1.今月のFENICS

 夏も終わりに近づいてきました。メルマガ編集人はただいま、国際学会参加のために2人子連れでポーランドに来ております。宿のインターネットが通じず、アフリカでなくなんとポーランドでメルマガ発信が遅れてしまいました。失礼しました。
 みなさんのなかには、夏の間に何度も外に出られる方も多いかと思います。みなさま、どこへどのように、お出かけでしょうか。新しい発見と体験で、心身のフル活動で頭も心もデータでいっぱいでしょうか。
 私は、この二回目となる二人子連れの海外出張、フィールドでなくアウェイの場合は予想がまったくつかないので、ヨーロッパとはいえ、大変疲労しています。また、子連れでの国際学会への参加についても共有できたら、と思っております。
 今回は新しく谷口京子さんの連載が始まります。どうぞお楽しみに!

 それでは本号の目次です。

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1 今月のFENICS
2 子連れフィールドワーク(連載初回)    (谷口京子)
3 フィールドワーカーのライフイベント(連載9)(蔦谷匠)
4 FENICSイベント
5 会員の活躍                 (松本篤)
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2.子連れフィールドワーク(連載初回)
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初めての子連れフィールドワーク(マラウイ・エチオピア・ガーナ編)

第1回:日本出国からマラウイへ、マラウイからエチオピア、エチオピアからマラウイへ

谷口京子(日本学術振興会PD)

 皆さん、初めまして。私は、2017年8月24日から2017年11月16日にかけて、3つの科研の調査で、マラウイに夫と8ヶ月の子供を連れていき、マラウイからエチオピアとガーナにフィールドワークに行ってきた。マラウイでは、小学校で子どもの基礎学力の調査、留年・転校・退学の要因分析、ガーナでは子どもの基礎学力の調査、エチオピアでは若者の技能の調査を行っている。

 マラウイの地方に子どもを連れていくとなると、初めに気になったのは病気である。マラウイの医療事情は非常に悪い。8ヶ月までに接種できるものは全て接種し、追加で、狂犬病3回、水ぼうそう、麻しん・風しん(1歳以降に接種であるが8ヶ月以降は接種可能)、黄熱病を接種した。追加の予防接種は自己負担だったので、予想以上にお金がかかった。そして、予め、こどもクリニックの先生から、下痢止め、鼻喉咳の薬、解熱剤を処方してもらった。その他は、離乳食以外は現地で入手可能ということで、離乳食だけ30食を準備した。車のベビーシートはマラウイで売っているが非常に高いとのことで、日本から持っていった。子ども1人増えただけなのに、意外と大荷物であった。

県教育事務所の職員が子どもを抱っこしてくれている様子

 飛行機は、バシネット席を予約し、名古屋-香港-南アフリカ-マラウイと乗り継いだ。南アフリカ-マラウイ間で長旅に疲れたのか、飛行機に寄ったのか、離陸体制に入ったところで履いてしまったが、それ以外、問題なく無事にマラウイに到着した。空港では、友人Kさんが待っていてくれ、その日はKさんの家に泊めてもらった。次の日、首都で一番大きなマーケットに行き、ベビー用品を購入した。

 マラウイ到着2日後に、夫と子どもをマラウイにおいて、私だけエチオピアにフィールドワークに向かった。子どもは夫の母親に面倒を見てもらうため、夫が私を空港に送った後、約400km離れた母親の家に連れていった。エチオピアでは、2015-16年に調査した縫製工場の若者の技能について、工場の経営者と職業訓練校の先生の認識の違いについて、エチオピア政府やその関係者にシンポジウムを行い、次回の調査に向けての調整をする予定であり、12日間の滞在であった。

 エチオピアに到着後、すぐに携帯電話のシムカードを購入し、夫に連絡したが電波が悪いのか連絡が取れなかったが、シンポジウムの準備や当日が忙しくて、気を取られていられなかった。エチオピア到着3日後に初めて連絡が取れ、無事に夫の母の実家につき、子どもも元気であることが分かった。結局、毎日、電話やメールは繋がらなかったが、どうやら子どもは元気だった。

 エチオピアの調査はあっという間に終わり、再び、マラウイに戻った。夫だけが空港に迎えにきた。夫の母親の家から空港までの移動を再び子どもにさせるのは負担だと判断した夫は、子どもを母親に預けてきた。翌日、首都から夫の母親の家に向かい、子どもに再会できた。水できちんと石鹸が落とされていないのか、子どもの髪の毛からは石鹸の匂いがしたが、元気な様子であった。

 次の日から、子どもを連れて、県教育事務所へ昨年の研究成果の報告と今回の研究の許可を貰い行った。本県の教育長や職員は、2009年からお世話になっている。今年は、夫が運転手&リサーチアシスタントで、子どもを連れて、教育事務所に来たということで、大変喜んでくれた。子どもは事務所の職員が次々と抱っこしてくれていた。お陰様で、その間に、県教育長と話し合いをすることができた。今回の研究の許可も貰い、明日から小学校訪問ができることになった。

(次回へつづく)

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3.フィールドワーカーのライフイベント(連載9)
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おっぱい研究者の子育て〜メディアとの関わり編〜私のまわりの若い世代の研究者仲間を見渡すと、育休を取る

海洋研究開発機構
蔦谷 匠

提出したものの採用されなかったプロフィールフォト

 私のまわりの若い世代の研究者仲間を見渡すと、育休を取る男性にもよく出会うようになってきた。しかし世間一般的には、半年以上もの長い期間の育休を取る男性というのはまだそれほど多くないらしい。せっかく10ヶ月間の育休を取るのだから、この経験をいろんな人に伝えてみたいし、あわよくば、恥ずかしいほど時代遅れの状態にある日本社会のジェンダー不平等にそれとなく抗してみたいと考えていたところ、twitterにて「育休経験のある男性へのインタビューを育児雑誌に載せることになったので協力者を募集中」といった投稿を目にした。

 これ幸いとばかりにその方にメッセージを送って自身の育休状況を説明したところ、インタビュー対象者として選ばれた。編集者からは、育休や生活スタイルについての状況や、事前に設定されたインタビュー項目に対する返事を文章で送ってもらうように依頼された。子供が寝たスキをついて、けっこう気合いを入れてそうした項目に答え、締め切りよりもだいぶ前に回答を送信した。

 しばらく経って校正原稿が送られてきた。気合いを入れて書いたものの、私にあてられていたスペースはパラグラフ3つ分。しかし小さなスペースながらも、もっとも伝えたかったところはきちんと抜き出されているし、全体のトーンも悪くはない。さすがプロ、と思いながらちょっとした間違いに朱を入れて、編集者に送り返した。

 ところが、そこからさらにしばらく経ってから家に送られてきた印刷版の雑誌を見たところ、思わず愕然としてしまった。完成版の原稿には、校正原稿には無かったどころか、提出した文章にも一切書いてはいなかった文言が勝手に追加されていた。それは「[育休を取ったことについて] 僕は研究者で、[赤ちゃんの] 観察も目的でした」([]内は筆者が補足) という一文。世間ではおそらく珍しいであろう研究者という立場をおもしろおかしく脚色されたようで、いやな気分になった。校正原稿で指摘したちょっとした間違いも訂正されておらず、誤植のある論文を出してしまったときのような落ち着かない戸惑いも感じた。
勝手に文言が追加されていたことについて編集者に抗議のメールを送ったところ、編集部の意見を受けて、研究者であることを強調してしまったという旨の謝罪が返ってきた。今から考えると、そこまでムキにならなくても……とも思えるのだけれど、初めての育児を夫婦で必死にこなしていた当時は、自分たちのそうした苦労が茶化されているようで、悲しくなってしまったのだと思う。

 メディアや研究者の業界には、それぞれの倫理や価値観があって、それをもとに仕事が発生しお金が流れていく。研究者である私たちは、比較的厳格な (あるいは自己反省的な) 倫理や価値観につねひごろ触れており、ほかの人たちも同様に厳格な基準を行動規範としていると錯覚してしまいがちなのかもしれない。どちらの基準が良いとか悪いとかいう問題はひとまず置いておいて、メディアをはじめとする異なる業界の人たちと仕事をする際には、双方が当然のものと思って意識をすることもない「その業界の常識」を再点検して、倫理や価値観のすりあわせをするべきなのかもしれないと、このできごとから教訓を得たのだった。

(つづく)

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4.FENICSイベント
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1)12月7日(土)に吉祥寺にて第9巻『経験からまなぶ安全対策』のイベントを東京・吉祥寺で開催することが決定しました!

自分自身が、また学生とともにフィールドワークするうえで、必須の重要な問題です。
ぜひご予定にお入れください!!!

2)5月18日に京都精華大で開催したFENICSサロン「フィールドワーカーの研究と育児:院生・PDの場合」でお話いただいたPPT「住まいは富山、大学は東京、フィールドはウガンダ 〜博士課程と育児の両立〜」(大平和希子さん)、「外国人研究者の妻との子育てと仕事」(稲井啓之さん)を、正会員に公開しました!!
ぜひご参考にご覧ください!

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5.会員の活躍
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1)ただいま第4巻『現場で育つ調査力』を絶賛編集中の増田研(長崎大学)さんと、理事の駒沢大佐さんが登場します。
第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に際し、日本国際交流センター(JCIE)により「アジア健康構想」(Asia Health and Wellbeing Initiative: AHWIN)の事業の一環として、TICAD7公式サイドイベント『アフリカの人口高齢化を見据えて-高齢者ケアの「今」と、大陸を越えて共有すべきケアのあり方-』が開催されます。
http://www.jcie.or.jp/japan/2019/06/20/post-3530/?fbclid=IwAR1U_7B9IQOAa2NNh5PDNU4q-X2_DgJHsnRsmOx8Y-hi_Km7L8EdM0xGgFU

時  2019年8月29日(木) 13:00~14:30
会 場  パシフィコ横浜 展示ホールB08 
神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1

共 催  「東アフリカにおける未来の人口高齢化を見据えた福祉とケア空間の学際的探究」科学研究費助成事業プロジェクトチーム、東アジア・ASEAN経済研究センター、公益財団法人 日本国際交流センター、長崎大学
後 援  国立社会保障・人口問題研究所
言 語  英語(日本語・仏語同時通訳あり)
参加費 無料

◆特別挨拶
ナタリア・カネム 国連人口基金事務局長

◆講演
アワ・マリ・コルセック セネガルCN-ITIE理事長、元セネガル保健大臣
プラフラ・ミシュラ   ヘルプエイジ・インターナショナル、アフリカ地域ディレクター
マリキ      インドネシア国家開発企画庁(BAPPENAS)、人口計画・社会保障局ディレクター
増田 研     長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 准教授

◆パネルディスカッション
モデレーター:林 玲子  国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部長

◆閉会挨拶
駒澤 大佐  東アジア・ASEAN経済研究センター 総長参与

2)14巻の『フィールド写真術』にご執筆の松本篤さんが、下記の企画プロジェクトでクラウドファンディングをなさっています。ぜひご協力ください。
以下、松本さんより、

市井の人々の記録に着目したアーカイブプロジェクト・AHA!は、今夏より新たな取り組みをはじめます。

戦時中の子どもたちが書いた”平和への願い”を再びなぞる。
『慰問文集』再々発行プロジェクト。
https://motion-gallery.net/projects/nazoru_to_zureru

80年前に岐阜の小さな村で書かれた「慰問文」を、再々発行するプロジェクトです。
一冊の本を作り、届ける。その仕組みづくりをクラウドファンディングをつうじて行います。
どうしても、今年、2019年中に、この取り組みに着手したく、AHA!はじめての試みにチャレンジします。

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お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
http://www.fenics.jpn.org/contact/
メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/

寄稿者紹介

霊長類学、自然人類学 |

(霊長類学、自然人類学)


学振特別研究員(PD) at 名古屋大学, 国際開発研究科

学校効果研究 / 留年 / 退学 / 転校 / マラウイ / アフリカ / 教育の質 / 学校効果 / 発展途上国 / 初等教育 /学校効果研究 / 留年 / 退学 / 転校 / マラウイ / アフリカ / 教育の質 / 学校効果 / 発展途上国 / 初等教育 /


NPO法人記録と表現とメディアのための組織