FENICS メルマガ Vol.89 2021/12/25
 
 Web版  https://fenics.jpn.org/fenics/vol-89-2021-12-25/
 
1.今月のFENICS
 
メリークリスマス!といいたかったのですが、諸事情で一日遅れの発信となりました。みなさま、それぞれいかがお過ごしでしたか?
編集長の椎野は、イブ前日も授業に会議、そのまえの日はシンポジウムで登壇、と相変わらず時間がなく、子どもたち(3歳と9歳)への約束を果たすために夜中にサンタとトナカイが来たときのためのクッキー、クッキーハウスのためのクッキーを焼くはめになりました。
今月初めにはワーク・ライフ・バランスのイベントをしておきながら、つねに自分自身が、まったくバランスがとれておらず、必死に約束を果たそうとしております・・  

FENICS副代表の澤柿教伸さんをのせた「しらせ」が、どうやら昭和基地に接岸したようです。知り合いが南極に行った、というだけでなんだかわくわくしませんか?ぜひ、澤柿さんが南極にいらっしゃるあいだに、質問など考えてみませんか?なにかいい企画案がありましたら、ぜひお教えください!
 
12月3日のイベント、限定公開をいたします。参加できなかった方々、来年度からの「フィールド教育」を考えるヒントに、ぜひご視聴ください。新刊『現場で育む フィールド教育』が手元にほしくなった、という方はぜひご連絡ください。
また、本日はこれから写真のオンライン・イベントがあります。いまからでも、参加したい方は、fenicsevent[あっと]gmail.comまでご連絡ください。
 
今年も、あらたに多くの方とのつながりができ、また活動が新たな形にもなり、うれしく思っております。
HiF(Harassment in Fieldwork)との共同研究活動を通じ、とくに力をいれてきた若手フィールドワーカーへのフィールドにおけるセクシュアル・ハラスメントへのとりくみ、自分の身体をもっと知ろう、という意味でも、東京外国語大学では、来年度からジェンダー・セクシュアリティに関する授業が必修となりました。FENICSイベントでも二回ご登壇いただいた産婦人科医の吉野一枝先生に講師としてきていただくことになりました。他大学への広まりも期待しております。セミナー開催についても、ご自分の大学等でもし開催をお考えの方はご連絡ください。

まだまだ、世間は明るくはない状況ですが、それぞれの現状をみつめながら、ポジティブに「フィールドワーク」の強みを、精神をひきだして活動していきたいと思います。

あとわずかですが、よいお年を、おむかえください!
 
 それでは本号の目次です。
 
ーーーーーーーーーーー
1 今月のFENICS
2 フィールドワーカーの乗り物シリーズ③<連載>(福井幸太郎)
3 FENICSイベント報告(飯塚宜子)
4 FENICSからのお知らせ
5 FENICS会員の活躍 
ーーーーーーーーーーー
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2.フィールドの乗り物シリーズ第3回
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
「砕氷船Vasiliy Golovnin」
 
福井幸太郎(自然地理学、『マスメディアとフィールドワーカー』編者、FENICS理事)
 
2009年2月12日,アルゼンチン南極観測隊(夏隊)に参加していた私は南極半島のジュバニー基地(アルゼンチン)からフレイ基地(チリ)への移動でロシアの砕氷船に乗船した.船名はVasiliy Golovnin.どこかで聞いたことがある名前だなとブエノスアイレスのインターネットカフェで調べたら,幕末に起こったゴローニン事件の当事者の名前であった.  

砕氷船Vasiliy Golovninの巨大クレーン

ゴローニン事件とは,1811年,千島列島を測量中であったロシア軍艦ディアナ号の艦長ヴァシリー・ゴロヴニンが国後島で松前藩に捉えられ,2年3ヶ月間,日本に抑留された事件である.最終的には国後島沖でディアナ号に拿捕された廻船業者の高田屋嘉兵衛らと捕虜交換するような形で解決された.ご存じの方も多いと思われるが高田屋嘉兵衛は司馬遼太郎の長編小説「菜の花の沖」の主人公である.南極で日本ゆかりの人物名を冠したロシア船に乗船できたのにはなんとも感慨深いものがあった.  

砕氷船ゴローニンは1988年にウクライナで建造され,現在はロシア最大級の運送会社であるFar-Eastern Shipping Companyが運航している.デッキに5つの巨大なクレーンとヘリポートを装備し,船の中央が巨大なコンテナ置き場になっていて305のコンテナを積載することができる.船内を散策したところロシアでよく見かける牛乳パックや調味料などがおいてあり,乗員の大部分はロシア人のようであった.

デッキにたたずむアルゼンチン隊の隊員と船名の標識

砕氷船ゴローニンはオーストラリア,ニュージーランド,アルゼンチンの南極観測隊が人員と物資の輸送のためチャーターしている.2008/2009年の観測シーズンはアルゼンチンの砕氷艦イリサールが2007年4月に発生した船内火災の影響で修復工事中であった.このため,アルゼンチン隊はこの船をチャーターしていて,私は偶然にもこの船に乗船できたようである.
 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3.FENICSイベント報告
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「フィールド×教育」の多様性
―FENICSイベント「人間を育むフィールド(ワーク)教育」への参加を通して-
 
飯塚宜子(京都大学東南アジア地域研究研究所 研究員)
 
2021年12月5日、表題のオンライン・イベントに登壇させて頂いた。私は主に小学生とその保護者らを対象に、教室をフィールドに見立て、俳優と人類学者がコラボし、世界各地域の人々の考え方を紹介するワークショップ・シリーズを企画運営している(マナラボ 環境と平和の学びデザインhttp://manalabo.org/)。プログラムの一つ「動物と話す方法」は、カナダの森に住む先住民カスカの動物観を知るワークショップであり、文化人類学者の山口未花子氏(北海道大学、FENICS13 巻『フィールドノート古今東西』執筆)らと協働で開発した。メディスン・アニマル(守護動物)との対話や、動物の魂を再生させる儀礼などにみられる神話的な思考や動物観について、小学生ら自身が「持ってみる」「送ってみる」など即興的な演劇を行い、その考え方を体験する試みだ。『人類学者たちのフィールド教育-自己変容に向けた学びのデザイン』(2021)の第8章にその様子を書かせて頂いたことからFENICSイベントとご縁を戴いたのである。  
  
上述のように、人類学のフィールド×教育で考えてきたため、FENICSのアリーナはとにかく「広い」印象だった。拝聴した2つの教育実践のアリーナは、普段は踏み込まない処である故に、普段とは異なる感覚を得た。その時の感想を少し記してみたい。井上英治先生(FENICS4巻『現場で育む フィールドワーク教育』執筆)の理学部のフィールドワーク実習では、学生達は嵐山モンキーパークのサルを2週間程観察し、ひたすら動物に向き合い、自分の問いを見出すらしい。驚きの実習だ。私たちマナラボのワークショップでは、カスカ先住民は動物と話す人々として紹介する。動物と話すための第一条件は、動物のことをよく知ることである。無論、カスカは日常的に狩った哺乳動物を食べる人々であり、モンキーパークのサルの観察とは文脈は全く異なる。しかしマナラボの物語仕立てのワークショップに参加する学習者が、2週間サルの生態をひたすら観察する経験を経ていたとしたらどうだろう。想像世界は全く違うだろう、と思わされた。想像力は現実世界での経験の豊かさと無縁ではない。科学と神話の世界は繋がっており、別々のカテゴリーだと考えてしまう私は、ある一定の思考法の罠に落ちてるように感じられた。
  
また、同じく4巻にご執筆の、吉崎亜由美先生の中学校における地理実習フィールドワークの実践は圧巻であったが、吉崎先生の原点は差別のない世界への志向にあるとのことだった。マナラボの他者・異文化理解の目標のひとつも自他の境界を疑うことであるが、学校教育現場でその原点から切磋琢磨する吉崎先生が、やはり「フィールドワーク」という手法を選び取られた道筋には大きな関心をもたずにいられなかった。  

さて私はというと、箕曲在弘先生の「ざっくばらんに」というご指示のもと、自己検閲せず話すうち、「評価」について語ってしまったのは自分でも想定外だった。小学校で演劇教育実践をされる先生方がマナラボの見学に来て下さると、「なぜこんな短時間で子どもたちが即興劇をするに至るのか」と不思議がられる。その理由の一つは、評価されないから、だと思う。実は私も高等学校で数年、教壇に立ったことがある。教育の場の評価軸は、「すべての子どもが到達する目標」で、走り高跳びのバーのようなものだ。規定の枠組に自分を寄せていく営みが評価される。一方で、フィールドワークは宝探しのように私には思われる。宝物の意味づけを、周囲を見渡し発見していく物語の主役は各人であり、それぞれの子どもたちだ。そういう学び方の方が、人間が内的発展を遂げてきたプロセスに近いのではないか。近代以降の教育評価は主客逆転なのではないか。フィールドワークは教育を止めることなく教育を問い直す鍵になりえるのではないだろうか、と話をしながら考えた。
  
本イベントでは登壇の先生方だけでなく、白石壮一郎先生に貴重なコメントも頂くことが出来、椎野若菜先生たち主宰の先生方に大変にお世話になった。大人たちがワクワクと「宝物」を見せ合い、語り合い、新しい発見や変容が生まれる場を、今後も自分も多くの方とわかちあっていきたい、と思う。
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4.FENICSからのお知らせ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)FENICS共催イベント2021年12月26日FENICS 共催ワークショップ(Online)「写真でやってみよう!消費社会のフィールドワーク」
 
FENICS 共催ワークショップ(Online)「写真でやってみよう!消費社会のフィールドワーク」を二回にわけて開催します!

コロナ渦での限られたフィールドワークを有効に行いたい(教えたい)、またフィールドワークでの写真の撮り方のヒントを得たい、という方もぜひ。写真研究家の小林美香さんを講師にむかえます。

日常の中のジェンダー表現を掘り起こそう!
私たちは、日々たくさんの広告メッセージに囲まれて生活しています。それらは都心の景色に溶け込み、私たちの日常生活の中に紛れ込み、 普段はあまり意識して見ることはないかもしれません。でも、 それが私たちの「性」 についての見方に大きな影響を与えているとしたらどうでしょう?
 
FENICS正会員の國弘暁子さん代表の研究会「2021年度早稲田大学特定課題研究「 ジェンダーの人類学と教授法に関する調査研究」 (國弘暁子代表、松前もゆる、碇陽子、菅野美佐子、椎野若菜)」との共催です!
 
①【初級】   2021.12.26(日) 20:30~ ( zoomのリアルタイム配信で行います)
②【実践編】2022.1.22(土)20:00~( zoomのリアルタイム配信で行います)
 
①【入門編】と②【実践編】は、 連続して受講されることをお勧めします。お時間の都合などで①【 入門編】をリアルタイムで受講することが難しい方には、 録画動画を提供しますのでお申込時にお伝え下さい。
参考文献:FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ 14 『フィールド写真術』秋山裕之・小西公大編
15%引き、送料無料でご希望の方はご連絡ください。fenicsevent[at]gmail.com
お問い合わせ:fenicsevent[at]gmail.com
 
共催: FENICS/早稲田大学 2021年特定課題研究「ジェンダーの人類学と教授法に関する調査研究」
 
 
(2)限定公開いたします! FENICSイベント「人間を育むフィールド(ワーク)教育」
 
 12月5日(日)13:00~16:00におこわれたイベントの様子を、参加できなかった方々のためにアップいたします!
 
FENICSイベント2021① 「人間を育むフィールド(ワーク)教育- 学びの余白と自己変容 -」第一部
 
FENICSイベント2021➁ 「人間を育むフィールド(ワーク)教育- 学びの余白と自己変容 -」第二部
 
FENICSイベント2021③「人間を育むフィールド(ワーク)教育- 学びの余白と自己変容 -」第三部
 
(3)「フィールドワークと性暴力・セクシュアルハラスメントに関する実態調査アンケート」を学会をつうじ依頼します
実態調査の趣旨は、下記をごらんください。
 
FENICSがともにおこなっている「共同研究:フィールドワークとハラスメント(Harassment in Fieldwork:HiF)」では、各学会にたいし、上記のアンケート実施を1月15日より開始すべく、依頼を始めました。
学会にお入りの方々は、ご所属の学会より案内が届きましたら、ぜひともご協力をお願いいたします。
人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会(通称 GEAHSS)、また一般社団法人 男女共同参画学協会連絡会からも後援をいただくことができました。ただ、各学会のML等で会員の方々に連絡が届くかどうか、少々不安にも思っております。HiFより、各学会へ連絡させていただきますので、とりわけ理事や評議員のかたがたにおきましては、呼びかけにご協力いただければ大変ありがたいです。
なにとぞよろしくお願いいたします。

 
(4) Facebookのグループ「フィールドワーカーとライフイベント」

ご存じでしょうか。
子育て中の方、また介護中の方などと、イベント時以外でもSNS交流ができれば、とたちあがっています。ぜひご活用ください。グループは、申請制になっています。

最新では、下記を投稿しました;

①マタニティ服
②ベビーバス(シンクにかけられるタイプ;赤ちゃん本舗のもの)
③ベビー服 70cm
④ベビー服 80cm・・・大分、引き取られましたが、まだあります。
⑤ベビー服 90cm


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

4.FENICS会員の活躍
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ヴァイオリニストの永井由里さんのコンサートのお知らせです。

未就学児もともに聴けます。いつもすばらしい活動をなさっています。
「未就学児、小中学生 無料にしているのは、なるべく子供たちにもいい音楽に触れてほしい、という願いから。」
https://yurinagai.exblog.jp/
:::

災害被災者支援コンサート
永井由里(ヴァイオリン)澤村祐司(箏)
ジョイントコンサート
2022年2月27日(日)
 
泉の森会館3階ホール(小田急線狛江駅北口徒歩1分)
入場料 2,000円
(未就学児、小中学生 無料) 
 
第1回 13:30~15:00

(同プログラム)
第2回 16:30~18:00
 
 各回 30名
 
プログラム
春の海(宮城道雄 作曲)
たれかおもはむ(島崎藤村 作詞、 澤村祐司作曲)
シャコンヌ(バッハ作曲)
スペイン民謡
 
主催:泉の森友の会
後援:狛江市教育委員会
お問い合わせ
泉の森会館 03-5497-5444
* * *
 
以上です。お楽しみいただけましたか?
みなさまからの情報、企画、お待ちしています。
 
====--------------======
お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
https://fenics.jpn.org/contact/
メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/