FENICS メルマガ Vol.37 2017/8/25

1.今月のFENICS

 夏休み、いかがお過ごしでしたか。日本はまだまだ暑いと聞いております。
 こちら、暑いインドから暑い日本へ、そして涼しい/寒いナイロビに渡っての配信です。この夏二回目の渡航、母子ともに慣れたところです。
 フィールドワークにお出かけの方も多いと思います。どうぞ、最後までご無事で、フィールドからのニュースをFENICSにお届けください!
 音の便りもお待ちしています!

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それでは本号の目次です。

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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(小林誠)
3.フィールドワーカーのおすすめ(小森真樹)
4.FENICS企画:フィールドの「音」募集!
5.イベントリポート(宮本道人)
6.今後のFENICSイベント

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2.私のフィールドワーク
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空港にて

小林 誠(6巻『マスメディアとフィールドワーカー』執筆者/社会人類学)

 ツバルの首都フナフティ環礁に、国際空港とは名ばかりの小さな建物がある。普段は人っ子一人いないが、毎週、火曜日と木曜日の正午前後に、多くの人々でごったがえす。そう、火曜と木曜は、唯一の空路であるフィジーのナウソリ空港との間を数十人乗りのプロペラ機が往復する日なのだ。飛行機が来てから飛び立つまでのほんの数時間の間に、出発する人と見送りに来た人、到着した人とお迎えに来た人とで、別れと出会いが交錯する。
 娯楽に乏しいこの島では、飛行機の発着はちょっとしたエンターテインメントになる。そのため、特に見送りや迎えの予定のない、簡単にいえば、関係のない人々もたくさん集まってくる。彼らのお目当ては航空ファンのように飛行機の離着陸を見ることではなく、その飛行機で誰と誰が来て、誰と誰が行くのかを見ることである。飛行機の離着陸の前後は滑走路が封鎖されるものの、申し訳程度の柵があるだけなので、空港の建物の周りにいれば、飛行機から乗り降りする人々をほんの十数メートル先に見ることができる。
 集まった人々は、誰がどういう目的でどこに行くのか、あるいは誰がどこで何をして帰って来たのかというのを話しをしながら、乗り降りする人々を眺めている。一国の首都とはいえ、フナフティ環礁の人口はわずか6000人ほど、ツバル全体でも1万人を少し超える程度である。さすがに、全員が知り合いというわけにはいかないが、ツバル人が何人か集まれば、誰が誰かはだいたい把握できる。この島に住む人々にとって空港は意外にも日常生活の中にある。多くの人々がフィジーやニュージーランドとの間を行き来しており、誰がどこにいくのかという最新情報、あるいは噂のネタを仕入れに空港に来るのだ。
 私もフィールドワークの合間に、空港に来て、乗り降りする人々を知り合いと一緒に眺めていた。とりわけ目を引くのは、大量の首飾りをして旅立つ人々である。ツバルを離れる人に対して、旅の安全を祈って貝殻でできた首飾りが贈られる。海外への移住者などは何十個もの首飾りで首が回らないほどになる。また、ニュージーランドでの生活が長いツバル人は、降りてくる瞬間に、着ている服や雰囲気などでなんとなくわかる。素行が悪くてニュージーランドからツバルに帰国させられる若者などが降りてくると、それを噂する人々の声があちこちから聞こえてくる。
 この空港に降り立つのは何もツバル人だけではない。フィジー人、インド人、中国人、台湾人、オーストラリア人、日本人などが様々な目的でやって来る。私が長期の調査をしていた2000年代後半には、気候変動に「沈む」島、ツバルを取材をしに、テレビ、新聞などの日本のマスメディア関係者が頻繁にやって来るのをみかけた。離島で神話と首長制についての調査をしてきた筆者だが、試しに話しかけてみたら話が弾み、気がつくとメディアの取材班を手伝うことになった。期せずしてメディアの取材についてのフィールドワークもすることになった。空港は普段は関わりのない人をつないでくれる場所でもある。
 空港といえば、離島で1年弱のフィールドワークを終えて一時帰国のためフナフティ環礁でしばらくのんびりしていた時に、当時、大学院の指導教員だったT先生が飛行機のタラップから降りて来たのを思い出す。事前に何も知らされなかったので、あまりにも驚き過ぎて、その後、しばらく身を隠してしまったが。

アクセス
 ツバルへ行くためには、まずフィジーへ行かなければいけない。フィジーのナウソリ空港からツバルのフナフティ空港までプロペラ機で2時間半である。10年ほど前にはツバル行きの飛行機は故障が多く、いきなりその日は飛ばないと言われることも珍しくなかったが、今は大幅に改善されていて「普通」に飛ぶ。

写真1 フナフティ国際空港

写真2 空港で見送りをする人びと

写真3 飛行機に乗り込む

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3.フィールドワーカーからのおすすめ
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フィールドごはん:dive barとbottle shop

小森真樹(第13巻執筆者・ミュージアム研究/フィールド:アメリカ合衆国フィラデルフィアほか)

 フィールド「ごはん」じゃないのかもしれないのだが、アメリカではどこに行っても地元産のビールが充実している。いわゆるクラフトビールってやつだ。夕方に閉館することの多いミュージアムでのフィールドワークを終えて、ノートを取りながらぐいっと一杯。安く、どこでも買えて気軽に飲める。そして大抵うまい。
 面白いお店の探し方。地元志向の飾り気のないバーは「ダイブ・バー」と呼ばれる。ちょい高めのクラフトビールも置いてあるにはあるが、ハードリカーの安酒ショットや水のように薄い安いビールをみんながぶがぶ飲んでいる。つまみは クリップで壁に吊るされたスナック菓子くらい。フード持ち込みウェルカムな店も多い。近所のおっさんたちや学生が、毎日のように馴染みのバーに通っていて、客同士知り合って一緒に飲み始めたり、名物おかみさんに絡まれたりと楽しい。フィラデルフィアにいらしたら、ビールをチェイサーにショットを飲む(!)名物シティワイド・スペシャルをぜひ。
  「ボトルショップ」とは、ビールのボトルが並んでいてその場で買って飲める酒屋兼バーのこと。日本語で言う「角打ち」だ。いくらビールが安いと言っても、普通の飲み屋やレストランだとけっこう値が張るが(チップも入れるとなおさら高い)、小売価格で飲み続けられるし、一杯ごとに次々味を変えて延々楽しめるのもいい。フィラデルフィアで馴染みだったバーのラインナップ、その数2000種類超!バーでは厳しく身分証チェックされるので、パスポートは忘れずに。

写真1 シティワイド・スペシャル4連発。発祥の地と噂されるBob and Barbara’sにて。

写真2 ボトルショップBanhmi&Bottlesのシティワイド・スペシャルのメニュー。ヴェトナム料理も食べられます。

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4.FENICS企画:フィールドの「音」募集!
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https://goo.gl/V4vBnt

今年もまた、フィールドに行かれる際に「音」を集めてきてください!
日常の雑踏の音、おしゃべりの声、子どもの遊ぶ声、風や氷の割れる音、山を登る音などなど。
まだまだ、さまざまな音を集める予定です。よろしくお願いいたします!!!

データはfenicsevent@gmail.com へメールの添付などでお送りください。
やりかたが分からない場合は、お気兼ねなくお問い合わせください。
皆さんのフィールドの音をお待ちしております。

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5.イベントリポート*会員より*
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「世界を変える教育 ~フィールド教育・アート教育・変人教育~」イベントレポート
変人類学研究所 宮本道人

 2017年6月18日、武蔵小金井にて、「世界を変える教育 ~フィールド教育・アート教育・変人教育~」というイベントが開催された。主催はFENICS×こどもみらい研究所×変人類学研究所。三つの研究者団体による合同イベントである。
 最初に、フィールドワーカーのネットワークであるFENICS代表・椎野若菜さんが話された。「フィールドワークは専門家のものではない。研究者のためではない研究だ」という旨の言葉が印象的だった。次に司会・小西公大さんがイベント趣旨を話された。今回のキー概念である「変人教育」には、フィールドワーカーの「いかに外に飛び出していくのか」という視点や、アートの「価値観・常識の既存の枠組みを超える」視点が必要なのだ。
 一番目のセクションは澤柿教伸さん・澤柿教淳さんによるお話。お二人は兄弟で、兄・澤柿教伸さんは氷河や地質の研究者、弟・澤柿教淳さんは理科教育法が専門で、学校教員を経て現在は大学教育学部で教員養成に携わっている。教伸さんは20年位前から南極観測隊として4回南極に行っており、一方教淳さんは2012-3年の4ヶ月、教員派遣隊員として南極に初めて行ったそうだ。・・

つづきは、こちらへ・・

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6.今後のFENICSイベント
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FENICS協力イベントのお知らせです。

エンサイクロペディア・シネマトグラフィカを見る連続上映会13
「口をめぐるものがたり」

■日時 :2017年9月15日(金)18:30開場/19:00開演
■会場:space&cafeポレポレ坐(東京都中野区東中野4-4-1-1階)
■ゲスト:赤坂憲雄(民俗学者)
     三上敏視(音楽家、神楽・伝承音楽研究家)
■予約:03-3227-1405 event@polepoletimes.jp(ポレポレタイムス社)
■料金:予約:1,500円/当日:2,000円(ワンドリンク付)
公益財団法人下中記念財団、ポレポレタイムス社 共催

イベントの詳細、予約や問い合わせなどは以下のサイトをご覧ください。
http://ecfilm.net/show/ec13

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以上です。お知らせ、いつでもご連絡ください。発信、掲載いたします。
FENICSと共催・協力イベントをご企画いただける場合、いつでもご連絡ください。


寄稿者紹介

社会人類学 at 東京経済大学 |

ミュージアム研究 |

第13巻「フィールドノート古今東西」執筆者

フィールド:アメリカ合衆国フィラデルフィアほか


神経科学 at 東京大学 |

14巻『フィールド写真術』分担執筆者