FENICS メルマガ Vol.87 2021/10/25
Web版 https://fenics.jpn.org/mailmagazine/vol-87-2021-10-25/
1.今月のFENICS
長い半そでの時期をおえ、一気に秋が深まりました。新型コロナの感染状況は落ち着いてはいるものの、寒い時期がくるかと思うと、またウイルスが活発化しそうで喜べません。いまの状況のままいけば、来年度のフィールド行きが現実的か?と期待は膨らみますが・・
FENICS副代表の澤柿さんは、もうすぐ南極に向かいます!それにちなんで、今号より、同じく南極体験が複数回ある福井幸太郎理事が、乗り物シリーズの新連載を南極の場合、から始めます。
10月は、フィールドにおけるセクシュアルハラスメントについてのイベントが10月20日(水)、「フィールドワークとハラスメント(HiF)」のロゴやホームページの絵を描いてくださったアーティスト、小室萌佳さんとのトークイベントもありました。同じ時間帯に支援イベント「聞きたい!フィールドワークと生理のはなし:ねえねえ,みんな・先輩,どうしてる?!」が重なってしまったのは残念でした。HiF/FENICSサロンにつきましては、またアーカイブでもごらんいただけるようにいたします。いまもインスタ録画はごらんいただけます(詳細は下記)。
HiFでは、9月末に沼崎一郎著『キャンパス・セクシュアル・ハラスメント対応ガイドーあなたにできること,あなたがすべきこと』 嵯峨野書院 2005年、の読書会を開きましたが、その著者をお迎えするイベントが開かれます。
ぜひご参加ください。また、8月に発刊した『現場で育む フィールドワーク教育(FENICS 100万人のフィールドワーカー4) 』に関するイベントが12月5日に開かれます。後期もイベント満載です!
それでは本号の目次です。
ーーーーーーーーーーー
1 今月のFENICS
2 フィールドの乗り物シリーズ①<新連載>(福井幸太郎)
3 フィールドワーカーのライフイベント⑦<連載>(本田ゆかり)
4 FENICSからのお知らせ
5 FENICS会員からのお知らせ(山崎哲秀)
ーーーーーーーーーーー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜~~
2.フィールドの乗り物シリーズ 新!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜~~
第1回 「C130輸送機」
福井幸太郎(自然地理学、FENICS6巻『マスメディアとフィールドワーカー』編者)
私が最初に南極に行ったのは2001年1~2月,都立大の博士課程1年生の時だった.南極半島の露岩域をフィールドに長年,永久凍土の調査を行っている北海道大学低温科学研究所の曽根敏雄博士にアルゼンチン南極観測隊に誘われたことがきっかけであった.
夏隊の場合,ブエノスアイレス郊外にあるパロマー空軍基地から航空機で出発する.パロマー空軍基地からは,まず、軍の施設があるパタゴニア南部の町リオ・ガジェゴスまで4時間ほど飛行する。リオ・ガジェゴスでは,南極の天候判断のため数時間~数日待機することになる.リオ・ガジェゴスから南極半島北部のマランビオ基地までは,4 時間ほどの飛行時間である.順調にフライトが進むとブエノスアイレスからわずか1日で南極に到着する.日本人からすると南極は地の果てのイメージであるが,南半球にあるアルゼンチン人にとってはもっと身近な場所かも知れない.
アルゼンチン本土からマランビオ基地の移動にはアルゼンチン空軍のC130輸送機が使われている.C130はアメリカのロッキード社が製造している4発の大型プロペラ機で,生産台数が世界最多といわれている軍用輸送機である.乗員数は約90名,全幅は約40m,全長は約30m,最高速度は600km/h弱,航続距離は約4000kmに達する.アルゼンチンの隊員達は親しみを込めてヘラクレス(ギリシア神話の英雄)と呼んでいた.
オフロード・ダンプトラックに使われているような巨大な車輪を装備しており,さらにソリも装着できるため不整地や氷上など様々な場所で離着陸できることや,エンジンが一基故障してもそのまま飛行を続けられるぐらい頑丈なことから,南極でもっとも多く使われている航空機の一つである.ちなみに日本の航空自衛隊,海上自衛隊でも運用されており,先月(2021年9月)上旬のアフガニスタンからの退避作戦でも使われた.
オフロード・ダンプトラックに使われているような巨大な車輪を装備しており,さらにソリも装着できるため不整地や氷上など様々な場所で離着陸できることや,エンジンが一基故障してもそのまま飛行を続けられるぐらい頑丈なことから,南極でもっとも多く使われている航空機の一つである.ちなみに日本の航空自衛隊,海上自衛隊でも運用されており,先月(2021年9月)上旬のアフガニスタンからの退避作戦でも使われた.
私がフィールドで初めて乗った軍用の乗り物がこのC130であった.機内は狭く,体をベルトで網椅子に固定するため移動がほとんどできなかった.さらに,フライト中,エンジン音や得体の知れないメカニカルな音が大音量で響きわたっているなど「さすが軍用機」と忍耐を強いられた.
一番心配したのがトイレであった.カウンターパートのアルゼンチン南極研究所のホルヘ隊員に「どうしても我慢ができなくなった場合はどうすれば良いか」と聞いたところ,「操縦席の後ろに穴が開いているのでそこから出せば良い」とのこと.ジョークか否か怪しかったため,基地まで必死にこらえた記憶がある.
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3.フィールドワーカーのライフイベント⑦
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
海外日本人社会というフィールド ―駐在員の妻として、女性研究者として―
本田ゆかり(東京外国語大学大学院総合国際学研究院 特別研究員)
【女性研究者と不妊治療】
私は四年間ほど不妊治療を続けた後、幸運にも子宝に恵まれた。夫の駐在に随伴して3年半過ごしたガーナから帰国して約半年後のことである。私の問題は不妊というより不育だったので、それに対するケアを受けることができたのもよかったのだろう。
妊娠しても出産に至らない不育症の場合は不妊よりもある意味過酷である。私は4度の流産を経験したが、通院や、ホルモン剤による不調に加えて流産後の処置や体の回復にも時間がかかるので、仕事や論文との両立は大変だった。クリニックへ頻繁に通う必要があるのだが、通院は毎回半日から一日がかりである。また、いつ体調が悪化して寝込むかわからないので計画が非常に立てにくい。
しかし、妊娠後は経過がよく、通院も月に1度で済んだのでほぼ計画通りのペースで論文を進めることができるようになった。そして、無事出産、幸い子供も元気で育てやすいほうだったので新生児育児をしながら博士論文を書き上げ、子供が7か月の時に無事提出することができた。新生児育児をしながら博論を執筆するのは体力との戦いになり、産後の体に悪いので他の方にはまったくお勧めできないが、個人的には不妊治療をしながら書いていた頃に比べたらずっと楽だった。この年は出産と博論提出という私の三十代の二大プロジェクトがついに終わって、本当にうれしい年になった。叱咤激励を続けてくれた夫にも感謝したい。
【子育て+研究+駐妻】
出産、博論という長年のやり残し事項を片付けてふと我に返ると、次は今後、自分の仕事をどうしていくかという課題が待っていた。前回までの連載でもご紹介したが、夫は海外転勤族なので、私が日本の大学教員になるという進路は夫と別居しない限りない。世の中にはそういう事情で別居されているご家庭もたくさんあって特別なことではないと思う。もし、私のキャリア志向が高く、研究者として道を極める覚悟があればそうしたのかもしれない。しかし、子供が生まれてみたら、子どもを中心とする家族の幸せが私の優先事項になり、自分のキャリアはそれを確保したうえで、やれる範囲で積み上げていけばよいと考えるようになっていた。。
しかし、子供にとって、自己犠牲のうえで子育てに全力投球する母親というのは少々重たいだろう。夫にも妻を帯同してキャリアを中断させたという妙な罪悪感を持たせたくない。私は自分の意志で夫に随伴して家族一緒に過ごし、子育てを優先しつつ仕事も継続したいと考えていた。そのうちにまた駐在でどこかの外国で暮らすことになる。
しかし、私の身近にはそのようなロールモデルがなかった。そこで、自己流だがとりあえず海外に暮らしていても在宅でできる仕事からやってみることにした。私の専門は日本語教育だが、出産前のガーナ駐在の頃から教材開発に関わっていたのでそれは継続できる可能性があった。また、私の研究はどこにいてもできるタイプのものなので、論文投稿や学会発表を地道に行うほか、ポスドク研究員(無給)として研究者番号を取得し、科研費に応募してみることにした。このように博士号取得後は「駐妻+研究者」という生き方の模索が始まった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
5.FENICSからのお知らせ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)2021年11月22日(月)16:00~ 第4回HiFオンライン(FENICS共催)サロン
今回は東北大学の沼崎一郎先生を講師にお招きし、フィールドワーク中に生じうるハラスメントに対し、研究者がどのように向き合うべきか、お話をうかがいます。沼崎先生は、長年ジェンダーやセクシュアル・ハラスメントに関する課題に取り組んでおり、学術界におけるハラスメント問題に造詣が深い方です。男女の性別や、教員/学生という立場にかかわらず、フィールドでハラスメントに遭遇しないために、あるいはハラスメントに遭遇した際にどのように対処するかを想定するために、議論に加わってみませんか?
開催日時:2021年11月22日(月)16:00~17:30
実施形態:オンライン(Zoom)
講師:沼崎一郎先生(東北大学文学研究科・教授)
受付期間:2021/11/20まで
参加申込み方法:以下のGoogle Formからお願いいたします。
注意事項:お申込みいただいた方には、サロン前日の11月21日3日前(11月19日)にZOOMのURL,ミーティングIDとパスコードをメールでお伝えします。お申し込みの際は、メールアドレスを正確にご記入いただくようお願い申し上げます。11月2119日中にメールが届かなかった方は、サロン当日(11月22日)の正午までに下記問い合わせ先までご一報ください。
主催:フィールドワークとハラスメント(Harassment in Fieldwork, HIF)企画者一同
共催:FENICS, JSPSナイロビ研究センター
お問い合わせ先:fieldworkandsafety@gmail.com
(2)10月のイベント記録に関して
*10月20日(水)に開催された「これだけは知っておこう 留学/フィールドワークのリスクマネージメント」(zoom)」に、申し込んだものの参加できなかった方は、録画URLをお送りしています。
もしお手元にない場合はお問い合わせください。フィールドに行く側も送る側も、知っておくべきリスクマネージメント(セクシュアリティ編)です。
*「フィールドワークとハラスメント(HiF)」のロゴやホームページの絵を描いてくださったアーティスト、小室萌佳さんとのトークイベントがありました。
いま現在、小室萌佳さんのインスタhttps://www.instagram.com/moekakomuro/channel/でもご覧いただけます。HiFのHPに登場するキャラクターが生まれる背景などが丁寧に語られました。
アーティストとフィールドワーカーの交流から創造された過程を知ることができます。
(3)FENICSイベント 12月5日(日)13:00~16:00(予定)
箕曲在弘・二文字屋脩・小西公大編『人類学者たちのフィールド教育 自己変容に向けた学びのデザイン』(2021年3月発刊、ナカニシヤ出版)、
増田研・椎野若菜編『現場で育む フィールドワーク教育』http://www.kokon.co.jp/book/b586849.html 2021年8月発刊、古今書院。
この二冊のフィールド教育の本にちなんで、合同イベントを行います。
詳細はまたお知らせしますが、スケジューリング、よろしくお願いします!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
5.FENICS会員からのお知らせ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『フィールドに入る』に登場し『フィールドノート古今東西』の執筆者である極地探検家の山崎哲秀さん。
日本とグリーンランドを行き来し、北極圏を犬ぞりで観測調査遠征を行うアバンナットプロジェクトを実施しておられます。
・アバンナット北極プロジェクトのカレンダー販売開始!
今年も、山崎さんの犬ぞりのワンちゃんたちの写真のカレンダーが完成、販売が開始されています。
A3サイズ、1部1,100円(消費税・送料込)。
売り上げは「アバンナット北極プロジェクト」活動費の一部となるそうです。毎年、とてもとても素敵な写真です。
犬たちを育て、ともに暮らす山崎さんでなければ撮れないものばかりです。
・犬サポーターを募集しています。
アバンナット北極プロジェクトで活躍する犬たちへの支援金を募っています。
支援金は全て、犬たちのドッグフード代やその輸送費、ワクチン接種代など、プロジェクトで活躍する犬たちのために使用されます。
上記、お問い合わせは下記まで。
アバンナット事務局 公用電話090-9164-2474
E-mail : avangnaq@gaia.eonet.ne.jp
* * *
以上です。お楽しみいただけましたか?
みなさまからの情報、企画、お待ちしています。
====--------------======
お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
https://fenics.jpn.org/contact/
メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/