FENICS メルマガ Vol.51 2018/10/25
 
秋の気持ちのいい日が多くなりました。いかがお過ごしでしょうか。
今月は11巻『衣食住からの発見』でエチオピアの酒を主食とする村の話を書いてくださった砂野さん、そして大平さんの子連れフィールドワーク連載の寄稿をいただきました。
来月はFENICS関連イベントが二回、開催されます。11日はEC、17日は初めて写真家の方々とFENICSがコラボします。これからの展開にもご期待ください。
 
それでは本号の目次です。お楽しみください!
 
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1.今月のFENICS
2.子連れフィールドワークの道(連載)(大平和希子)
3.フィールドごはん(砂野唯)
4.FENICSイベント
   11月11日@生活工房、三軒茶屋: (EC)上映会「住処(すみか)をつくる」
   11月17日@OGUMAG、田端: アラカワ・アフリカ × FENICS 公開講座
   12月1日@武蔵野公会堂、吉祥寺: 「フィールドワーカーとジャーナリスト」 
5.会員の活躍
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2.子連れフィールドワークの道(連載)
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ウガンダ・乳児・渡航編−③
 
    大平和希子(国際関係学・東京大学大学院博士後期課程)
 
 カンパラでの暮らしは始まったばかりの頃、息子は何を感じていたのだろうか。ウガンダに来てみれば、息子にとって全てが新しい。到着翌日、早速近所のローカルマーケットに行ってみた。赤土の上に、レンガと泥、木で作られた簡素な店が並ぶ。定番のトマトに紫玉ねぎ、人参やピーマンの他、炎天下でしなびれた葉物野菜や大きなかぼちゃ、小分けの調味料や洗剤が売られている。どこのお店のおばちゃんも「ベイビー、ベイビー」と声をかけてくれた。10ヶ月の息子は、目に飛び込んでくる全てのものに、大きな瞳をキョロキョロ動かしながら不思議そうな表情を見せていた。

写真:  息子とローカルマーケットにて 

 青年海外協力隊としてウガンダに赴任していた当時、たくさんの同世代の友人ができた。彼女たちはすでに子どもを何人も産んでおり、私がウガンダを訪れるたびに子どもの数は増えていった。「産んでないのはワキコだけだ」(ウガンダ英語で、“The balance is you.”)と繰り返していた友人たちは、私がついに出産し、息子を連れてウガンダを訪れることを心から喜んでいたようだった。そして、子どもたちを連れてすぐに会いに来てくれた。「キャーッ!」と奇声をあげながら近寄ってくる友人たちの姿を見て、息子は大泣きだった。ウガンダ人女性たちの勢いに押され、また、体格の大きな子どもたちにもみくちゃにされ、おもちゃを取られ、私がおしゃべりに興じている間、一度も泣き止むことがなかった。
 母親暦の長い彼女たちは、ウガンダの子育て事情を矢継ぎ早に伝えてくれた。私が授乳をしようとすると、「日本では授乳の仕方を教えてくれないのね。」などと言い、抱っこの仕方がウガンダとは違うと主張する。昼寝する息子をうつ伏せに寝かせようとしたら全力で止められた。「赤ちゃんはうつ伏せで寝かせないと熟睡しないのよ。」と。娘に水浴びをさせた友人がワセリンを貸してくれというので持っていないと伝えると、「水浴びの後にワセリンを塗らないなんて信じられない。」と言う。短時間のうちに次々と飛び出てくる「ウガンダの常識」に、正直疲れてしまったほどだ。でも、これも助け合って子育てをしてきたウガンダ人女性の優しさ。初めて「母」としてウガンダを訪れ、これまでとは違ったウガンダの側面を見ることができた気がして嬉しかった。
 息子は相変わらず泣いてばかりいたが、滞在1週間が経ち、年末を迎える頃にはだいぶ慣れてきたようだった。友人の子どもたちと逞しく遊ぶ姿が見られ、ポリッジというウガンダの離乳食の定番も少しずつ口にするようになってきた。年明けには、ウガンダ人に抱っこされて笑顔を見せ、初めて息子を父親に預けてフィールドワークに出かけることもできた。滞在日数が経過するとともに変わっていった息子の様子は、最終回となる次回でお伝えしたい。
 
つづく
 
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2.フィールドごはん
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「砂糖とドリアン」
     砂野唯(食生活学 11巻『衣食住からの発見』執筆者)
 
 マレー系の料理と言えば、とにかく量が多く、甘いというイメージだ。日本でもおなじみのビーナッツソースをつけて食べるサテーと呼ばれる串焼き、マレーシア版のチャーハンであるナシゴレン、焼きビーフンのミーゴレン、それら全てに大量の砂糖が使われる。さらに、マレーシアで飲み物を頼むと、コップの1/3は砂糖が入れられて出てくる。そのため、マレーシアに滞在すると知らず知らずのうちに大量の砂糖を摂っていることになる。私は職務で学生をマレーシアに引率していた。ある日、食後に度胸試しにドリアンを食べてみようという話になり、ドリアンを購入した。確かに匂いは酷いが、濃厚な味でなかなか美味しく、せっかく買ったのだからと、パクパクとつまんでいると急にキーンと頭の側面に痛みを感じ、軽いめまいを起こして座り込んでしまった。一緒にドリアンを食べていた同僚たちのなかには、私と同様に頭が痛くなるものがいた。どうやら、ドリアンを食べ過ぎると血糖値が急上昇するらしい。おそらく大量の砂糖が入った料理と飲み物を摂った後で、ドリアンを食べたのが良くなかったのだろう。しかし、その横ではマレー系の人々が、私と同じく大量の砂糖入りの食事を食べた後なのに、平気でドリアンを食べ続けており驚いた。
 
写真:マレーシアのドリアン
 
 
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4.FENICSイベント
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 (1)エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ(EC)上映会「住処(すみか)をつくる」
http://www.setagaya-ldc.net/program/426/
 
「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」(以下「ECフィルム」)。以降40年余りの歳月をかけて、あまたの研究者やカメラマンが世界各地に赴き、そこに生きる人々の暮らしや儀礼、動植物の生命活動を3000タイトルもの映像に収めました。
「家をつくる」ことも例外ではありません。家族や村の人たちと力を合わせ、自分たちの家は自分たちでつくるもの。しかし現代の日本では、建築にまつわる様々な制約のなか、それはとても遠い、考えにくいことになってしまいました。そんな日本でも、10数年をかけ、果敢に一人でコンクリート製のビルを建て続けている人がいます。建築家の、岡啓輔さんです。
本上映会では、ECフィルムの映像群から世界各地の人々や動物が自分の住処をつくる映像を選び、岡啓輔さんとともに、観ていきます。
自分の住処を自分の手でつくり上げる喜びを、果たして私たちは取り戻すことができるのでしょうか?
 
日時:2018年11月11日(日) 14:00-16:30
会場:生活工房 ワークショップルームA
定員:50名(申込先着順) 参加費:1,000円
ゲスト:岡啓輔(蟻鱒鳶ル/一級建築士)
 
(2)11月17日 アラカワ・アフリカ × FENICS 公開講座 『アフリカの生/性について、文化人類学と写真表現』
 
日時:11月17日(土) 14:00~17:00 
登壇 椎野若菜(文化人類学者、FENICS代表)、藤元敬二(写真家)、にのみやさをり(写真家)
会場:ギャラリーOGU MAG  東京都荒川区東尾久 4-24-7 
入場料:500円 ワンドリンク付き(予約不要) 
 
2010年8月に始まった複合型アートイベント「アラカワ・アフリカ」。賑わいあふれる東京都荒川区東尾久の おぐぎんざ商店街で生まれた、遠い海の向こうとつながるアートプロジェクトです。 2018年は番外編として学問分野や産学の壁にとらわれずフィールドワーカーをつなげ、フィールドワークの知 識や技術、経験を互いに学びあい、新たな知を生み出すことを目指すNPO法人FENICSとのコラボレーション イベントを開催いたします。公開講座を通して、写真家と文化人類学者、そして皆様とのジャンルを横断する 対話の場となります。是非ご来場のほど宜しくお願いします
 
登壇者について
文化人類学者、FENICS代表:椎野若菜 「FENICSの活動に関して、またケニアにおける「妻相続」慣習の言説とフィールドで見る現実のはざまで」
 
写真家:藤元敬二  「東アフリカの同性愛者のコミュニティーと写真集『forget-me-not』について」
 
写真家:にのみやさをり マイノリティの声と「聴くこと」に関して 
モデレーター、アラカワ・アフリカ実行委員:吉國元
 
 
(3)12月のFENICSのイベント「フィールドワーカーとジャーナリスト」
 
第6巻マスメディアとフィールドワーカー』の発刊を記念して、著者3人と書評をかいてくださった方をお招きしてFENICSイベントを開きます。
お誘いあわせのうえお越しください。フィールドワーカーとマスメディアの関係性をさぐる貴重なライブイベントです。
 
開催日時 12月1日(土) 13:30~16:30
 
登壇者  村橋勲(文化人類学・京都大学)、小林誠(社会人類学・東京経済大学)、櫛引素夫(専門地域調査士・青森大学)、福井幸太郎(自然地理学・立山カルデラ砂防博物館)
 
開催場所 武蔵野公会堂2F 第1・第2合同会議室(吉祥寺駅から徒歩5分)
 
子供向けの部屋も確保してあります。どうかご予定、あけておいてください!
 
 
福井幸太郎(立山カルデラ砂防博物館 自然地理学)「マスメディアに追い込まれつつ調査した日本の氷河」
小林誠(東京経済大学 社会人類学)「『沈む島』ツバルをめぐるメディア報道とフィールドワーカー」
村橋勲(日本学術振興会 文化人類学) 「南スーダンをめぐる一過性のメディア報道とフィールドワーカーが捉える現状」(仮)
 
コメント 櫛引 素夫(青森大学 専門地域調査士) 
「取材者・調査者・対象者の狭間をどうみるか、どこに自らの身を置くか」

ディスカッション
 
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5.FENICS会員の活躍
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久世濃子さん(12巻13巻執筆者)がご著書を刊行しました。すでに朝日新聞をはじめ、多くの新聞にもとりあげら話題の書となっています。
 
『オランウータンーー森の哲人は子育ての達人』
久世 濃子 著
ISBN978-4-13-063349-9発売日:2018年07月17日判型:四六ページ数:196頁
 
プロローグ アジアの隣人
第1章 無視された類人猿との出会い――動物園のオランウータン
第2章 動物園と野生のはざまで――半野生のオランウータン
第3章 森の哲人のすみか――野生のオランウータン
第4章 孤独だけど孤立しない――オランウータンの社会
第5章 究極の孤育て――オランウータンの子育て
第6章 オランウータンの現状と未来
エピローグ これからのオランウータン調査研究
 
 
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以上です。
今月のメルマガはいかがでしたか。お知らせ、いつでもご連絡ください。発信、掲載いたします。
FENICSと共催・協力イベントをご企画いただける場合、いつでもご連絡ください。
 
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お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/

寄稿者紹介

大学院博士課程 at 東京大学

国際関係学

生態人類学 at 名古屋大学