FENICS メルマガ Vol.31 2017/2/25
1.今月のFENICS
東京では梅がおわりに近づき、桃のつぼみが膨らみ始め、 春を感じ始めました。 さきほど散歩にでましたらふきのとうもでていました。
みなさまの地域では、いかがでしょうか。
入試シーズン、まだまだお忙しい方も、 あるいはフィールドに出られている方もいらっしゃりかと思います 。
春にむけて、徐々に助走し始めたいものです。
12巻の書評がつぎつぎと出そうです。 ネットでも少しずつ話題にしてくれる人もでてきました。 まだお読みでない方は、ぜひともよろしくお願いします。 FENICSツイート( FENICSのウェブサイトTOPでもみられます) でごらんください。
@FieldENICS FENICSのツイートもお互いフォローしたいです、 よろしくお願いします。
さいきん、FBのグループをつくりました。 メンバーになった人が、 ご自分の発信したい情報も自由に書き込めますので、 メンバーのメンバー・・・と増やしていただければ、と思います。
FENICSのサイトでは、 会員のみのクローズドの情報が共有できる仕組みになっています。 テーマごとに、もっと活用したいと思っています。
さまざまな方法で、目的に応じてつながったり、情報を拡散・ 共有したり、より深くつながったり、としたいと思います。
*NPO法人FENICSは, 皆様の会費によって運営されています. とりわけ若手フィールドワーカーにチャンスを、 と思っておりますがなかなか集まりません。
できましたら、ご協力をお願いいたします。
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(吉崎伸)
3.フィールドごはん(門馬一平)
4.今後のFENICSイベント
5.チラ見せ!FENICS
6.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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吉崎伸(NPO法人水中考古学研究所、14巻執筆者)
古い言い回しであるが、私は2足の草鞋を履いている。 本来の仕事は(公財)京都市埋蔵文化財研究所で、 京都市内の遺跡の調査・研究を行っており、 もう一つNPO法人水中考古学研究所の理事長として、 水中遺跡の研究に携わっている。理事長とは聞こえがよいが、 本業の隙間を縫って数名の仲間達とほとんど持ち出しで水中遺跡の 調査にかかわっているのが実情である。 ところが2005年に一つの幸運が訪れた。 あるテレビ局から勤王の志士、坂本龍馬の「いろは丸」 の調査の依頼があったのである。
坂本龍馬は海援隊を組織して貿易を行うことを目指した。 その最初の航海として伊予の大洲藩から蒸気船「いろは丸」 借り受け、長崎から大阪に向けて出港した。 ところが現在の広島県福山市鞆の浦沖の瀬戸内海に差し掛かった時 、対向してきた紀州藩の「明光丸」と衝突し沈没した。 この事故は「いろは丸事件」 として幕末史を飾る訴訟事件として知られている。
いろは丸の調査を開始すると、数多くの障害が立ちはだかった。 その一つは、 いろは丸の沈没地点が現在も数多くの船が行き交う航路帯のすぐ側 であったことである。 調査は基地となる台船を係留して実施するが、 夜間は危険で係留できないため、 毎日およそ往復2時間かけて港から曳航することになった。 さらに係留中は警戒船を2隻配備して、 航行する船から守る必要もあった。
第二は水深の問題である。 いろは丸は約27mの海底に沈んでおり、 潜水作業は減圧症の危険を伴うので1回の作業は約30分、 1日2回が限度であった。この作業効率の悪さを克服するために、 潜水器に通話装置を付け、 交代するダイバーの間で作業に流れが中断しないように工夫した。
第三は水の透明度の問題である。瀬戸内海は透明度が悪く、 特に水深20m以下は人工光源を利用しても、 伸ばした腕の指先が見える程度である。 とくに海底の泥を掘り下げての作業中は全く視界が聞かない、 手探りの作業となった。
海底の発掘調査はこうした障害を乗り越えて僅かずつ進み、 約2週間を経ていろは丸の船体を明らかにすることができた。 鉄製の船体は全長約36.5m、幅約5.6mあり、 その中央部には蒸気船の心臓部であるボイラーがみつかった。 船内からは積み荷の箱や乗組員が使っていた革靴、 ワインボトルなど和洋が入り混じった各種の遺物が引き揚げられ、 竜馬が目指した貿易の実態を垣間見ることができたのである。
この調査で、最も苦労したのは写真記録である。 透明度の無いところで、いかに写真を撮影するか。 濁りやマリンスノーを除去するためにネットを張ったり、 透明度の良い海面近くの海水を送り込んだりしたが、 芳しい成果を得ることができなかった。 結局は良い潮がかかった時が最も良い条件となり、 自然の力にはかなわなかった。 掲載した写真はいろは丸のボイラー付近を撮影したもので、 並んでいるパイプは中に熱を通して、 蒸気を発生させる煙管式と呼ばれるボイラーの一部である。
鞆の浦にはいろは丸展示館があり、 いろは丸調査の全容を知ることができます。 そこには調査で引き揚げられた遺物や海底のいろは丸補復元した模 型が展示してあります。
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3.フィールドごはん
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モテガポ
門馬一平(文化人類学)
南の海は夜でも暖かい。月が落ちてあたりが暗くなるのを待ち、 カヌーの上から飛び込む。適度な水温に体が包まれた。 目指すのは「モテガボ」と呼ばれる魚、テングハギだ。 夜は浅瀬のサンゴや岩の隙間でじっとしている。 海中ライトを片手にテングハギを探す・・・いた! 一気に鼓動が高まる。 テングハギの中には60センチをゆうに超える大きな個体もいる。 一度海面に戻り呼吸をととのえ、もう一度潜る。銛のゴムをひき、 ライトをあてて狙いを定める。 平たいテングハギのできるだけ真横に銛先がくるようにして、 手をのばし銛を放つ。ここからが大変だ。 不意をつかれたテングハギが暴れ、 海中は砂埃で何も見えなくなってしまう。目を凝らし、 銛が抜けないように気をつけながら岩の隙間からテングハギを引っ 張り出す。海面に戻ると、 カヌーの上で待ちくたびれた友達がテングハギを銛先から外してく れた。「そろそろ戻るか」。
村に帰ったらすぐに火をおこし、魚を焼く。 時刻は深夜2時をまわっていた。「 ここでは食事に決まった時間なんてないんだよ。 白人たちと違ってね。獲れたら食べる。」そう言って笑いながら、 友達は油のしたたるテングハギの身をほうばった。 僕も負けじと身にかじりつく。焼きたての香ばしい「モテガボ」 の味が口のなかにひろがった。
パプアニューギニアの東端ルイジアード諸島。 太陽も月も沈んだ暗闇でたき火だけがあかく燃えている。 テングハギは全部で7匹獲れた。 明日は村中の人が魚を食べることができそうだ。
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4.今後のFENICSイベント
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★来年度からの予定を準備しています。
企画がある方も、ぜひお寄せください。
★6巻『マスメディアとの交話』、7巻『社会問題と出会う』は、 5月20-25日に幕張メッセで開催される日本地球惑星科学連合 連合大会 2017年大会や、アフリカ学会(2017年5月20日・ 21日@信州大学教育学部)、文化人類学会@神戸大学( 5月27日、28日)でお披露目できるよう、鋭意編集中です。
ほか、遅れております他の巻もうごきますので、 リバイスをお願いいたします・・・
とりわけ、12巻『女も男もフィールドへ』にちなんだ集まりは、 若手のフィールドワーカー、あるいは女子学生をもった先生など、 学会開催時に合わせて行うことも有効と思っております。 提案がありましたら、ぜひともよろしくお願いいたします。
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5.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第15巻
『フィールド映像術』(分藤大翼・川瀬慈・村尾静二編)
「霊長類のフィールドワークと映像の活用法」
(座馬耕一郎)
「夜に1人でチンパンジーを観察している」という話をすると、 ビデオカメラを設置して、そのビデオを再観察するのなら、 撮影現場にいなくてもよいではないか、 というご意見をいただくことがある。 私がわざわざその場にいるのには理由があり、 それはフィールドでしか感じることのできない直接観察を大切にし たいからである。
映像は再観察するときに有効な手段だが、 再観察には限界があることに注意が必要である。 繰り返し観察できるのは、 撮影された範囲内の空間と時間のなかの、「色」と「音」 だけである。……
(15巻のご注文はFENICSホームページhttp:// www.fenics.jpn.org/よりログインして、 サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、 FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。 ぜひご利用下さい)
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6.FENICS会員の活動
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会員の星泉さんが中心となってなさっている展示です。ぜひ、 お運びください!
チベットの牧畜民の仕事展
日時:2017年2月13日(月)〜2017年3月11日(土)
※土日休場 2月18日(土)・19日(日)、3月11日(土)は開場
場所:アジア・アフリカ言語文化研究所資料展示室(1F)
チベットでは古くから標高や土地の特徴にあわせて、 農耕や牧畜業が営まれてきました。農民と牧畜民では暮
らしのよりどころとなる仕事が異なるだけではなく、 習慣や考え方にも違いがみられます。宗教や歴史、政治経
済などの他の要因も加わり、変化を繰り返しながら、 多様な文化が形成されてきました。この重層的なチベット
文化の背景を理解するには、 土地に根ざした普通の人々の生業を知るという視点が欠かせません 。本企画展
では、 東北チベットのアムド地方で家畜とともに暮らしてきた牧畜民の「 今」を様々な角度から紹介します。
使用言語:日本語
参加費:無料
事前申し込み:不要
問い合わせ先:東京外国語大学アジア・ アフリカ言語文化研究所LingDy3事務局
Tel&Fax 042-330-5543
E-mail info-lingdy[at]aacore.net([at] を@に置き換えてください))
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メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www. fenics.jpn.org/