FENICS メルマガ Vol.122 2024/9/25
1.今月のFENICS
いよいよ後期も始まりました。夏休みを経て、みなさんはどのような変化があったでしょうか。
世界は、さらに、先が見えない状況になってきています。すでにロシア近辺をフィールドとする方はすでに研究活動も狭まっていますが、今度は中東周辺がますます悪化してきてしまいました。日本も政権が変わり、どう動くのか。黙っていることは、加担していること。それぞれの立場を生かして、何か小さなことから行動できれば、と思います。
前号でもお知らせしました、FENICSも何度か共催した人文社会科学系学協会男女共同参画連絡会(ギース)で提出した、人文社会科学系の女性研究者、アーリーキャリア研究者のおかれた状況に関する要望書や、院内集会の議事録が公開されましたので、共有します。またこの立憲民主党の代表選や自民党の総裁選に際し、こうした研究者の状況についてどう考えるか、候補者にアンケートをとりました。ご関心のあるかたは、ぜひこちらをご覧ください。https://geahssoffice.wixsite.com/geahss
これまでFENICSの研究者のライフイベントに関し活動してきたことが、ひとつの形になったのではないかと思っております。また、そうした声を届ける術も、少しは「フィールドワーク」で見えてもきました。しかし驚いたのは、このご時世で、国会議員とのやりとりは、FAXであるということでした!久しぶりにFAXのインクを購入し、フル活動しました。いまの世代は、使ったことがない人も多いのではないでしょうか。また、国会議員の事務所のポストに「資料はこちら」よりも、「パーティの案内はこちら」と書かれていたことが目立ったことも忘れられません。
さて、事情がいろいろとあり、発行が遅くなりましたことをお詫びします。
FENICS会員の、この秋の活動が多くあります。読者のみなさまも、ご企画や情報共有したい内容をお寄せください。
さて、本号の目次です。お楽しみください。
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1 今月のFENICS
2 私のライフイベント(大谷琢磨・関野文子)④
3 私のフィールドワーク(松岡由美子)
4 会員の活躍(久世濃子・古閑恭子・小林美香)
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2. 私のライフイベント
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「お互い院生、結婚・出産どう決めたお金は?日々の子育てのリアル」④
大谷琢磨(文化人類学・アフリカ研究 JSPS RPD/立命館大)・関野文子(人類学・アフリカ研究 京都大学ASAFAS)
※たくちゃん=大谷
※あやちゃん=関野
話題2: 2024年8月〜9月大谷単身渡航に向けて
関野:2ヶ月のワンオペ経験者としてのアドバイスをするとしたら何かある?
大谷:いろんな人に頼ろう。保育園の保育時間を長くする、食事代行、家事代行、ファミ リーサポートなどを活用するとか、色々な方法があると思う。子どもがいると、家のことが整って、パートナーの協力を得て初めてフィールドワークに行けるので、研究費から子育て関連の費用が落ちないのはなんか腑に落ちない。通常、研究費は研究のためにしか使えないけれど、その研究を実行するために、託児や家事代行や、パートナーと子どもの里帰りが必要な時には、研究費から費用を出せると良いなと思う。
関野:そうだよね。フィールドに行くお金は研究費から出せるけど、残される子どもとかパートナーに対しては何も補助がないという。
大谷:今回僕がいない間の過ごし方はどうする予定?
関野:今回も土日は基本的にどちらかの両親に来てもらったり、帰省をすることにしているよ。1ヶ月くらい前に予定を決めたかな。
大谷:平日二人きりの間の家事はどうする?博論もあるし、早めに家に帰って夕飯作るとかもし辛いよね。
関野:自分が心地よい状態にできるように様々なものを活用したい。だったら、辛いっていう思いじゃなくて、大変だったけどあの時はあの時で楽しかったなって思えるようにしたいじゃない。
大谷:人生には辛いこともあるよ。その経験そのものを受けとめて、無理に経験や思い出に価値を見出さなくてもいいのでは?
関野:たくちゃんの大変だった経験は、それはそれで良かったと思うよ。でも、私もこれから辛い思いしろみたいに言わんといてくれる?笑 まあ、私のワンオペは1ヶ月だけだし、Aちゃんも1年近く成長しているし、たくちゃんに比べたら楽だと思う。
関野:具体的には、お料理を作ってもらう家事代行も3回ほど予約をしているよ。博論で時間的な余裕もあまりないだろうし、心の余裕を持つためにもお金はかかるけど利用する方が良いかなと思って申し込んだよ。家事代行も、メールでの事前の打ち合わせとか、材料揃えるのに少し手間はかかるけれどね。大谷母にもお料理を作ってもらえるけれど、そこまで負担かけたくないし、折角来てくれたら、Sちゃんと遊ぶ時間に当てて欲しいかなと。あとは、生協で、ミールキットとか、焼くだけ温めるおかずとかを、頼んで楽できることは楽したい。ご飯作りたくない時、洗い物もしたくない時は、Sちゃんと外食行って楽しもうかな。それも二人だけの時しかできない楽しみかな。
大谷:自分の母に頼ってって言ってもやっぱり義理の両親には頼りにくいよね。
関野:いや義理でも、実母でも気は使うよ。家族以外にお願いした方が、気楽だし、自由にリクエストできる場合もあるとは思う。
大谷:そういうこともあるよね。でも、こうしてあやちゃんが工夫してさなちゃんの面倒を見てくれるから、安心して家を空けられるよね。周りの事例を見ていて思うのは、安心してパートナーに子どもを日本に預けられてこそ、本人はフィールドワークに専念できるということ。研究者の中には、パートナーに夫に任せられないからと、子どもをフィールドに連れて行かないといけないのだけれど、子どもの旅費は自腹という話を聞いたことがある。自分の所属先では、子どもの旅費や学会での託児費用は研究費から出せるけど、その支出は研究者の課税所得として計上されるよ。本来、子どもの旅費は研究者本人が自腹を切るものだからというのが理由らしい。
研究職に限らず企業でも、本人が出張などで家を空ける場合に、日本に残されて育児の負担を負うパートナーと子どものことが考慮されていないなと思う。なんか、未だに家を空けた夫を粛々と待ち、家事と子育てを遂行する専業主婦のいる家庭像が想像されてるんじゃないかと疑いたくなる。国も雇い主はもっと家庭の負担を考慮してほしいな。
渡航中の妻の実家へ、二人で新幹線で帰省
関野:そういう仕事と家庭の価値観って、特に私たちの教員の世代にある空気感じゃない?調査中に残される家族の育児家事援助費用も研究遂行経費に含めて欲しいな。日本は家事とかの育児のアウトソーシングが最近は少しずつ受け入れ始められたとは思うけど、それでも、全部自分で、あるいは家族でやらなきゃいけない、育児とか家事を外注するのはあまり良くないみたいな風潮がまだあるよね。実際周りの人で頼んでる人ってあんまり見たことない。みんな忙しくて、共働きしてお金ある人でも家事代行とか頼んでるのを、聞いたことないのはどうしてかな。最近、中小企業とかで家事代行の補助が出る制度ができらしいけれど、そういう動きはどんどん進んで欲しいな。
大谷:研究者に限らず、仕事(就職や業績)を優先させたら、子育てしづらいよね。
関野:でも、子供がいるから、仕事で優遇されるみたいなもうちょっと違うのかなと思う。
子育てって研究や仕事において、負担になることもあるけど、良い影響も沢山与えてくれていると思う。実際、私はAちゃんがいて、家族で暮らしているからこそ、心身共に健康的に研究活動ができていると思う。だってAちゃんがいなかったら、こんな規則正しい生活も、食生活も送れない。それに何かに悩んだり、息詰まったら、すぐに相談できるパートナーもいるからとても恵まれていると思う。子どもがいる人がいる人も、いない人も、大変なことは色々あるし、それぞれに悩みがある。
大谷:子どもがいる人もいない人も、仕事で無理せず、プライベートを充実させられるような仕組みにしていかないといけないと思う。
関野:民間企業ではフレックス制とか時間時短勤務とかあるけど、結局求められる成果って同じじゃない?
大谷:昔新聞で、企業勤めの人が子育てのために時短勤務にしたけど、求められる成果は同じなのに時短勤務に負い目を感じて給料を減らしてもらったという記事を読んだことがある。給料は何に対する対価やねんと。みんな不満や負い目を感じないような社会になるといいな。
(つづく)
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3. 私のフィールドワーク
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「おさるの国からこんにちは No.4 おさるの国」
松岡由美子(東京外国語大学総合国際学研究科博士前期課程2年/高校教員)
皆さん、こんにちは。こちらルワンダは「大乾季」と呼ばれる時期に入りました。毎日良く晴れ、雨は一滴も降らずここ標高1700メートルのフイエはからっとしており、非常に過ごしやすいです。さて、最終回ではこのブログのタイトルにある「おさる」についてです。
ここルワンダは、複数種の野生の霊長類がいます。最も有名なのはウガンダ、コンゴ民主共和国との国境に生息するマウンテンゴリラでしょう。1980年代に北部に住み着きゴリラ研究をしたダイアン・フォッシーを描いた映画『愛は霧のかなたに』をご覧になった方もいらっしゃることでしょう。さらに、北部にはゴールデンモンキー、西部の国立公園にはチンパンジー、東部の国立公園にはマントヒヒが生息しています。私がなぜ、このタイトルにしたのかというと、私の生活圏にほぼ2、3日おきに野生のおさるがやってきて、生活を共にしているからです。そのおさるは「ベルベット・モンキー」と呼ばれるオナガザル科の小型さるです。
朝、我が家のトタン屋根を跳びはね、ダンスするかのような音で起こされます。そして、おさるたちは集団で屋根から降りてきます。玄関を空けたままにしておくと、おさるが侵入してきます。ある時は冷蔵庫の上のバナナをその場で頬張っていました。またあるときは、小猿と母親が侵入。勉強をしていた私は視線を感じ冷蔵庫の方をみると、今まさにパンの入った紙袋に手をかけようとしている母親猿と目が合いました。大声を上げると、何も取らずに逃げていきました。が、小猿は置き去り。部屋の中で右往左往し、あげくタイル床に滑り派手に転んでやっと逃げていきました。
これくらいなら微笑ましいのですが、前回の記事でも書いたように、私はハウスガールのDと裏庭で野菜を育てています。困ったのは、やっと大きくなり始めた柔らかな人参を、おさるたちが食べてしまうことでした。我が家のキッチンの窓からは、畑がよく見えます。おさるの大群がやって来ると、急いでDに知らせ、2人で棒を持って追い払います。しかし、毎回そうタイミング良く見つけられるとは限らず、かなり人参畑は食い荒らされました。Dはあまり怒ることもなく、おさるに食い荒らされた畑の人参を全て収穫していました。
ある日、キッチンの窓からふと見ると、一匹のおさるが、いそいそと木から降りてきます。そして人参のあった畑に直行しました。おさるは、ちょこんと土の上に座りキョロキョロ周辺を見渡しています。そして、首をかしげているのです。まるで「あれ?ニンジンどこへ行ったの?」とでも言いたそうなそぶりに思わず笑ってしまいました。きっとこのおさる、ニンジンを楽しみにしていたのでしょう。
我が家に来た親子
朝大学に行く途中も、おさるが道路をうろうろ。大学校内にもたくさんのおさるがやってきて、こざるは木陰でじゃれ、大人のさるは寝そべって毛繕い。のんびり過ごしている日常です。ルワンダ人にとっては見慣れた光景なので気にもとめませんが、もともとおさる好きの私は、とても嬉しくよく写真も撮りました。
おさるはとてもいたずら好き。トタン屋根から雨漏りしたときは、なんと一度パテ樹脂で埋めた穴をおさるが手でほじっていました。ほじっている最中のおさるを見つけ、「ほじるな~~」と叫んでもおさるはどこ吹く風。仕方なく、穴だらけのトタン屋根を張り替えることになりました。急に給湯器からお湯が出なくなったときは、外に取り付けられた給湯器のコンセントにおさるがぶら~ん~~と両手でぶら下がっているではありませんか。おさるの体重でコンセントが外れていたのです。
このようなおさるとの日常を私は楽しんでいました。しかし、ローカルの人びとにとっては時に害獣です。西部の国立公園は柵で囲まれていないため、さるがローカルの野菜を食い荒らし深刻な問題となっていると、こちらの大学で学びました。政府は補償制度を作りましたが、その補償が平等ではなく、住民に周知されていない問題を先生は指摘していました。ルワンダは人口の80%が農業で生計を立てており、貧しいため土地が少しでもあれば野菜を育て自給自足をしています。さらに、人口増加と土地不足のうえ、土地相続による農地の細分化が問題になっています。今はのんびりと野生動物と共存できていますが、今後30年で大きく変わるのではないかと、危惧しています。
さて、今回でルワンダからの拙い報告は終わりです。このような機会を与えてくださったFENICSに心から感謝申し上げます。今後帰国し修士論文を仕上げます。その後も、何らかの形でFENICSと関わりを持ち続けたいと考えています。そして、お読みくださった皆様、ありがとうございました。
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4. FENICS会員の活躍
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(1) 飯塚宜子(FENICS正会員)・大石高典(アフリカ研究・人類学/東京外国語大学)
2024 地球たんけんたい in Tokyo ×人類学カフェに参加しませんか?
任意団体マナラボでは、世界各地でフィールドワークをしている人類学者と、ファシリテータ、俳優が一緒にチームを作って、日本に暮らす子ども向けに、異文化に触れることの面白さを伝えるための取り組みをしてきました。以前、FENICSとの共催イベントでも紹介したことがあります。
フィールドワークの面白さや異文化理解の難しさなどを、教室での講義のように専門用語を使った説明によってではなく、身体を使ったワークやゲーム、演劇などを通じてどのように伝えるのか試行錯誤を繰り返してきました。これまでは京都を中心にワークショップを行ってきましたが、東京をはじめ様々な地域に実践の場を広げていきたいと考えています。
その一環として、今回、東京・府中でワークショップを開催します。「着る!踊る!創る!みんなで世界を旅しよう! 2024 地球たんけんたい in Tokyo ×人類学カフェ」と題して、子供から大人まで異文化を体験し知ることを楽しんでもらえるワークショップ型のイベントです。
小学生の児童(親子)を中心に準備していますが、大人の方も参加いただけますので、是非お誘いの上、お越しください。
【プログラムと日程】
①2024年10月13日(日) アフリカの森で狩りをしよう!(カメルーン)
アフリカの森の奥深くには、動物を狩って皆で分け合い、リズムがまじりあう歌を歌い踊り、精霊と対話するバカという人々が暮らしています。バカの森を体験したい人、集まれ!
②2024年12月8日(日) バリ島の仮面で変身しよう!(インドネシア・バリ)
儀礼、演劇、遊び、様々な場面で仮面が登場するバリ島。仮面をかぶり、村人や動物や魔物に変身し、即興劇トペンを一緒に作ろう。演劇の経験がなくても大丈夫。バリ世界を探検したい人、集まれ!
●午前の部:10:30~12:45 (10:00受付開始 10:15 までに来場ください)
小学1年生以上どなたでも(親子や大人のみ参加も歓迎!)
●午後の:14:30~16:45 (14:00受付開始 14:15までに来場ください)
18才以上どなたでも。(大学生・大人の方で旅をしよう!)
(ワークショップ開始前に民族衣装を着用頂く時間のため15分前までにお越しください)
●定員:各回15名:(アフリカの森・バリ島 どちらか一方へのお申し込みも大歓迎です)
(東京都府中市朝日町3-11-1)西武多摩川線多摩駅から徒歩5分
その他、京王線飛田給駅、調布駅、武蔵野台駅からのバスもご利用頂けます。
●参加費:無料
●申し込み先:下記HPからお申込みください
(2) 久世濃子さん(正会員)の活躍
神奈川県横浜市にあるよこはま動物園ズーラシアで、オラウータン研究者の久世濃子さんが講演されます。
ボルネオの固有種であるテングザルのズーラシアへの来園15周年を記念して、テングザルをはじめボルネオオランウータン、マレーバクなど、インドネシアに生息する動物たちをテーマに開催されます。
講演「インドネシアの熱帯雨林に住むオランウータンといきものたち」
■登壇者:久世濃子(オランウータン研究者)
■日時:10月27日(日)13時00分~14時35分(受付開始12時45分から)
■場所:よこはま動物園ズーラシア ころこロッジ内
■参加費:無料(別途入園料はかかります)
※参加者の方へ、小川珈琲さんから「オランウータンコーヒー」のプレゼント、「オランウータンの巣(ベッド)体験」など!
(3) 古閑恭子さん(正会員・アフリカ研究/言語学・高知大学)
アフリカを知ろう!ガーナのお話とアフリカ布を使ったクラフト
古閑恭子さんと協力隊のOVのガーナのお話のあと、アフリカ布を使ったクラフトをするイベントがあります。
イベントに引き続いて、海外協力隊秋募集の説明会もあります!
日時:2024年10月13日(土)11:00~13:00
場所:ちより街テラス3F 会議室3(高知市知寄町二丁目1-37)
対象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
参加費:無料
講師:古閑恭子さん(高知大学)
主催:JICA四国
お問い合わせは、JICA高知デスク中原(jicadpd-desk-kochiken@jica.go.jp)まで!
東京国際写真祭で企画を担当しました。
チケット購入 https://artsticker.app/events/41055
本展覧会は、写真のコミュニティのみならず、メディアや日本社会全体に通底する男性中心主義的価値観・
ホモソーシャル性に焦点を合わせ、写真作品と映像作品、広告や広報など公共のイメージに表象される男性
のイメージを通して、ジェンダーにまつわる規範的な価値観の中でも、とくに「男らしさ」とは何かを戦後
社会の変遷に照らし、批評的な観点から検証します。個人所蔵のスクラップブックやポストカード、雑誌や
書籍などを通覧する資料展示も行います。
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メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿