FENICS メルマガ Vol.114 2024/1/25 
 
 
1.今月のFENICS
 
 FENICSメルマガ、2024年のお初のお届けです。信じがたい、大変な年の始まりとなりました。被災地、関係者のみなさま、お見舞い申し上げます。
日本では、どこにいても災害対策を日常的にする必要があることを考えさせられます。
FENICSという場、ネットワークを利用し、活動をお考えの方は、ご相談、ご連絡ください。
 
本号よりふたつ、新しい連載が始まります。ひとつめは、以前、2018年(メルマガvol.45・46・48)に「子連れフィールドワーク:乳児・パリ編」で投稿いただいた中川千草さんの、今度はついに「ギニアへの子連れフィールドワーク」のシリーズです。
そして高校の教員でありつつ修士課程に在籍する松岡由美子さんによる、留学先・ルワンダからの便りです。
お楽しみください。
 
さて、本号の目次です。
 
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1 今月のFENICS
2 子連れフィールドワーク(1)(中川千草)
3 私のフィールドワーク(1)(松岡由美子)
4 FENICSからのお知らせ
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2. 子連れフィールドワーク(連載)①(中川千草)
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気忙しく、発見つづきの子連れフィールドワーク(年長さん・ギニア編)1
 
  中川千草(社会学・龍谷大学・FENICS 12巻『女も男もフィールドへ』執筆者)
 
1年ぐらい前から、息子がギニアに行きたいと言い出した。小学校に入学する前には連れて行きたいと考えていたわたしと彼の気持ち、そしてタイミングが合い、今回の渡航を決めた。出発を意識しはじめた11月下旬、息子がまずアデノウイルスに罹患し1週間近く高熱がつづいた。心配はしたものの、出発間際でなくてよかったというのが本音だ。12月に入ると、わたし自身もアデノウイルスに罹ってしまい、5日間寝込んだ。個人的にはマラリアよりもきつかった。これでもう「禊」は済んだ。  

しかし出発2日前の朝、息子が発熱した。まだあるのか!と頭を抱えた。このまま熱が下がらなかったらどうするのか、流行りの病いだったらどうするのか。家族会議を開くが、解決策は思いつかない。受診したところ、溶連菌陽性という結果が出た。医師は、治療薬があるので安心せよ、登園許可を出すために2日後に再受診せよと言う。出発はその日の夜だ。このスケジュールには、医師もさすがに驚いた様子だったが、大丈夫、大丈夫と(なぜか)励ましてくれた。幼稚園や保育園に通い、日々もまれながら過ごす未就学児たちは、菌やウイルスから逃げ切ることがむずかしい。行事前には、どうかかかりませんようにと祈るのが常だ。自分以外のメンバーがフィールドワークに加わるということは、自分だけの都合ではどうにもならない事態が起きるということ。これを改めて、痛感する旅のはじまりだった。  

写真01 壁の向こう側に飛んでいってしまったボールを求めて・・・

病み上がりの長旅に向けて、母子で気合を入れた出発当日、現地の国営燃料貯蔵施設が爆発したというニュースが飛び込んできた*1。次は、向こうか…この施設が位置する港周辺には、官公庁など国の主要機関が立ち並ぶ。こうした公的機関を含め、近隣の建物の窓ガラスや壁面は、爆風により粉々になった。また、大規模な火災は近くの住宅地へと広がり、多くの人びとが自宅を失った。鎮火まで数日を要し地域一帯に煙が立ち込めたため、郊外に避難が強いられた人も少なくなかった。友人宅にも、彼女の家族が身を寄せ、わたしたちは滞在を見合わせることになった。  
  
ギニアでは全土で使用される燃料の全てがこの施設に一旦集められ、その後、タンクローリーで各地へと送られる。そこへの荷下ろし中の事故であるということから、想像以上の影響が出ると予想できた。ジェット燃料のストックも燃え尽きてしまったという。こうした事態を受け、ギニアからの「脱出」を決定した外資系企業の話を聞き、到着直後というのに、わたしたちは予定を繰り上げての帰国を検討しなければならなくなった。  
 

写真02 サンダル+靴下でのサッカーは、現地の標準スタイル

 わたしが情報収集に右往左往している一方、息子は早々とギニアになじみはじめた。そのきっかけは、サッカーだった。ボールさえあれば仲良くなれると信じ持参したことと、息子をサッカー教室へ通わせていた自分を褒めたい。歳上のお兄ちゃんたちは、蹴り方やトリックなどの手本を見せ、拍手し頭を撫でと世話を焼いてくれる。そうこうしているうちに、息子は「ペティ(petit)!」と呼ばれはじめた。ペティとは、歳下のいわゆる子分に対して使うタームだ。おぉ!息子が近所の子どもコミュニティメンバーとして認められれた!  
こうして、不安を抱えつつもわたしたちのフィールドワークがはじまった。
  
*1 爆発炎上事故により死者14名、負傷者約200名が出た。港湾地区の18の石油貯蔵タンクのうち13が損壊した。また、官公庁の職員は自宅待機となり、一時的に機能不全に陥った。
 
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3. 私のフィールドワーク:おさるの国からこんにちは①(松岡由美子)
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 ムカデから聞く昔話
          松岡由美子(東京外国語大学総合国際学研究科博士前期課程2年・ジェンダー論)
 
 皆様、こんにちは。現在,派遣留学という形態で、東京外国語大学からルワンダの南部都市HuyeにあるProtestant Institute of Arts and Social Sciences(PIASS)で学んでおります。PIASSのPeace and Conflict Studies は学部のみですので、私は学部の主に3年生(PIASSでは3年間で学部修了可能)の授業を履修しています。授業は半年で2コマほどにし、時間を主に修士論文の研究に充てています。今回から10月まで隔月で、ルワンダでの生活やフィールドでの学びをお届けします。
 さて、今回のテーマは昔話です。私はルワンダに到着した日から、首都Kigaliに住む一般家庭(地元の人曰く「中流家庭」)に3日間ホームステイさせていただきました。そのご家庭の95歳のおばあちゃん(キニアルワンダ語でmukadeムカデ)が、突然話し出してくれた昔話についてです。(おばあちゃんのキニアルワンダ語を、お孫さんが英語通訳)。
 
「昔、犬は人間のように言葉を話すことが出来た。ある日夫が外から帰宅すると、その家の犬が今日家であったことを全て夫に話した。夫は怒って妻を殴った。妻は怒り狂って犬に何かを与えて犬をしゃべれなくした。それから犬はバウバウと吠えるしかなくなった。」
 
という内容です。通訳してくれた40歳のお孫さん(女性)のにやにやした様子から、夫の留守中に妻が男を家に引き入れていたことは容易に判断できました。念のため私がお孫さんに「留守中に何があったの?」と尋ねると、「お話では言わなくてもみんな妻が男と不倫していたのは判るのよ」と応えました。次に、「妻が犬に何を与えたの?」と質問すると、ムカデもお孫さんも「知らない。でも、何か」との回答でした。 

ホストファミリーのムカデとお孫さんとともに


  
 ルワンダでは、ペットを飼うという習慣はありません。犬を飼っている家庭は最近ではありますが、ほとんど防犯のために外飼いです。その家庭も、防犯に犬を外飼いしていました。そして、野犬が路上をうろついていることは、見たことがありません。
 この昔話をさらに深読みすると、女性の性の奔放さが伺えます。現在ルワンダでは、一夫一婦制が法制化されています。しかし、北部では一部、一夫多妻があるようです。また、日本での婚姻届にあたるregistration(婚姻届を行政に提出すること)を政府は勧めていますが、registrationなしの宗教的な婚礼儀式と家族・親族へのお披露目での「結婚」も多々あると聞いています。さらに、10代20代の若者たちの異性とのお付き合いは、本人の宗教的バックグランドにより大きく異なりますが、男女とも数人の恋人が同時進行で存在することも珍しくないです。そして、いわゆる不倫も珍しくないようです。というのも、実際にこんなことがありました。  
  
 ある日、自宅で料理用のプロパンガスのガスが切れてしまい、プロパンを持ってガスを街に買いに行こうと、タクシー会社に電話をしました(日本のようにデリバリーはしてくれません。)しばらくすると、タクシーではない車に40代ぐらいの男性が運転して到着しました。聞くと、タクシー運転手の会議中で運転手は誰も来ることが出来ないから、バス会社で働いている者だけど来てあげたよとのこと。バス会社のオフィスがある場所にタクシー会社もあります。街までタンクと共に乗せていって貰い、無事新しいプロパンを乗せ、帰宅途中の車内で「君の国の文化で1人の夫に2人の妻が居ると聞いたが」と聞かれました。日本から来たと既に伝えていたので、びっくりしながら否定しました。そして好奇心から聞いてみました、「あなたの国の文化は?2人、3人の妻は認められているの?」と。すると彼は、コソコソした声で(車内だから他に誰も居ないけど・・・)「違法だよ。でも、本当に、ほんと~~にごく僅かにそんな人も居るんだ」と打ち明けるように話してきました。
  
そこで初めて、ん?なんだこの変な雰囲気は?と思いました。わざと話題を変え、自宅へ到着。別れる前に当然のごとく車代を支払おうと財布を取り出し「いくら?」と聞きました。すると、「今回は要らない。僕はもっと君と英語で話をして英語の練習をしたい。次回はお茶を飲まないか?」と言われ、ぎょっとしました。彼はここ南部のHuyeに単身赴任中で、子どもと妻は首都に住んでいます。要するに恋人にならないか?と言うことなのです。ちなみに私は結婚していて、結婚指輪もしており、結婚指輪の文化はルワンダにもあります。日本で言うダブル不倫のお誘いだったと言うわけです。「さようなら」と言い、お引き取り願いました。
 夫が妻を殴る、妻は夫を殴り返さないで犬に仕返しをするあたりも、ルワンダでのジェンダー規範が表れている昔話でした。
(隔月で連載予定)

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4. FENICSからお知らせ
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(1) 2024.2.7(水)13:20~15:00@東京・桐朋女子中学・高等学校 ボロニアホール
 
現場の話を聞いて、考えよう!フィールドワーカーを育てるFENICSサロン
雪と氷の世界からせまる地球環境~立山と南極~
 
昨年、FENICS副代表の澤柿教伸さんが隊長として南極に居られる時期に、南極と桐朋学園をつないで、「南極教室」を開催しました。桐朋女子の高校1年生とむさしの学園の4,5年生が参加しました。
今回は、無事に日本に帰国した澤柿教伸さん(前第63次南極地域観測隊 越冬隊長/FENICS副代表)が、実際に桐朋学園を訪れ、南極での経験をお話します。また、同じく南極地域観測隊で越冬の経験があり、また日本における氷河の発見者となった福井幸太郎さん(立山カルデラ砂防博物館)にもその発見にいたったエピソードもふくめ、富山県立山からの事例をもとにお話しいただき、参加者で地球環境について考えたいと思います。
 
 
 
(2) 2024年2月8日(木)EC自由研究シリーズVol.7 山の中、森の中で生きる その方法と技 (1)
 
研究呼びかけ人 宮下美穂(造園屋/染め織見習い)
 
日 時:2024年2月8日(木) 開場18:30 開始19:00
会 場:Space&Cafeポレポレ坐(中野区東中野4-4-1-1F)
参加費:1,000円 ワンドリンク付
予 約:電話:03-3227-1445 Mail:za@pole2.co.jp

▼テーマ「 山の中、森の中で生きる その方法と技」
 
隣家の見えない山あいに、木々と草花、稲作、生き物との暮らしをはじめました。重機や化学肥料や農薬を使わない。移動する鶏小屋は移動する肥料。重たいものはテコやロープを工夫して。ECフィルムを見ると、仕草や目線、身体の使い方からも発見がいっぱい。人以外の生き物の息遣いや足の動き、馬具やロープ、滑車、ああ、感動!生き物の力を借り、山の中、森の中で生きる方法を、絶賛研究中。(研究呼びかけ人 宮下美穂/造園屋・染め織見習い)
 
▼必ず上映するタイトル
 
E1884    駄馬の輸送/中央ノルウェー/1969/13:00
E2081 ”ウィップキステ”(引き上げ機)による丸太の荷あげ/中央ヨーロッパ/シュレースヴィッヒ/1971/9:30
E1196 鋸での丸太の切断/イエメン/ハドラマウト/1966/7:00
E2760 フラースの車輪竿での伝統的畑作/中央ヨーロッパ/チロル/1979/13:00
E0843 山の牧草地の干草運び/中央ヨーロッパ/チロル/1964/15:00
 
▼その他の(上映するかもしれない)タイトル
E0709 生垣づくり/アフガニスタン/バダクシャン/タジク族/1963/9:00
E2515 ブレーメン近郊の砂州での橇犬の使用/中央ヨーロッパ/ニーダーザクセン/1974/7:00
E2523 アイゲン・シュレーゲルの橇犬による木材運搬/中央ヨーロッパ/オーバーエステルライヒ/1968/9:00
E0570 ソーダの採取と輸送/中央アフリカ/カーネム/ハッダド族/1962/11:30
E2464 庭作りと灌水/アフリカ/中央サハラ/ファシ・オアシス/カヌリ族/1976-77/9:00
E0697 水汲み/スーダン/コルドファン/マサキン族/1962/4:00
 
主催:公益財団法人 下中記念財団
企画:EC活用委員会 / 下中菜穂(エクスプランテ)、丹羽朋子(FENICS)、ポレポレ東中野
 
協力:川瀬慈(国立民族学博物館)、岡田一男(東京シネマ新社)、NPO法人FENICS
 
(3) 2024.2.18(日)13:00~16:30 FENICS後援 GEAHSS公開シンポジウム「なぜ日本のジェンダー指数は低いのか」/「若手」・女性のためのテーマ別ディスカッション 
日時:2024年2月18日(日)13:00~ GEAHSS公開シンポジウム「なぜ日本のジェンダー指数は低いのか」

15:40~16:30「若手」・女性のためのテーマ別ディスカッション 
場所:ZOOMによるオンライン開催
 
NPO法人FENICSのひとつの活動として、フィールド研究者のライフイベントと研究の継続の支援、フィールド研究者の養成や「若手」研究者支援もあります。これまでも、ギース: GEAHSS(人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会)シンポジウムにて、FENICSについても紹介してきましたが、このたびギースシンポジウムで協力することになりました。ふるってご参加ください。

 今年度のイベントは二部構成で開催します。第一部のシンポジウムは、ひとつの指標とされるジェンダー・ギャップ指数 (GGI: 世界経済フォーラム) が、 2023年に日本は 125位(146ヵ国中)であったことを念頭に、「なぜ日本のジェンダー指数は低いのか」を考えます。まず経済、法律、教育、政治の各分野からその見解をお話しいただき、学際的視点を共有します。 そのうえで文化人類学から世界の諸社会との比較の視点でコメントを発したのち、日本社会において学協会や大学レベルで取り組むべき事項のヒントを絞りこむ議論の展開をめざします。
 
 第二部のテーマ別ディスカッションでは、アカデミズムにおける「若手」や女性などが直面している日常にある諸問題を共有し、それらの解決にむけた方策に関するディスカッションを行う時間を設けます。学協会をこえた横のつながりをつくることで、研究上の悩み、研究とプライベートの両立など、あらゆる問題を上にあげていくボトムアップの流れをつくりギースという連絡会を活用することをめざします。
 
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以上です。お楽しみいただけましたか?
みなさまからの情報、企画、お待ちしています。
 
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メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/