FENICS メルマガ Vol.121 2024/8/25
1.今月のFENICS
酷暑の8月のしめくくりは、大型台風でした。まだまだ気が抜けませんが、皆さまのご無事を祈っております。
フィールドから帰ってきた方、そろそろお帰りになる方もいらっしゃるでしょうか。編集人は、この夏は東京にいて、政治の世界を少し、フィールドワークした気分でいます。というのも、FENICSの100万人のフィールドワーカーシリーズ12巻『女も男もフィールドへ』の発刊以来、FENICSサロンにてライフイベントに関するイベントを2015年の初回以来、計16回開催し続けてきた経験をいかし、このたびギース(人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会 :72の人文社会科学系の学会が加盟)から内閣府、文科省、厚生労働省といった関係省庁にあて、要望書を提出しました。初期キャリアの方々のおかれている雇用条件の悪さ、それが故にライフイベントと研究の両立が困難である状況、また不妊治療への補助やその間の授業の補助、大学における保育・学童施設の充実、大学を評価し補助金などを決定する際の評価基準にジェンダー関連への取り組みをいれる等の内容を盛り込みました。またFENICSと協力関係にある「HiF(フィールドワークとハラスメント)」による実態調査の内容にも言及しました。
9月2日に関係省庁と質疑応答するため、参議院議員会館で院内集会を開催します。初めての試みで、何をどうするか分からず、議員訪問、院内集会の開き方のノウハウ、全国会議員への院内集会の案内をポスティングする、など要望書作成のために動いてきた仲間たちと動きました。私自身はアフリカ研究が専門ですが、自分の出身である日本社会の「生活」における諸問題と政治のつながりに関し、あまりに自分自身が知らないことが多いと実感し、また実際に行動するそのこと自体が、フィールドワークのようであるとも感じています。
フィールドから帰ってきた方、そろそろお帰りになる方もいらっしゃるでしょうか。編集人は、この夏は東京にいて、政治の世界を少し、フィールドワークした気分でいます。というのも、FENICSの100万人のフィールドワーカーシリーズ12巻『女も男もフィールドへ』の発刊以来、FENICSサロンにてライフイベントに関するイベントを2015年の初回以来、計16回開催し続けてきた経験をいかし、このたびギース(人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会 :72の人文社会科学系の学会が加盟)から内閣府、文科省、厚生労働省といった関係省庁にあて、要望書を提出しました。初期キャリアの方々のおかれている雇用条件の悪さ、それが故にライフイベントと研究の両立が困難である状況、また不妊治療への補助やその間の授業の補助、大学における保育・学童施設の充実、大学を評価し補助金などを決定する際の評価基準にジェンダー関連への取り組みをいれる等の内容を盛り込みました。またFENICSと協力関係にある「HiF(フィールドワークとハラスメント)」による実態調査の内容にも言及しました。
9月2日に関係省庁と質疑応答するため、参議院議員会館で院内集会を開催します。初めての試みで、何をどうするか分からず、議員訪問、院内集会の開き方のノウハウ、全国会議員への院内集会の案内をポスティングする、など要望書作成のために動いてきた仲間たちと動きました。私自身はアフリカ研究が専門ですが、自分の出身である日本社会の「生活」における諸問題と政治のつながりに関し、あまりに自分自身が知らないことが多いと実感し、また実際に行動するそのこと自体が、フィールドワークのようであるとも感じています。
ライフイベントに関するFENICSサロンも、これまでの経験の蓄積を国への要望という形に反映できてよかったです。ただ、こうしたサロンの開催を継続する担い手も変わっていくべきだと思っています。関心のある方は、いつでもお声かけください!
本号も、大変遅れ恐縮です。さて、目次です。
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1 今月のFENICS
2 私のライフイベント(大谷琢磨・関野文子)③
3 子連れフィールドワーク(椎野若菜)③
4 FENICSイベントリポート(津田啓仁)
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2. 私のライフイベント
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「お互い院生、結婚・出産どう決めたお金は?日々の子育てのリアル」③
大谷琢磨(文化人類学・アフリカ研究 JSPS RPD/立命館大)・関野文子(人類学・アフリカ研究 京都大学ASAFAS)
前回のFENICS メルマガ Vol.119 とVol.120での連載①②では、関野と大谷の視点で結婚、出産までの過程を振り返った。今回は、単身フィールドワークと残される家族の過ごし方について、二人でゆるりと話した内容を、トーク形式で紹介する。我が家では、2022年5月に娘が生まれ、一歳5ヶ月の時に、妻である関野が、計2ヶ月半カメルーンに単身渡航し、その間、大谷は博論を書きながら、娘と二人生活を送った。そして今年の8月末からは、夫である大谷がウガンダに1ヶ月渡航する予定である。フィールドに行く者と、日本に残される者と子育て、備忘録も兼ねて報告させていただきたい。
※たくちゃん=大谷
※あやちゃん=関野
話題1 2023年10月〜12月関野単身渡航&大谷ワンオペの振り返り
関野:去年、私は10月に2週間と11月に2ヶ月カメルーンに調査に行ったね。国際ワークショップの参加のために2週間行って、たくちゃんの博論の予定もあったから、一旦、10月末に帰国して、2週間だけ京都に滞在をして再び調査のための渡航をしたね。最初2週間短期で行けたのは練習になったから良かったよね。
関野:2週間の最初の渡航の時はどうだった?
大谷:初めの1週間は順調だったけど、残りの1週間でAちゃん(当時1歳5ヶ月)と僕がインフルエンザにかかってしまって僕は、執筆どころではなかった。二人ともインフルエンザの予防接種受けたのに。
関野:インフルエンザの時は誰にも助けてもらえなかった?
大谷:両親がちょうど帰ってしまった後だったから、平日3日間ぐらい2人きりで生活していた。保育園は休んで、Aちゃんはしんどくて気分を変えたがって外に出たがるから、ずっと外を散歩してた。家にいてもずっとAちゃんは機嫌が悪いし、しんどかった。
関野:まだ1才半だったし、体調悪いとずっと抱っこだもんね。私が居ない間、ごはんはどうしてたの?
大谷:ごはんは週末にうちの母が来た時に作り置きを用意してくれていて、それが救いだった。料理しなくていいのは助かった(土日は車で2時間くらいの所に暮らす両親が手伝いに来てくれていた)。
関野:お母さんに週末に作ってもらっていたのを、平日に食べていた感じね。
大谷:そうそう金土日で泊まりにきてくれていた。
関野:病児保育とかは考えなかった?
大谷:インフルだし預けられないと思っていた。
関野:まあ、そういう状況になると考えられないよね。しかも病児保育の施設は家から遠いし、2人とも体調崩している時に簡単に行ける距離ではないね。
大谷:あと以前、病児保育を利用したことがあって、そのお迎えの時にAちゃんがかなり泣いていたり、スタッフの方が冷たかったりして、良い思いをしなかったからというのもある。
関野:うん、あそこの病児保育はもう預けたくないね。今度、たくちゃんが居ない時に預けないといけなくなったら別の病児保育に預けようようかな〜。でもあそこは診断書がないと受け付けてくれないし、受け入れ人数が少ないから預けるハードルが高いな。
関野:他にワンオペで大変だったことはある?
大谷:11月の博論の提出までが大変だった。2度とこういうことはしたくない。締め切りが迫っているから睡眠時間を削る日が続いた。でも睡眠時間を削ったから、持病の逆流性食道炎が悪化してしまって、日中気分が悪くて食欲もなかった。睡眠時間が8時間を切ると胃の調子が悪くなってしまう。といっても、睡眠時間を削って自分がぼーっとして、Aちゃんをケガさせてもいやだから、日付が変わるまで執筆することはなかったかな。
関野:何時ぐらいに寝てたの?夜遅くまで、家事とか執筆しても起きる時間は一緒でしょ?
大谷:夜10時くらいにAちゃんが寝て、そこから2時間くらい作業をして、7時に起きてた。睡眠時間は7時間だけど、Aちゃんが途中起きたり、布団がかかっていなかったら起きて布団をかけたりしていたから、しっかり7時間寝られたわけではない。準備して9時半に保育園に預けて、15時半に帰宅してごはんの支度や掃除などをして、17時にお迎えに行っていたよ。
関野:それは全然時間ないね。たくちゃんは、いつもお掃除もちゃんとして、きれい好きだしマメだもんね。土日はどうして過ごしていた?
大谷:土日は、両親が手伝いに来ていたので、日中3〜4時間は博論の執筆ができていたよ。
関野:逆に楽しかったことはないの?
大谷:記憶がない。
関野:ないのかいな〜
大谷:二人っきりでAちゃんが自分のことを信頼してくれていることは嬉しかった。僕がしっかりしていなければAちゃんは生きていけないと思っていたから、気をずっと張っていたよ。
関野:う〜ん、それは考えすぎじゃない?
大谷:でも、僕がしっかりしないと何かあったら大変。最低限の目標は、あやちゃんが帰国するまでにAちゃんを健康で生かしておくこと。だからあやちゃんが帰ってきたときには安堵感から泣いた。
関野:うん、そうだったね。Aちゃんは今よりもずっと小さかったしね。でも私がいない間にすごくおしゃべりが上手になっていてびっくりしたよ。「Aちゃんこれすきなの〜」って言うようになったって、カメルーンにいる時に聞いてびっくりしたのを覚えている。
大谷:あやちゃんは、カメルーンの現地ではどんな風に過ごしていた?
関野:11月の調査時は、ほとんど村にいたから、Aちゃんとたくちゃんとの通話も2ヶ月近くできなかった。ソーラーパネルでスマホの充電をしていたから、夜テントで撮りためたAちゃんの写真とか動画を見るのが楽しみだったよ。あと、たくちゃんにその日のことを話す代わりに日記を書いていたかな。町とか調査基地に数日いた時には、データ通信して写真を貪るように見ていたよ。でも、LINEは通信状況が悪くて、全然更新されなくてすごくイライラした。途中で、Whatsappだと結構写真とかも見られることに気づいて、サクサク写真が見られたときは嬉しかった。
関野:毎日二人のことを考えていたけど、通信も取れないし、ずっと一人で行動していると、あれ、自分って子供いるのかな?とか、結婚してたんだっけ?みたいな気持ちにもなったな。Aちゃんに忘れられていないか、心配だったけどね。
大谷:Aちゃんは、あやちゃんが一回目、10月に帰ってきた時は、バーバが帰ってきたと思ってたよ。ママが居ない間は、心のよりどころがバーバだった。パパよりバーバだった気がする。 でも、Aちゃん、ママのこと忘れてはなかったよね。ずっとママの写真をアルバムで見ていたしね。でも帰ってきた時、居心地が悪そうだったというか、戸惑っていたね。
関野:うん、帰国して最初にただいま〜!って抱っこした時は、Aちゃんの柔らかさにやられた〜フワフワな抱き心地がたまらなかったな。でもその次の瞬間は、パパ抱っこして〜ってパパのところに行っちゃった。帰国して3日くらいは、私も普通に遊んだけど、抱っこだけはパパだったね!
大谷:そのあとはパパいや〜!って言われてママ抱っこにシフトしていったけど。
関野:そうだったけ?帰ってきた時の2人の絆の強さはすごく感じたな。ほんと2人で頑張ったんだな〜って。ちょっと寂しかったけど、それは嬉しかった。
(つづく)
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3. 子連れフィールドワーク③
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5歳児と10歳児とともに、ウガンダ調査へ 2023夏
椎野若菜(社会人類学・アフリカ研究/FENICS・東京外国語大学)
子どもたちに西部ウガンダでの調査につきあわせた後のご褒美、また親側のリフレッシュもこめて、首都カンパラに帰る道中、国立公園で一泊のキャンプをする予定をいれていた。日本から持ちこんだテントとシュラフは車に積んでいた。アフリカではキャンプサイトでの直火も基本なので、鍋と飲み水、食べ物をもっていくことが基本だ。サファリ用の車ではなく、小型普通車では悪路に進めず動物観察も難しかったが、その範囲でのサファリで、キリンやシマウマ、アンテロープやガゼル、イボイノシシを見て楽しんだ。薪を集め火をおこし、軽く夕食をとったあと、湖からもしかして夜中に上ってくるかもしれないカバの声と、イボイノシシの親子たちの声で、子どもたちは震えながらも、テントで一晩を明かした。
カンパラに帰ってからは、親の私たちは次の大事なイベント、マケレレ大学での二国間交流事業の会合の準備にとりかかろうとするものの、元気な男子二人が回りにいては、何もできない。夫が、滞在する居所の近くに地元の学校が夏休みに入るまえ、少しだけ開いている、と数日でも子どもたちをその学校に通わせる話をつけてきた。初日、申し込みとともに、学校の様子を見に行く。トイレをチェック、食べるところをチェック。共用トイレは衛生面で不安があったので、寄宿舎のトイレの使用を交渉し、子どもたちにも言い聞かせた。軽食やランチもでるが、子どもが現地食を食べられるか分からず、こちらで準備することにした。アフリカでは、交渉次第でことが動く。
二男Lは、学習レベルが知りたいと、試験を受けることになった。長男Jは、教室でのアクティビティにさっそく参加した。ちょうど試験が終わったときで、生徒たちが教員のように、交代でテストにでた得意な箇所の説明をしていた。まさに、教員のようにふるまい、クラスをしきる子どもたちが面白く、これは人前で話す、リーダー養成のトレーニングか、と感じた。
帰りに、要塞のようなスクールの門の内側をみると、VOTE!と生徒会の会長や役員選挙の立候補者の立派な写真入りポスターが貼られていた。アフリカでは、小学校のときから、リーダーを選挙で選ぶ、そのためのキャンペーンをすること、すなわち立候補しみなにアピールする演説をすること、を学んでいくのである。教室での教員のようにふるまい、自分の持ち時間にクラスメートをひきつけていく力に、驚いた。政治への参加教育が、子どもたちだけでなされていることに好感をもった。これが中等教育、そして大学では国会と同様のシステムで学内での政治活動が行われる。
二男Lは、学習レベルが知りたいと、試験を受けることになった。長男Jは、教室でのアクティビティにさっそく参加した。ちょうど試験が終わったときで、生徒たちが教員のように、交代でテストにでた得意な箇所の説明をしていた。まさに、教員のようにふるまい、クラスをしきる子どもたちが面白く、これは人前で話す、リーダー養成のトレーニングか、と感じた。
帰りに、要塞のようなスクールの門の内側をみると、VOTE!と生徒会の会長や役員選挙の立候補者の立派な写真入りポスターが貼られていた。アフリカでは、小学校のときから、リーダーを選挙で選ぶ、そのためのキャンペーンをすること、すなわち立候補しみなにアピールする演説をすること、を学んでいくのである。教室での教員のようにふるまい、自分の持ち時間にクラスメートをひきつけていく力に、驚いた。政治への参加教育が、子どもたちだけでなされていることに好感をもった。これが中等教育、そして大学では国会と同様のシステムで学内での政治活動が行われる。
二男のLは二日目から嬉しそうに朝も一人で出かけそうになった。帰りも迎えにいくと、友だちもついてきた。
(つづく)
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4. FENICSイベントリポート
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★イベントリポート★
第2回 「フィールドワークする身体―ゆっくり歩く・ぜんぶ書くー」 FENICS 連続トーク「フィールドワークと生き方・働き方」
津田啓仁(FENICS/文化人類学/秋田公立美術大)
「ゆっくり歩く、ぜんぶ書く」という1泊2日ワークショップを2023年10月に実施しました。会場は秋田公立美術大学、参加者は10名強で秋田からが半数、それ以外は関東を中心に全国から、学生や教員、会社員まで多様なメンバーが集まりました。
そもそも「ゆっくり歩く、ぜんぶ書く」という企画の狙いは、フィールドワークを普段と違う視点から実験してみよう、というものです。多くの時間をかけて調査者はフィールドをあちこち歩き回りますが、それを少し極端な形で組み換え実験をやってみる。そうしてフィールドワークという方法を考えてみる、ということをテーマにしています。
実際の回の内容は多岐に渡るため、ここでは概要とそこから得られた一つの気づきを共有いたします。
1日目は、ゆっくり歩く練習。ホワイトキューブのような教室の空間で繰り返し5mをゆっくり歩きました。2日目は、外でゆっくり歩いてみる。参加者共通の擬似フィールドワーク体験として秋田県秋田市の新屋という場所でグループに分かれて各々散策し、好きな場所で5mをゆっくり歩きました。また、歩いた後にその歩行中に感じたこと・考えたことを「全部書く」ということにトライしてもらいました。
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以上です。お楽しみいただけましたか?
みなさまからの情報、企画、お待ちしています。
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メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/