FENICS メルマガ Vol.88 2021/11/25
 
 Web版  https://fenics.jpn.org/fenics/vol-88-2021-11-25/
 
1.今月のFENICS
 
今年も、あとひとつき・・となってきました。コロナ禍での時間の感覚は、少々麻痺しているように思えます。フィールドワークに行った経験が軸となり年間スケジュールの記憶をつむいでいた癖のあるフィールドワーカーには、止まった奇妙な時間でしょうか。
 FENICSの副代表、澤柿教伸さんが、いよいよ越冬隊長として11月10日に南極へ出発しました。FENICS理事たち、LIVE配信にて見送りました。しらせに乗船中はemailもできないとのこと。南極についてから、またメルマガにも写真をよせてもらうことになっています。お楽しみに!https://www.youtube.com/c/NIPRchannel(第63次南極地域観測隊 出発‼ライブ配信 #JARE63)
今月末から来月にかけ、多くのイベントがまた、あります。11月27日には支援イベント「聞きたい!フィールドワークと生理のはなし:ねえねえ,みんな・先輩,どうしてる?!」、12月3日夜に共催イベント「ジェンダー、ライフ、ワークを語り合うパラレルサロン」、8月に発刊した『現場で育む フィールドワーク教育(FENICS 100万人のフィールドワーカー4) 』に関するFENICS主催イベントが12月5日(日)午後に開かれます。本書、15%引き送料無料でのお申込みはこちらへfenicsevent@gmail.com.
オンラインイベントを多く開催、参加費は無料でがんばっています。どうか、FENICSへのご支援・ご寄付も思いつかれましたらお願いいたします!https://syncable.biz/associate/FENICS/
 
 それでは本号の目次です。
 
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1 今月のFENICS
2 フィールドワーカーの乗り物シリーズ②<連載>(福井幸太郎)
3 フィールドワーカーのライフイベント⑧終<連載>(本田ゆかり)
4 FENICSからのお知らせ(イベント予定)
5 FENICS会員からのお知らせ(吉國元)
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2.フィールドワーカーのライフイベント:連載⑤
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フィールドの乗り物シリーズ第2回 「イリューシンIL-76」
 
福井幸太郎(自然地理学、『マスメディアとフィールドワーカー』編者)
 
先日,南極へ向かったFENICS副代表の澤柿さんのように日本の南極観測隊員は観測船「しらせ」で南極入りすることが多い.しかし,ドームふじ基地やセールロンダーネ山地など昭和基地から離れた場所で行動する一部の隊員はDROMLAN(Dronning Maud Land Air Networkの略で東南極のDronning Maud Land地域で観測を実施する11か国が共同で維持している航空網)を利用して航空機で南極に入る.私は過去に二度,日本の南極観測隊に参加したが,二度とも往路は航空機で南極入りしている.    

ノボラザレフスカヤ基地の氷上滑走路とイリューシンIL-76

DROMLANはロシア北極南極研究所が南アフリカのケープタウンに2001年に設立した民間航空会社ALCI(Antarctic Logistics Centre International)に航空機の運航を委託している.このため南極への大陸間フライトの出発地はケープタウンになる.私の場合,48次隊の時はシンガポール経由,54次隊の時はドバイ経由でケープタウンへ向かった.ケープタウンは日本からもっとも遠い世界の主要都市のひとつであるが,ブエノスアイレスなど南米方面よりは正味の搭乗時間が1~2時間短く多少近く感じた.  

ケープタウンでは,観測物資の確認やフライトについてのブリーフィングを受けた後,南極の天候や滑走路の状況が良くなるまで数日待機する.出発はケープタウン国際空港.大陸間フライトはロシアの南極基地であるノボラザレフスカヤ基地(通称のノボ基地)まで4200km,約6時間かかる.

ケープタウンに着陸直前のイリューシンの機内.

この大陸間フライトに使われている機体が旧ソ連(ロシア)製大型ジェット機イリューシンIL-76-TDである.前回紹介したC130輸送機よりも二回りくらい大型の輸送機で積載重量はC130の2倍以上の40tを超える.輸送機なので窓は無いが,ALCIのIL-76の機内にはシートが置かれ,客室(荷室?)前方のスクリーンには機体前方のライブ映像がうつし出されていて閉塞感が大分緩和されている.客室後方には簡易トイレが設置され,C130輸送機と比べると天国のように快適な乗り物であった.快適な乗り物ではあったが,着陸時にノボ基地の氷上滑走路でタイヤが滑っている感じがした点だけはいただけなかった.
 
 
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3.フィールドワーカーのライフイベント⑧
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海外日本人社会というフィールド ―駐在員の妻として、女性研究者として―
        本田ゆかり(東京外国語大学大学院総合国際学研究院 特別研究員)
 
【駐妻×研究者】
 駐妻になって約10年間、私は夫の海外転勤に随伴しながら研究者として生きる道を模索してきた。そして、ありがたいことに日本でポスドク研究員として研究者番号を得て、科研費を二度獲得することができた。また、専門分野である日本語教育の教材開発や学術書等、共著ばかりだが合計9冊を執筆し、数か国で海外ライセンス版も出版していただいた。ネット環境さえあれば世界のどこにいてもできる在宅ワークによるものである。
 さらに、新型コロナの流行によって世の中ではあらゆる業種でリモートワーク化が進んだ。会議や授業のみならず、今では学会もリモートで参加することができる。この状況は駐妻研究者にとって追い風である。
私はこれからも研究や出版を続けていくつもりだ。海外を転々とするので日本の大学教員にはなれないが、子供には幼いうちから外国語や世界の多様性を学ぶ特別な環境を与えられるし、私自身その生活が好きである。家族との時間を優先しつつ在宅で働く駐妻研究者というあり方が、今の私にはベストであると感じている。これからも挑戦していきたい。
 
【アフターコロナの駐妻】
最後に、私自身の話ではなく駐妻一般の話として記す。官民問わず駐在員帯同家族の現地就労はビザの問題もあり制限されていることが多いのだが、働く女性が仕事を辞めて随伴すると、やることがなくなり、キャリアを中断した喪失感から悩んだり、心を病むこともある。そうなれば、就労を禁止する大義名分である駐在員の夫を支えるというお役目すら果たせなくなるだろう。日本では経済低迷が続き「女性の活躍」などと言われて働くことが奨励され共働き世帯の割合が増える一方で、海外駐在に帯同する場合には就労制限し、キャリアを断絶させるのはいかがなものか。ある意識調査によると海外駐在に家族帯同しないと答える人は2人に1人という。その理由には、自分の仕事の理由や世帯収入の問題が上位にある。

出版社のウェブサイトから著書の紹介動画を公開中。企画、執筆、販促まですべてリモートワークで完結します

そんなに現地で仕事をしたいのなら家族帯同するのではなく自分で就労ビザを取ればよい、という意見もある。しかし、パートナーがたまたま駐在になった国(町)に自分も駐在員として行かせてもらえるようなケースは極めて稀だろうし、現地で就活したとしてもその国の事情や言語もわからない外国人にいきなり就労ビザを出してくれるような求人も少ないだろう。仕事内容や待遇面の問題もある。不可能ではないが、自分のパートナーが赴任するどんな外国でも仕事を続けていくことができるのは、限定的な業種の外国語に長けた人だけというのが現実であろう。しかし、外国にいてもフリーランスなら働きやすいし、パートタイム程度の仕事なら見つけやすい。子育て中なら仕事量をセーブして働きたい人も多いと思う。日本にいればパートナーの扶養に入っていてもこのような働き方で仕事を続けることができるが、駐妻にはそのような多様な働き方の選択肢はない。言われた通りのルールにまともに従っていると、自分の就労ビザが得られるフルタイムの働き方か専業主婦/夫というほぼ二択になってしまう。  

 しかし最近は、新型コロナの流行によって日本企業でもあらゆる業種でリモートワーク化が進んだ。そのような仕事なら海外にいてもできるので、パートナーの会社に確認、交渉し、ビザや法律上の手続きを経て在宅ワークを行う駐妻さんもおり、今後はこの傾向に向かうのではないかと予想している。私は研究者として海外リモートワークを実践してきたが、これは他の業種でもやれることである。駐妻の働く選択肢は増えてきている。この動きを加速させ、旧態依然としたジェンダー不平等感がそこはかとなく漂う日本人駐妻社会に風穴を開けてほしいと思う。
 
 (連載終わり)
 
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5.FENICSからのお知らせ
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(1)2021.11.27(土)FENICS支援イベント「聞きたい!フィールドワークと生理のはなし:ねえねえ,みんな・先輩,どうしてる?!」第2回
 
2021.11.27(土) 20~21時 
FENICS正会員の久世濃子さんらの企画イベントです!
 
開催日時:2021年11月27日(土)20時〜21時
開催方法:Zoomウェビナー形式(匿名での参加も可能です)
対象:どなたでも
*性別・年齢問わず視聴を歓迎します。前回は参加者の10%程度が男性でした。
 
以下の2つのテーマを中心に、気軽にご参加できるような形でトークを行いたいと思います。
 ①どうすれば,「配慮」になる?
 ②話題提供「大型類人猿の生理事情」
 
ゴールとしては、20代-30代の大学生〜若手研究者の声と,指導教官のお立場(or めざしている研究者)をつないでいくようなお話ができればと考えております。
 
(2) 2021.12.3(金) FENICS共催/JASCA主催「ジェンダー、ライフ、ワークを語り合うパラレルサロン」
 
日本文化人類学会で初めてたちあがった男女共同参画・ダイバーシティ推進委員会の4人の人類学者が、19時からと21時から、zoomブレークアウトルームで各時間帯に二店ずつ、計四つのサロン店を開きます。飲みながらでも、寝かしつけながらでも、気軽にお立ちよりください。くわしくはこちらdlvr.it/SCpKnZ
 
日時:2021年12月3日(金) 
場所:Zoom
時間 ①19:00~20:45  ②21:00~22:45
 
 
①19:00~下記、二つの店が開きます。
 
★「ジェンダーと文化人類学」 
サロン店主:中谷文美(岡山大学・教授)  
 
★「フィールドに行くのは夢のまた夢?」
 サロン店主:嶺崎寛子(成蹊大学・准教授)
 
②21:00~ 下記、二つの店が開きます。
 
★「同業者がパートナーってどんな感じ?」  
サロン店主:岩佐光広(高知大学・准教授)
 
★「子連れフィールドワークしてみる?」  
サロン店主:椎野若菜(東京外国語大学AA研・准教授) 
 
(3)2021.12.5(日) FENICSイベント「人間を育むフィールド(ワーク)教育」(オンライン)
 12月5日(日)13:00~16:00
 
※事前登録は必要ありません。初めてのYOUTUBEライブ配信とします!当日、下記のURLにいってから、YOUTUBEのURLをクリックしてください。  
初めにご案内したものと、変更しておりますのでご注意ください。
2021年8月に出ましたFENICS100万人のフィールドワーカーシリーズ4巻『現場で育む フィールドワーク教育』(増田研・椎野若菜編)の発刊記念イベント、第一弾!
 
今回は、もう一冊の『人類学者たちのフィールド教育』(箕曲在弘・小西公大・二文字屋脩 共編)の編者たちとともにイベント企画しました。これからの教育における「現場での育み」の可能性を語り合います。  
著者・編者、そしてコメンテイターには、『社会問題と出会う』の編者、FENICS理事の白石壮一郎さんを迎えます。
 
2021.12.5 (Sun) 13:00〜16:00 YOUTUBEライブにて!
 
Part 1. トークセッション(13:00-13:40) 司会:小西公大(東京学芸大学)
      ・『人類学者たちのフィールド教育』紹介  箕曲在弘(早稲田大学)
      ・『現場で育む フィールドワーク教育』紹介 増田研(長崎大学)
      ・「フィールドワーク×育み・学び」に関するフリートーク- 学びの余白と自己変容」
 
Part 2. 教育現場からの事例紹介 (13:50-14:50) 司会:二文字屋脩(愛知淑徳大学)
             ・飯塚宜子(京都大学)<異文化教育、小学生>
        ・吉崎亜由美(桐朋女子中・高等学校)<地理・ESD・中高生>
      ・井上英治(東邦大学)<サル学、大学生>    
 
Part 3. 全体ディスカッション (15:00-16:00) 司会:増田研(長崎大学)
     ・「これからのフィールド(ワーク)教育」 編者&執筆者
     ・コメンテーター:白石壮一郎(弘前大学)
  
当日までに、15%引き、送料無料でFENICSシリーズ4巻『現場で育む フィールドワーク教育』を購入したい方はご連絡ください!   
 
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5.FENICS会員からのお知らせ
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FENICSとたびたび共催イベントを行っている画家、吉國元さんが3回目となる個展を開きます。
ぜひお運びください。
 
吉國元 個展「SEE ME WHEN YOU CAN」  
 
会期:2021年11月24日(水)~12月18日(土)  16:00-22:00
定休日:日・月・火
会場:スタジオ35分  
住所:東京都中野区上高田5-47-8
※新型コロナウイルスの状況次第で日時変更もありますので、SNSまたはホームページをご確認の上でご来場ください。
 
HP‘MOTO YOSHIKUNI’より抜粋
「寝床と台所を見渡す小さな部屋で、私は机に向かい絵を描いている。この部屋が私の避難場所であり、作業はそこで少しづつ進めるしかない。描いているのは生まれ育ったジンバブウェで出会った人々、日本に住むアフリカの友人たちである。
 
昨年、数十年振りに生まれ故郷を訪れる予定であったが、ジンバブウェも世界規模のパンデミックのために国境を封鎖し、自国民以外の入国を制限していた。私は1986年に首都のハラレで生まれたが、当時の政府は国外からの長期滞在者であった両親の子に、両親がそれを望んでいたにも関わらず、私にジンバブウェの国籍を認めなかった。そのような理由で、私は「外国人」として、ジンバブウェに入国する事が適わなかった。」

吉國元(美術家)
1986年ジンバブウェ・ハラレ生まれ。父はジンバブウェ現代史、アフリカ人都市労働史を専攻した社会学者、吉國恒雄で、母は子供二人を育てる傍らジンバブウェの普通の人々を取材して本を出版しています。
幼少期を過ごしたジンバブウェで出会った人々の肖像を描き続けている。
 
これまでの個展
2018 「アフリカ都市経験:1981年植民地以降のジンバブウェ・ハラレの物語」OGUMAG ギャラリー、東京
2020 「来者たち」Cafe & Space NANAWATA、埼玉
 
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以上です。お楽しみいただけましたか?
みなさまからの情報、企画、お待ちしています。
 
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メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
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