FENICS メルマガ Vol.109 2023/8/25 
 
 
1.今月のFENICS
 
酷暑続きの日本。みなさま、この夏はいかがお過ごしでしたでしょうか。
先月は、フィールドに出る直前に本メルマガをお届けしました。今回は、ウガンダより帰国した直後にお送りします。
ウガンダのほうが、日本よりはるかに朝夕が涼しく過ごしやすかったと感じています。ですが・・・連れて行った5歳と10歳の子どもたちは、後半、順に強い細菌感染にやられてしまいました。昨夏、帰国後に一人はマラリアを発症しましたので、目下、観察中です。感染地からお帰りのみなさま、治療薬の持ち帰りはくれぐれも、お忘れなく。私はウガンダで売られている「コロナに効く」薬も持ち帰りました。
  
今月号から、フィールドにおいて現地の研究者と始めた’共同調査’(ウガンダにおける二国間交流事業)白石壮一郎さんの連載が始まります。
また、いよいよ来る10月に開催される津田啓仁さん企画「FENICS連続トーク「フィールドワークと生き方・働き方」フィールドワークする身体 ―ゆっくり歩く・ぜんぶ書くー」の参加申し込みが始まりました。ぜひともスケジュール調整のうえご参加をよろしくお願いします。
 
さて、本号の目次です。
 
ーーーーーーーーーーー
1 今月のFENICS
2 私のフィールドワーク(1)(白石壮一郎)
3 子連れフィールドワーク(5)(杉江あい) 
4 FENICSからのお知らせ(10月FENICSイベント申込開始
5 FENICS会員の活躍 (丹羽朋子・春日聡・吉國元)
ーーーーーーーーーーー
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2. 私のフィールドワーク(初連載)①(白石壮一郎)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ウガンダの大学生、卒業生はどんな人たちなのか?(その1)
 
   白石壮一郎(FENICS理事 弘前大学・文化人類学/FENICSシリーズ 1巻・7巻編者)
 
 ウガンダ共和国に入国してから最初に訪れる先はきまって首都KampalaにあるMakerere大学だ。私が最初に訪れた四半世紀前に比べると、かつてはスーツ姿が目立った大学生の装いは、昨今ずいぶんカジュアルになった気がする。男女ともジーンズ穿きが珍しくなく、膝下半ズボンのストリート風ファッションで歩いている学生もちらほらいる。ただ、かれらの落ち着いた穏やかな物腰はずっと変わらない。
 
 COVID-19パンデミックが落ち着き始めた2022年8月、外務省のウガンダ渡航についての感染症危険度が緩和され、3年ぶりに出かけ9月までの2ヶ月間滞在した。この年の前半、私は講義やゼミなどをオンラインでうけもち、学部の同僚には運営に関わる各種委員会などの役を引き受けていただいて、約半年の移動自由な在外研究期間を得た。ほんとうは前半3ヶ月でナイロビのBIEA、後半をウガンダのMakerere大学で滞在しようと思っていたのだが、ケニアの危険度は緩和されず、前半のナイロビ行きは取りやめて東京外国語大学のアジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)で在外研究した。
  
 タイミングがいいことに、2022年と2023年の2年間、代表申請したMakerere大学とのJSPS二国間交流事業(共同研究)に採択されていた。日本側5人、ウガンダ側5人の計10人のメンバーで議論しながら調査をすすめる。ウガンダ側代表のPeter ATEKYEREZA教授(Makerere大学社会科学スクール社会学・社会人類学科)とは、以前にAA研の椎野若菜さんやMakerere大学講師のGordon AINEBYONAさんを介して知り合いになっていた。2022年8月に初回のミーティングを開き、研究の主旨や調査方法などを共有したうえで、われわれの研究プロジェクトはスタートした。
 

マケレレ大学の学生寮のひとつ、Mitchell Hall(男性寮)の外壁。地方議員の選挙ポスターと、寮生の洗濯物がみえる。

 研究プロジェクトの目的と方法はシンプルで、こんにちのウガンダの大学生や大卒者のさまざまな横顔を、オープンエンドなライフヒストリー聞き取りやかんたんなフィールドワークによって描き出そうというものだ。
 大学生が疑問の余地なくエリートだったのは20世紀までの話だ。世紀の転換期にウガンダ国内で「大学の大衆化」は着々と進み、いまでは大学の定員数も国内大学数もかなり増加している。たとえばMakerere大学の入学者数は1993年度には3361人だったのだが、1999年度には14329人となっている。これは私費学生の大幅増員と夜間コースの新設による。また、1980年代の終わりまではMakerere大学が国内唯一の大学だったが、それ以降大学が増設され現在の大学数は50を超える。
 こうした大学教育の大衆化は、必然的に農村部もふくめた進学熱を全国的に広げた。しかし、就職先の受け皿が用意されていたわけではない。多くの大卒者が就職難に直面している状況なのだ。
  
 ずっと農村部の調査がメインだったので、私がこれまで知り合いになった大学生はわずかしかおらず、継続的なつきあいはまったくない。だがさいわいMakerere大学のキャンパスライフなど背景事情については、共同研究のウガンダ側のメンバーや、じつは日本側メンバーのなかにも2人いる出身者からあれこれ聞くことができる。2022年8月にプロジェクトの初回ミーティングをおこなったさいも、ウガンダの大学受験などごく基本的な事項の確認からおこなった。大学入学に至るコースは複線化しており、試験から入学する学部が決まるまでのプロセスも日本式とはちがう。正直なところ、まだ正確に把握しているかどうか自信がない。
  
 あとは、質問票式ではないオープンエンデッド・インタビューや相手の生活・活動の様子などを観察するような「しつこい調査」になじみがないと思われるウガンダ側のメンバーと、調査についての考え方を共有することに初回ミーティングは時間を費やした。いっぽう、私自身はといえばまったくうまくいくあてはない。新しいことを始める億劫さと楽しみと半々の状態を抱えつつ、芋づる式に紹介をたぐって会った大学生とのその場の勝負である。 
(つづく)
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3. 子連れフィールドワーク(連載)④(杉江あい)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
子連れフィールドワーク@陸前高田

    杉江あい(FENICS理事 人文地理学/京都大学文学研究科)

 フィールドワークのために岩手県陸前高田(以下、高田)に行ったのは、2018年からこれまで全部で7回。前回は、高田の市街地が大きく変貌を遂げた後の4回目フィールドワーク(2021年12月)の前半までお届けした。今回はその後半をお届けする。
 
12月3日、下の子の妊娠とコロナ禍で長らく行けなかった高田に到着した。その翌日の午前中、学会が始まる前にWさんと2年半ぶりにホテルのロビーで再会した。Wさんと3回目のフィールドワークでお話ししたときは、「(高田は)草がぼうぼうに生えた空き地だらけで、どうなっちゃうんだろう」といったことをおっしゃっていたが、今回は「陸前高田はハイカラになった。田舎っぽくない」といったことが聞かれた。Wさんは老舗の醤油屋である八木澤商店が新しく建てた「発酵パークCAMOCY(カモシー)」に連れていってくれ、その裏手にある手作りの味噌屋さんで、「今は自分の欲しいものがいろいろ選べる。都会よりよほどいろいろある」ともおっしゃっていた。この言葉は私も納得することがあった。CAMOCYにはマーガリンを使わないこだわりのパン屋さんが入っており、そこの塩バターパンが絶品で、パンには目がない私がこれまで食べたパンの中で1~2位を争うくらいのおいしさだった。その後のフィールドワークでは、必ずそこでパンを買うようになった(が、Wさんにはもっとおすすめのパンを売っている喫茶店を教えていただいている。タイミングが合わず、まだ行けていない)。夜には科研メンバーと馴染みの地元の調査協力者の方々との夕食会があり、「高田にようやく来れたんだな」という実感がいっそう湧いた。やはり、フィールドワークは直接五感でその地域を体感することが重要だと実感した。
 

収穫させていただいたりんごを箱詰めする長女

5日には上記のシンポジウムに参加し、とても刺激を受けた(後から聞くと、ヒジャーブをしている私を見て「外国人も来てる」と思っていた方もいたようだ)。6日の午前中は、Wさんが「りんご狩りをしたい」という夫と子どもの唐突なリクエストに応えてくださり、もう収穫もほぼ終わっている季節なのに、飛び入りでりんご狩りをする機会をくださった。このとき収穫したりんごも自宅に送っていただけるよう、特別に手配していただいた(写真1)。このときにお世話になったのは、米崎りんごの6次産業化などをミッションとするNPO法人LAMPのスタッフの方だった。これまでの記事に書いてきた米崎りんご農家のCさんご夫妻にもお会いしたかったが、これまでCさんたちとお話しさせていただいていたのがご自宅だったので、いくらPCR検査が陰性だったからといって、連絡を取るのは憚られた(Cさんたちとの再会は次々回メルマガの予定)。午後には市役所(写真2)と元地域おこし協力隊の方にお話をお聞きして、名古屋に帰った。
 

3回目のフィールドワークではまだプレハブで高台に仮に建てられていた市役所。4回目のフィールドワークでは高田町の市街地から歩いて行ける距離のところで、7階建ての立派な市庁舎になっていた。

2年半ぶりのフィールドワークは束の間で慌ただしく過ぎ去ってしまったが、帰ったあともしばらく高田のことが頭から離れず、気が付くと高田のことばかり考えていた。それは、久々のフィールドワークなのに滞在日数が限られていて名残惜しかったからということもあったが、高田の市街地の変貌ぶりに驚き、これから高田をどんな風に描いていけるだろうかと思案していたからである。このとき、「高田ロス」になっていたのは私だけではなかった。長女は3回目までのフィールドワークではまだ小さくて、高田で経験したことはあまり記憶に残っていなかった。しかし、今回はもう5歳。Wさんをはじめ、調査協力者の方々にかわいがっていただいたり、公園やホテルで楽しく遊んだりしたことをしっかり覚えていた。すっかり高田に魅了され、折に触れて「今度はいつ行けるの?」と高田の再訪を待ち遠しくしていた(これは今も変わらない)。
  
2022年度は私の勤務先が変わり、火~金は京都、土~月は名古屋という慌ただしい日々になったが、コロナ禍が常態化してきて面倒な諸手続きさえクリアすれば、海外出張も行けるようになった。そのため、この年度はそれまでの鬱憤を晴らすかのように、高田に3回(バングラデシュにも2回)、子どもたちを連れて行った。次回は5回目のフィールドワークの様子をお届けする。
(つづく)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3. FENICSからお知らせ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お待たせいたしました、10月のFENICSイベントの申し込みが始まりました。二日間、秋田にて!ぜひともご参加を!

(1)2023年10月21日(土)~10月22日(日)9:00-16:00頃に終了予定
FENICS連続トーク「フィールドワークと生き方・働き方」
フィールドワークする身体 ―ゆっくり歩く・ぜんぶ書くー

 

様々な領域に広がりつつあるフィールドワークの可能性について、本ワークショップでは、人類学的なフィールドワークを補助線にしながら、(踊りに触発された)一風変わった方法で探求します。注目するのはフィールドワークの「時間」と「書くこと」。この二つの要素を2日間、すこし極端なやり方で体験してみます。
企画者、津田さんによる歩くイメージ動画を新しくアップ!
 
■日時:
 
Day1:2023年10月21日(土) 15:00-18:00
Day2:翌10月22日(日)9:00-16:00(予定)
 
※希望者には、翌23日(月)に秋田県内ミニツアーを予定。(先着5名まで。18:00ごろに秋田駅にて解散予定)

10月の秋田の秋、すばらしい景色とともにフィールドワーク体験を!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4. FENICS会員の活躍
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1) 丹羽朋子さん(FENICS理事・文化人類学)・春日聡(FENICS正会員・美術家、映像・音響作家、映像人類学者)

  
「映像のフィールドワーク展 vol.2 ひもをうむ、あむ、くむ、むすぶ」にちなみ、FENICS正会員ふたりの活躍するイベントの案内です。

*展示詳細はこちら https://www.setagaya-ldc.net/program/563/

■関連上映イベント①
*FENICS会員の丹羽朋子が企画・聞き手をするトークイベントです。
 
トークイベント「みる、やってみる、問い続ける―日本の今ここの場所から」
・日時:10月7日(日)14:00〜16:00
・場所:生活工房5FセミナールームAB
・ゲスト:吉田勝信(吉勝制作所)、後藤一磨(「海の見える命の森」プロジェクト)
 
自ら採集した素材で印刷用インクを創り出す吉田勝信さんと、津波被災した宮城県南三陸町で慰霊や災害を生き抜く知恵の伝承の場として、自らの手で森を創生するプロジェクトを始めた後藤一磨さん。ECフィルムにも似たお二人の活動から、現代に生きる私たちが企業や行政に任せっきりにしているモノや場づくりを、自らの手でやってみることの面白さや可能性を考えます。
 
定員:50名(先着)
参加費:500円
申込方法:生活工房 HP申込フォームより
 
ゲスト:
・吉田勝信
採集者・デザイナー・プリンター。山形県を拠点にフィールドワークやプロトタイピングを取り入れた制作を行なう。近年の事例に海や山から採集した素材で「色」をつくり、現代社会に実装することを目的とした開発研究「Foraged Colors」や超特殊印刷がある。趣味はキノコの採集および同定。
 
・後藤一磨
宮城県本吉郡南三陸町戸倉出身。2011年の東日本大震災後、復興まちづくり推進員としての活動をきっかけに、仲間と「復興みなさん会」を設立。津波の教えを復興と新しいまちづくりに生かし、自然や文化を次世代へ受け継ぐために語り部ガイドや、海の見える命の森実行委員会の代表を務める。
 
 
■関連上映イベント②(新規)
FENICS正会員の春日聡さんの新作映画の上映会
 
上映会+監督トーク「沖縄県宮古島諸島の苧麻(ちょま)文化を映像で記録する」
 
・日時:10月15日(日)14:00〜17:00
・場所:生活工房5FセミナールームAB
・上映作品:『ブーンミの島』監督:春日聡/製作:国立歴史民俗博物館/2023年/127分
・ゲスト:春日聡(国立歴史民俗博物館・客員准教授、多摩美術大学・非常勤講師)
 
宮古諸島では苧麻糸(ちょまいと)を手で績(う)むことを「ブーンミ」と呼びます。苧麻を栽培し、繊維を取り出し、糸づくりと染色をし、宮古上布の原材料にします。
現在の手仕事の様子、自然と結びあう祭祀、歴史や次世代への継承のあり方などを写した映画を鑑賞し、制作した春日監督にお話を伺います。
 
・定員:申込先着50名
・参加費:500円
・申込:生活工房 HP申込フォームで生活工房へ
*9月よりHPに申込フォームを公開予定
 
【関連イベント】
「映像をみる、やってみる」④あむ
日時:2023年9月16日(土)10:30~16:30
 
「映像をみる、やってみる」⑤くむ むすぶ
日時:2023年9月18日(月祝)10:30~16:30
「映像をみる、やってみる」⑥あむ から おる へ
日時:2023年10月1日(日)10:30~16:30


(2) 吉國元さん(画家)

 
吉國元展「根拠地−粟津邸ではじまる」のご案内】
このたび、グラフィックデザイナーの粟津潔(1929-2009)の家/アトリエ(原広司設計)で展覧会「根拠地−粟津邸ではじまる」を開催いたします。吉國元による絵画及び、初の試みとなるインスタレーションにあわせて、特別展示としてメキシコ南部オアハカ市における版画運動から、アートコレクティブSubterráneos(スブテラネオス)による木版画「メキシコの黒人ディアスポラシリーズ」より( 2021年)を展示・ご紹介いたします。
  
さらに会期中の9月18日( 月・ 祝 )は、清水チナツ氏( インディペンデント・キュレーター/PUMPQUAKES)と、町村悠香氏( 町田市立国際版画美術館・学芸員)をお招きするシンポジウム「根拠地であつまる」を開催いたします。
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。
 
展覧会名:吉國元展「根拠地 −粟津邸ではじまる」
会期 :2023年9月9日(土)- 10月29日(日)のうち毎週土曜・日曜日。
 ※9月18日(月・祝)、10月9日( 月・祝)は開場。
開 場 11:00-17:00
  
◆会場 :神奈川県川崎市多摩区南生田1-5 -24 粟津邸
◆交通 :小田急線 読売ランド前駅より徒歩約13分 / 生田駅よりタクシー約10分
◆入場料: 1,000 円
企画 :粟津ケン・吉國元
展示: 吉國元
特別展示:Subterráneos(スブテラネオス)

関連イベント:「シンポジウム 根拠地であつまる」
日時:2023年9月18日(月 ・ 祝 )1 4 : 0 0 – 1 7 : 0 0 
会場:粟津邸 
入場料:1,000円
 
清水チナツ(インディペンデント・キュレーター/PUMPQUAKES)
「Subterráneos の「メキシコの黒人ディアスポラシリーズ」とメキシコ・オアハカでの芸術実践」
町村悠香(町田市立国際版画美術館・学芸員)
「村上暁人《米国黒人ラングストン・ヒューズの詩》と戦後版画運動」
吉國元(美術家)アーティストトーク
 
:::
 
以上です。お楽しみいただけましたか?
みなさまからの情報、企画、お待ちしています。
 
====--------------======
お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/