臣に質疑を行いました。文科省が主催する「トビタテ!留学」で海外に出た学生が、とりわけ現地にいる邦人から受けた性被害報告について、先ずは文科省として早急に実態調査をし対策を進めるべきである、と。萩生田大臣は精査したい、学生が安心して留学できる環境を充実させる方策をとりたい、と答えました。
それが口先だけでないよう、活動を継続する必要があります。
ジンバブエ生まれの吉國さんの展覧会の情報もあります。
それでは本号の目次です。
 
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1 今月のFENICS
2 フィールドワーカーのライフイベント
3 会員の新刊紹介
4 FENICSイベント 
5 会員の活躍 (吉國元・吉崎亜由美)
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2.フィールドワーカーのライフイベント
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アフリカ漂流子育てライフ
 
飯田雅史 
 
昨年、約10年振りに日本で10ヶ月を過ごした。もちろんコロナ禍のせいである。配偶者の勤務先の方針で、扶養家族は3月後半に日本に帰されることとなり、運転手やメイドさんのいる生活からシングルファーザー状態に突然放り込まれたのだ。3人の子供たちにとっては実質、初めての日本での生活だった。  

ぼくは2009年9月から2019年12月までジンバブウェとガーナで働いた後、2020年1月にその前年からウガンダで働いていた配偶者と子供たちに合流していた。子供は上から長女12歳、長男9歳、次女4歳で、長女は生まれてから1年半ほど日本での生活を送ったことがあるがその記憶はなく、長男と次女に至っては出生こそ大阪だったものの、二人ともほんの数ヶ月でアフリカでの生活を始めている。  

 子供たちにとってアフリカと日本の生活で最も勝手が違うのが学校である。子供たちは、学齢に達するとインターナショナルスクール(以下、インター)に通っており、はじめに入学したジンバブウェの学校がそうだったこともあり、その後も国際バカロレアのプログラムを採用しているインターを選んで通わせている。そのため、国・学校が変わってもカリキュラム上の連続性があり、これまでジンバブウェ→ガーナ→ウガンダと転校を繰り返しているものの、すんなりと新しい学校に順応している。   

カンパラのカダフィモスクにて

他方、毎年体験入学で通わせてもらっている長野の公立学校はカリキュラムが全く違うのはもちろんのこと、子供たち曰く、あまり楽しくないそうだ。先生がいじわるで、何かをしでかすと怒られて立たされたりするし、テストも決められた問題を解くだけだが、インターでは先生が自分たちのやりたいことをよく聞いてくれるし、テストも自分で考えたり、創造力を働かせるものが多いから面白いというのだ。ただ、毎年通っていることもあり、長野の学校にも仲の良い友達はいるし、インターではあまりない家庭科や理科の実験などの授業は面白いようで、昨年の長期滞在で初めて経験した運動会も随分と張り切っていた。  

ところでインターの生徒は地元の子供たちも一定数いるものの、割合としては駐在員の子供が多い。日本人にもたまにいるが、欧米の組織では駐在の職を転々とする人たちが多く、ジンバブウェやガーナで一緒だった子供たちとウガンダで再会ということもある。また、子供を通して家族ぐるみで交流するようになり、休暇でこちらが遊びに行くこともあるし、タイミングを合わせて日本で3〜4家族が集合なんてことも何度かあった。友達づきあいがいろんな国をまたいで交じり合い、広がっていくので、親としても面白い経験をさせてもらっている。  

子供たちは、両親ともに日本人で、国籍も日本ではあるが、日本での生活経験はほとんどなく、子供同士の普段の会話は英語。いずれもアフリカ大陸内の英語圏といえど、4、5年おきに住む国は変わってきているし、補習校にも通っていないので、日本の歴史はほとんど知らないだろう。果たしてかれらのアイデンティティはどうなるのだろうか。親としても人類学をかじったものとしても、興味は尽きない。
 
 
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3.FENICS会員の新刊紹介
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村橋勲さん(正会員/『マスメディアとフィールドワーカー』執筆者/東京外国語大学)
 
村橋勲著、『南スーダンの独立・内戦・難民――希望と絶望のあいだ』
昭和堂、定価6,200円(税抜き)、2021年2月刊行
 
出版社のサイトでの紹介
 
2011年7月、南スーダンは、世界でもっとも新しい国家としてスーダンからの分離独立を果たした。それは、長期の内戦を経験した南スーダンの人々にとっての念願であり、希望への道標となるはずだった。しかし、南スーダンは、独立後わずか3年も経たずに内戦状態へと突入し、国民の3分の1にあたる人々が故郷を失うという危機的な状況が訪れた。
本書は、著者が2013年から2018年にかけて南スーダンとウガンダで実施したフィールドワークやさまざまな情勢報告をもとに、約7年間の南スーダンの激動を多角的に考察したものです。この本は、(一時的にマスメディアに取り上げられたことはありましたが)十分に取り扱われなかった南スーダンの国内情勢についての分析だけでなく、ウガンダと南スーダンの国境地帯の歴史、難民としての人々の経験や戦略、難民支援のあり方などについての考察などを含んでいます。
 
博士論文を大幅に修正するかたちで本書を著すにあたって、多様な読者層に向けて書くことを心がけました。学術的な枠組みとしては、難民研究――冷戦終結後から急速に進展してきた学際的な研究分野であり、著者の専門領域である人類学も含む――をフォローしながら、昨今の難民支援の変化や難民の経済活動に関する議論を踏まえることで、難民をめぐる現代的なトピックについて論じています。その一方で、人道(開発)支援や平和構築の実務に携わる人々にも関心をもって読んでもらえるように、「支援の現場」で生起していることを、できるだけありのままに、かつ被支援者の視点から記述することを試みています。
 
今日的な社会現象である移民・難民の国境越えは、グローバル・サウスにおける政治的、経済的な危機と結びついていることは確かです。しかし、それは同時に、人々の希望に向かう実践でもあり、また、アフリカの特定の地域においては、決して目新しい事象ではなく、移民・難民の受け入れによって新たな機会と社会関係が創発されてきたという事実にも目を向ける必要があります。それが、副題の「希望と絶望のあいだ」に込めた著者の思いであり、また、本書をつうじて読者に問いかけたいことでもあります。
ぜひ、一度、手にとっていただければと思います。
 
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4.FENICSイベント
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FENICS共催サロン 2021.3.26 (金)21:30~
 
変人類学研究所と子育てサロンを開催します。参加申し込みは当日の金曜夕方18:00まで!
 
日時:3月26日(金)21:30〜
オンライン(zoom使用)
※ただお話をお聞きになるのもよし、音声やチャットを使って対話するのもよし、お気軽にご参加ください。
 Hempathy-FNICSのサムネイル
 「世界」の多様性に触れ、親子のあり方を模索してきたフィールドワーカーたちによる、ユニークな子育て記。
 日本の環境とのギャップで困惑しながらも、自己流で邁進する彼らのお話を聞き、少し肩の力を抜いて「子育て/個育て」を楽しんでみませんか?
 今回はアフリカの東西(ケニアとガーナ)にて長期間のつきあいがあり、アフリカと日本での子育て経験を持つお二人にお話をお聞きします。
  
登壇者:
椎野若菜(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所):東アフリカ・ケニアで婚姻や寡婦、シングル、ジェンダー・セクシュアリティを研究。
森昭子(東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京):西アフリカ・ガーナで芸術実践、看板絵、アートと呪力の関係などについて研究。
  
※司会:小西公大(東京学芸大学 変人類学研究所所長)
※参加フォームはこちら!
https://forms.gle/A3n8wLrgRT57aQGD8
お問合せ:fenicsevent@gmail.com
※締め切り:3月26日(金)18:00まで
 
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6.会員の活躍
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1)吉國元さん(画家)
 
このたび、会員で画家の吉國元が原爆の図・丸木美術館の岡村幸宣学芸員の推薦により上の森美術館にて開催中の展覧会、VOCA展2021に参加しています。
 
出品作『来者たち』は彼の生まれ故郷であるジンバブウェで出会った人達と、日本で出会うアフリカの友人達を描いた群像です。是非ご覧ください。
 
開催概要
 
VOCA展2021 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─
会場:上野の森美術館
会期:2021年3月12日(金) 〜 30日(火)
休館:会期中無休
開館時間:10:00 〜 17:00(最終入場閉館30分前まで)
入館料:一般800円/大学生500円/高校生以下無料
*障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料(要証明)
 
 
 
2)吉崎亜由美さん(正会員・桐朋女子中・高等学校教員)
 
3/18(木)~3/21(日)にTBSドキュメンタリー映画祭が、渋谷のユーロスペースで行われました。
20日18:00~『ムクウェゲ 女性にとって世界最悪の場所で闘う医師』が上演されました。下の予告動画の1:15あたりから、
私が桐朋女子中・高等学校の高3生に行ったスマホの授業の様子も登場し、実際の映画には生徒のインタビュー(2人分)も入ります。
 
 
授業で使っているのは『スマホから考える世界・わたし・SDGs』FENICS正会員の大平和希子さんの企画の本です。
 
 
授業内容は土曜までですが、ネットでの有料配信上映もあります。
チケットは下記HPから購入できます。
 
 
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以上です。お楽しみいただけましたか?
みなさまからの情報、企画、お待ちしています。
 
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