FENICS メルマガ Vol.98 2022/9/25 
 
 
1.今月のFENICS
 
 夏の終わり、大型の台風が暴れていきました。被害にあわれた方がた、少しでもはやく日常に戻られますように願っております。
 まだフィールドにおられる方、もう少しで日常にお戻りの方もいらっしゃるでしょうか。今年も後半、大学では後期が始まってきました。FENICSの活動もあわせて頑張ってまいります。
 9月上旬に長野の「歴史を拓くはじめの家」(JR佐久平が最寄り)にてハイブリッドのイベントを開催しました。ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。来月の10月9日にもふたたび第二弾を開催します。
海外に出かけ調査を重ねてきた人類学者が、調査者として、一個人として、日本社会に属す者として、もろさわようこという女性史家の著作や言葉から考える機会を得て、もろさわが創った「家」とのかかわりを始めました。
秋のいい季節、ぜひ長野でお会いしませんか。詳細は下記で!
 
さて、本号の目次です。
 
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1 今月のFENICS
2 子連れフィールドワーク(連載②)(椎野若菜)
3 イベント報告(依田弘子)
4 FENICSからのお知らせ
5 FENICS会員の活躍
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2. 子連れフィールドワーク
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コロナ禍での子連れアフリカフィールドワーク:ウガンダ
 
椎野若菜(FENICS・東京外国語大学・社会人類学)
 
二男のL、入院!
 まさかの・・入院、となった。下痢、嘔吐でぐったりしているとはいえ、点滴をして薬を飲ませれば元気になるだろう、と思っていた私たちだったが、それは甘い見解だった。血液検査をしたところ、白血球の数が異様に高くなっており、即入院となってしまった。たしかに、いつもは嫌いなことは嫌い!と特に病院では強く主張するLが、何も言わずベッドに横たわっているのだ。  
 駆け込んだ病院のシステムは、医者から診察を受ける前にまず支払い、医者が検査をオーダー、点滴や注射をするにも、いちいち会計に行って‘Paid’のスタンプを看護師に見せないと次の段階にすすまない。一段階ずつ、確実に支払わねば治療してもらえないのだ。何回、会計と診察室を往復しただろうか。気づいたら、レシートの束をもって歩きまわっていた。  

この病院に来ている人たちをみてみると、どうやらウガンダ人の中産階級が来るようなところで、「チップス!(フライドポテト)」と半泣きで言いながら母親のスカートを引っ張る幼児、好きなジュースを買ってもらい抱かれている幼児がいた。またウガンダには、ムスリムが1割ほどいるとも言われるが、看護師をはじめ、男女ともに頭から足を覆うムスリムの服装をした家族はけっこう多かった。白人(日本人をふくむ)は結局、一度も見なかった。そのせいか、何も聞かれずに、VIPの病棟に用意されたLの部屋へ行く。そこには電子レンジと冷蔵庫、TVもあった。簡易ベッドがあり、私も共に泊まれることになった。

小児科には、どの国でもディズニーが・・

そして、私もダウン。
 Lは点滴で続けて投薬すれば数日間でよくなるであろう、ということだったが、そのうち、私もかなりしんどくなってきた。トイレに、いちいち20kg近い体重の子を抱っこして行くのもきつい。Lと私のきびしい夜となった。翌朝になるとLのほうは薬が少しずつ効いてくるが、私のほうが起き上がるのも厳しくなり、医者の往診を依頼し、薬の処方をしてもらった。しかし、自分で階下に行って支払いをして薬もとって来いという。そう、ここでは支払いがすべて、先なのである。夫のことは待てなかった。さすがに、少しでも早く薬を身体にいれたかったのである。よろめきながら、1分立つのも苦しいにも関わらず、Lを看護師に頼んだ束の間、階下へ行く。会計で並び、そしてまた薬剤部でも並ぶ。人が多く、ただでさえうかうかしていると後から来た人が堂々と割り込んでくる。それでも私はもう立っておられず、しゃがみこんで待っていた。
 そういえば、首都に暮らす義理の姉が言っていた。アフリカで育つ子どもも、食あたりはしばしばあり、よく病院に走るのだとか。そうやって強くなっていくとはいえ、今回は大人の私ですら、かなりきつい菌にやられた。思えばアフリカに行きだしてから、こんな体調の崩し方はマラリアのほか初めてかもしれない。まる二年間のコロナ禍インドア生活で弱くなってしまったか――。

日本料理屋のtamagoyakiで復活!

病院の悪いイメージ?
 アフリカの病院は、子どもにとってはなおさら悪いイメージが創られるネタが満載だ。点滴針のさしかたはワイルド、清潔さ、看護師の気を付け方をみていても、頭をかしげることも多い。なにより可哀そうなのは、針を何度もさしてしまうこと。見ているほうもトラウマになりそうだった。体力が回復してきた二日目の朝、Lはベッドの上で急に大泣きした。かと思えば、子どもの視線にたって、まず友だちになってから採血ができる男性看護師もいた。Lもすっかり彼の世界に誘われて、採血をさせてくれた。

 少しずつ食べさせなさい、と看護師や医者はいうのだが、病院のカフェテリアでは、マッシュバナナと肉のスープ、といった子どもには馴染みのないウガンダ料理しか出さない。食パンとバターばかりでも力はつかない。何を食べさせたらいいのやら・・・と思案していたら、夫が病院の近くに日本食レストランが近くにあるという。長く待たされたのち、白いご飯と、卵焼きを携えてやってきた。聞くと‘tamagoyaki’ を日本に暮らしていたというウガンダ人スタッフに注文したのに、待たされた挙句、でてきたのはゆで卵だったとか。日本人スタッフに相談し、作り直してもらったという。Lは‘tamagoyaki’を食べた甲斐もあってか、私もあっさりしたラーメンを二回にわけて食べ、体力の復活につながった。
 夫は、Lが病院嫌いになっては困る、と小さなおもちゃをあらかじめ看護師に渡し、退院するときにご褒美といって渡してくれ、と策を練っていた。
 
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3.FENICSイベントリポート
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★イベントリポート★
2022.09.10(土) 13~16時 FENICS共催イベント「女性史家もろさわようこの築いた『歴史を拓くはじめの家』のこれから」
 
報告者:依田弘子(一般財団法人志縁の苑 世話人・68歳)
 
 2022年9月10日、長野県佐久市望月「志縁の苑」に於いて、FENICS ×志縁の苑×ジェンダー・セクシュアリティ人類学研究会共催イベントが開かれた。1982年、女性史研究家もろさわようこによって創られた「歴史を拓くはじめの家」、その後1994年に高知「よみがえりの家」、1998年には沖縄「歴史を拓く家 うちなあ」が、それぞれ全国各地からの志金(カンパ)によって建てられた。ライフワークたる三つの柱「おんな」「部落」「沖縄」、その思想に導かれ、人柄に惹かれて寄りつどった参加者が、問い、学び、連帯し合う拠点として「家」は営まれてきた。2013年には、その発展的なありようとして「志縁の苑」に。開設から40年の今年、人類学者グループとの共催という思いがけない形での集いが実現。イベントに関わった世話人のひとりとして、感想を中心に報告とさせていただきたい。  
  

2022年5月28日に行われた家開き。

 きっかけとなったのは、河原千春(信濃毎日新聞記者)編著『志縁のおんな』の出版。椎野若菜さんが、もろさわさんと関わりを持つ母、和枝さんに紹介された本の中身に興味を持ったことから 事は動き始めた。先ずは現地に行ってみないと!という人類学者の血が騒いだのであろう、5月の「家びらき」にジェンダー・セクシュアリティ人類学研究会の2人が来訪、オンライントークイベントのはずだった企画はハイブリッド開催へと変更された。7月には4名が「家」へ、その後も2回の事前オンライン・ミーティングが持たれた。いつも、互いが知り合うことを大切にする椎野さんの進行ぶりが強く印象に残っている。  

 「家びらき」は草刈りと掃除に始まる。初めてのお二人、掃除機や雑巾を手際よく扱いながらも、もろさわさんの蔵書チェックは怠らない。「人類学関係の本がかなりあって、今や古典と言われる本を、もろさわさんはリアルタイムで読んでいたんだ」との声も。もろさわようこ初期の代表作『信濃のおんな』は、現地に足を運んでの、丹念な聞き取りによって物された本である。アイヌでも、沖縄でも、高知でも、自分を丸ごとそこに置いて関わるもろさわさん、生身のコミュニケーションの場である「家」。フィールドを持つ人類学者の皆さんと「志縁の苑」との親和性は高い。  
 

オープニング演奏(Jason Shiino)で初めてのハイブリッドイベントが「歴史を拓くはじめの家」で始まった

 イベント当日、家の内外に子どもたちの声が響いた。「子守りをしてくれる学生はいないかしら」と椎野さんに声をかけられたのは、7月の帰り際のこと。心当たりの高校生に当たったところ、家族の後押しもあって定期テスト前にも拘らず引き受けてくれた。東京から4人のミックスの子どもたち、長野からは高校生と小学生ふたり。初めのうちは母親の脚にしがみついていた子もいたが、気が付くと言葉の壁もなんのその、自然に囲まれて実に伸びのびと遊んでいた。椎野さんたち世代でようやく始まったという「子連れフィールドワーク」、日々の暮らしを通して足元 から歴史を拓いている女性たちがここにいる!と思った。そして、それを当たり前のこととして育っている子どもたちもまたここに。
    

老若男女、子どもたちが長野県内だけでなく、東京、神奈川、金沢から集まった。オンラインでは全国から。photo by 松前もゆる

 知事選、首長選を翌日に控えた沖縄からは、源啓美さんがオンラインで参加。沖縄の現状、もろさわさんと沖縄との関わりが、簡潔かつ内実濃く語られた。皆は、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」事務局長であり、毎週水曜日にゲート前の座り込みを続ける彼女の話に聞き入った。最後に、南城市にある「うちなぁの家」は、本土の人たちが沖縄と繋がる拠点として使われるのが相応しい、と私たちに投げかけられた。「沖縄から見ると、日本がよく見えるのです」の言葉が耳に残る。  
  

ひさびさの再会、あらたな出会いが生まれる。歴史あるもろさわさんの蔵書に囲まれた家の様子。photo by 菅野美佐子

「志縁の苑」の営みにも高齢化の波が押し寄せている。そんな中、自分達は次の世代へと繋ぐ位置にいる、と学者の方々が 機材を持ち込んでのハイブリッド開催が実現、参加の幅が広がった。予定の時間を大きく超えてのフロアからの声、久しぶりの再会、参加者それぞれが、課題とともに新たな展開の息吹きを感じたに違いない集いであった。
 
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4.FENICSからのお知らせ
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(1) FENICS×志縁の苑×ジェンダー・セクシュアリティ人類学研究会 共催サロン
 
「父系社会における女性の境遇―インド、アフリカ、そして日本」
 
日時:2022年10月9日(日)13時~16時
場所: 志縁の苑
「歴史を拓くはじめの家」(長野県佐久市望月804番地7)と ZOOM(申込制)
 
趣旨:インド、アフリカの父系社会における女性の処遇は、具体的にどのようであるか。彼女たちが直面する進学や結婚といったライフコース、家庭生活におけるジェンダー関係の事例を、長年住み込み調査をしてきた人類学者が紹介する。それらをふまえたうえで、同じく父系的社会である日本社会の女性の過去と今を考えてきた、もろさわようこ氏が創った「家」で、日本社会の女性の今とこれからを参加者のみなさんと考えたい。
 
【話者】
椎野若菜「父系社会に生きる女たちーアフリカと日本の伝統社会と現代」
(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
菅野美佐子「家族への「愛」とともに生きるインド女性たち」
(青山学院大学)
 
ZOOM参加の申込はこちら.10月8日迄! 前日にリンクをお送りします.
 
秋のすばらしい景色がみえる「歴史を拓くはじめの家」(長野県佐久市望月804番地7)にいらっしゃいませんか。
 
連絡先:fenicsevent[at]gmail.com
参加費:「志縁」の理念から「心と財布の中身に応じて自由に!」(オンライン参加で、ご寄付をご希望の方は、ご連絡ください)
共催:NPO法人FENICS、一般財団法人 志縁の苑、ジェンダー・セクシュアリティ人類学研究会
(2) 二国間交流事業(日本+ウガンダ)2022年8月4日(木)~5日(金)
FENICS理事の白石壮一郎氏が代表のJSPS二国間交流事業(ウガンダ共和国との共同研究)「アフリカのポスト大学大衆化状況と人社系の進路決定:その考慮事項と選択構造の解明」開始の初ミーティングが、ウガンダ共和国首都Kampala所在の国立Makerere大学人文社会科学カレッジで開かれました。長年、ウガンダで調査してきた人類学者と、現地の人類学者が共同でリーダーシップをとりながら、共同で調査し、日本とウガンダ、それぞれの若手研究者を育てようという試みです。FENICSからは白石壮一郎氏、大門碧氏、椎野若菜氏が参加。
https://www.hirosaki-u.ac.jp/topics/78804/

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3. FENICS会員の活躍
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FENICS理事の丹羽朋子さん、またFENICSシリーズ『フィールド映像術』の編者川瀬慈さんがECフィルム=「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」の活用プロジェクトメンバーとして活動されていますが、そのメンバーが選んだ作品がいくつか、このたび民族誌映画専門配信サイト「エトノスシネマ」にて、ECフィルムの配信がスタートしました。
これまで上映したことのないタイトルも多数含まれています。
 
1プログラム660円で1週間ご覧になれますので、この機会に「おうちでEC」ぜひお試しください!
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◉世界はすべて楽器である https://vimeo.com/ondemand/ecfilm001
このリズムはどこから来るんだろう?と想像が広がるプログラム。
まだ記録媒体がない頃、音楽は自ら奏でるしかない、歌が聞きたければ自分で歌うものであった。自分と、ごく近くにいる人たちを楽しませる、一緒に楽しむために生まれた音楽たち。農作業のリズムや、人に呼びかける声の延長にあるような音。
 
◉仮装 異人になる https://vimeo.com/ondemand/ecfilm002
刈り入れ後の麦藁や自生する植物を使って、自分ではないナニモノかになる映像をあつめたプログラム。仮面をかぶる前と後では何が変わるのか?今マスクを毎日している私たちも、秘密の顔半分では何が起こっているのか?謎を謎のまま空想して楽しむのもよいかもしれません。変身する過程が映っているのも見どころのひとつ。
 
◉こなねるたべる(1)収穫・脱穀 https://vimeo.com/ondemand/ecfilm003
作物を刈取り、脱穀、製粉して食べるまでの記録をあつめたプログラム。
食という身近なテーマながら、今では機械化され、人の手から離れた作業ばかり。
大変な仕事というよりも、手を動かすことの楽しさ、息を合わせる心地よさ、無駄のない所作に目を奪われる。労働、遊び、食べるが分離していない世界の時間を眺めていると、体験したとのない自分にも、その記憶があったような気がしてくるのが不思議。映像を見ながら、自分でやれることを探してみるのも楽しいかもしれません。

◉こなねるたべる(2) パン焼き・ねり食 https://vimeo.com/ondemand/ecfilm004
ECフィルムのなかでも特にたくさんの地域での記録が残されている「パン焼き」、日本のそばがきのような「ねり食」(粉粥餅)をとりあげたプログラム。パンのあり方も、食べる場も、その土地によって全く変わる。見どころは「農家の夕食」(E1958)の大家族での食卓、「ボール型のパン焼き」(E1761)のお見事なパン整形、「ヴァデアの焼壺によるパン焼き」(E1637)の機能的な台所など。
 
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以上です。お楽しみいただけましたか?
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メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
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