FENICS メルマガ Vol.65 2019/12/25    
 
1.今月のFENICS
少々遅れましたが、メリークリスマス!いかがお過ごしでしたか?
我が家は胃腸炎につづきインフルエンザAを乗り越えてのクリスマスでした。1歳児は40度が丸二日続き、大変でした。みなさまも、くれぐれもお気をつけください。  
そろそろフィールドへ移動する/しておられる方もいらっしゃるでしょうか。どうぞ、有意義な日々を。

12月7日のFENICSイベント「フィールドワークのための 経験からまなぶ安全対策」においでいただいた方々、まことにありがとうございました。茅根創さんの、「あなたがフィールドで事故死したら、両親が訴えると思いますか」につづき、「あなたの子どもがフィールドで事故死したら、訴えますか」の冒頭の問いかけには、誰もがうなりました。会場からの質問もあり、参加者が情報共有でき、時世により変化するものの考え方、また行く側、送り出す側の心構えや対策、そして組織とのやりとりへの対策を分野をこえ、組織をこえライブで考える一歩となりました。FENICSが行うべき大きなテーマでもあると認識しました。フィールドワーカー同士が情報共有、現状を改善するために協力するべき課題が多くありそうです。ご意見、話し合いの場の提案などございましたら、いつでもご連絡ください。
 
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研究費等での購入、また図書館へのリクエスト、よろしくおねがいいたします。イベント会場に来られなかった方々は、もう少しで発売です。お楽しみに!目次は、こちらにhttps://fenics.jpn.org/info/fenics_event2019/
 
今年もお世話になりました。応援もありがとうございます。
本号も魅力的な連載をお楽しみください。
目次
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1 今月のFENICS
2 子連れフィールドワーク(2)(松本美予)
3 ボクは「車いすフィールドワーカー」(2)(近正美)
4 FENICSイベント・レポート (吉崎亜由美・椎野若菜)
5 会員の活躍(野中健一・西原智昭)        
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2.子連れフィールドワーク(連載2)
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ちょっと大きい子連れフィールドワーク2(コロンボ滞在3日間)
 
松本美予(地域研究・日本学術振興会RPD・広島大学)
 
調査地は山岳地の農村であったが、資料収集のためスリランカの都市コロンボに3日間滞在した。宿泊先は、通訳兼運転手のSさんのコロンボ郊外にある自宅である。食事は奥さんが作ってくれた。キムチが好物だし、おでんに和辛子をつけて食べるなど、辛さには耐性があると思っていた息子であるが、スリランカ料理のスパイシーな辛さは苦手なようで、食事に関しては可哀想なことをした。奥さんに辛くしないでと頼んでも、彼らが「辛い」と感じる特定のスパイスを抜くだけなので、スパイス自体が苦手な息子にとってはあまり変化がなかったようだ。しかし無理に食べて胃を壊しても困るし、かと言って何も食べないわけにもいかないので、結局、調味料は塩だけにしてくださいと頼み、息子の食事はオムレツ、チャーハン、スパゲティの繰り返しとなった。はじめ、オムレツには胡椒もふってあったので、胡椒もNGだと伝えると奥さんは口をポカンと開けて信じられないという顔をしていた。  

Sさん宅の周りにはたくさんの子供が住んでおり、息子は遊ぶ相手には事欠かなかった。下は5歳くらいから上は11歳くらいまでいて、一緒にボール遊びやかけっこをして遊んでいた。言葉はまったく分からないが、笑顔で友達ができるのだそうだ。なるべく彼らと一緒に遊びたがった息子であるが、私も書籍や地図を入手しなくてはならない。息子も一緒に連れて行くため、お決まりの「また今度ね」を連発した。次男であれば「今度っていつ!」と食ってかかるところだが、そこは4年生。あてにならない「今度」を察していながら、静かにバイバイを友達に告げてついてきてくれた。  

近所の子供達とかけっこをする息子

スリランカでは今年4月に起こったテロ以来、セキュリティが厳しくなっていると言われている。私自身、空港から市街地までそれを実感した出来事はなかったが、地図を購入する時には、2年前との違いを目の当たりにした。前回は、この地図が欲しいと言えば、すぐに売ってもらえたのだが、今回はGIS用のデータを購入するのに手間取った。私の所属機関からの身分証明のレター(念のため準備していた)と、購入するデータの使用目的を説明する自由形式の書類(その場で書いた)が必要で、それらを手にあちこちたらい回しにされた末に2時間かかって購入することができた。その間息子はSさんにジュースをご馳走してもらいながら、文句一つ言わずに待っていた。そのご褒美というわけではないが、次に訪れた書店では息子が好きな本をいくつか買ってあげた。何年か前にはまって読んでいた「ヒックとドラゴン」という小説の英語版を見つけ、挿絵を頼りにどんなお話だったかを思い出しながら読んで(眺めて)楽しんでいた。

郵便局で弟たちに葉書を出す息子

留守番をしている子供たちとは、毎日日本時間の17時頃にテレビ電話で会話した。三男は夜中に起きて「おかーたんがいい」と泣くこともあったようだが、保育園には楽しく通っているし、次男も(いつも以上に)手こずることはないようだった。ただ、テレビ電話を通して、次男は兄を恋しがっているように私は感じた。私と話していても必ず「お兄ちゃんは?」と兄の状況を確認するし、兄と話す時はゲームの進行状況の報告をしたがった。次男も三男も、テレビ電話を切る時は「はいはい、バイバーイ」と笑顔でさっさと切ってしまうし、意外と母親ロスになっていないのでは?と感じ、安心と寂しさとが入り混じった感情を覚えた。あんなに心配したのに。。。しかしこれも、二人の心にぽっかり空いた穴(あるとすればだが)を、たっぷりの愛情で埋めてくれている夫のお陰だと感謝することにした。(つづく)
 
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3.ボクは「車いすフィールドワーカー」②
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近正美(地理学・元高校教員)
 
 「ボクは『車いすフィールドワー』」と名乗っていますが、「車いすフィールドワーク」という概念が確立しているわけではありません。2009年に病気をして、左半身不自由となって、車いす生活になり、必然的に車いすを利用して出歩くことになったわけです。2018年3月末で教員を退職し、“ALL Free”となり、平日の自由を得たので、国会門前行動や裁判の傍聴に気楽に出向くことができるようになりました。後付で「日本の理不尽の現場をフィールドワークする」とテーマを設定しています。その他、「人脈地理学」といって、全国の知り合いを訪ねる行脚と地理学会・研究会などに参加して発言することが楽しみでもあり、勉強にもなっています。アチコチに出歩くと、必然的に地域のバリアフリー状況も分かってきます。  

「行ってみたら、バリアーが」とならないよう、事前に下調べや情報収集を行い、問題があるときは、迂回ルートやプランBを考えておきます。地理を勉強してきたことが、大変役に立っています。現在はネットというツールでたいていの情報は手に入りますが、その情報を現実の空間にどう重ね合わせをするか、GISでいえば、レイヤーということになるのですが、苦労せず空間に情報を整理することができます。  

昨年(2018年5月)、昔、家族で何回か行った裏磐梯のホテルに行くため、現地のバス会社に「車いすで利用可能か」と言わさせると「当社には車いすで乗降できするバスはありません」とキッパリと言われてしまいました。猪苗代駅からホテルまでは、介護タクシーで移動しましたが、バスルートは違う磐梯山の西側の火口をみることができました。猪苗代駅前で現地の路線バスを見て、なぜ車いすで利用できないか、すぐわかりました。路線バスといっても、観光バス型のバスで、スロープなどが設置できないスタイルだったからです。先日ニュースでパラリンピックの話題があり、「車いすで利用できる観光バスは数台しかない」と報じていました。新幹線の車いす用スペースは一編成に一カ所(11号車)しかありません。ラグビーなどのチームの移動はどうするのでしょう?昔と比べると、随分と改善され、ほとんどの場所には不自由なくアクセスできますが、最後に12㌢の段差(ボクの場合、一般には5㌢)があると、どんなに苦労して目的地の前についても、乗り越えることができません。
 
つづく
 
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4.FENICSイベント
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(1)7巻に関するお知らせ(吉崎亜由美さん)
本サイトのお知らせで2018年10月、2019年10月に掲載しておりますように、FENICS正会員で桐朋女子中・高等学校 国際教育センターの吉崎亜由美さんが、桐朋女子高等学校の地理の授業でFENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ7巻『社会問題と出会う』を使って下さり、編者のひとり椎野が出張授業に出かけています。
 このたび『開発教育66号 公正な地球社会のための教育』に吉崎さんの文章が掲載されました。本サイトでもご覧ください(https://fenics.jpn.org/info/ayumiyoshizakilecturereport2019/

授業の様子や『100万人のフィールドワーカーシリーズ』の紹介記事です。

授業の様子は、桐朋女子中・高等学校の桐朋ニュース 
http://www.toho.ac.jp/chuko/tnews/tn-35383/にも報告されています。
 

(2)​12巻『女も男もフィールドへ』に関する活動・東京外国語大一時保育にむけアンケート(椎野若菜)

東京外国語大学の男女共同参画推進部会では、学内保育所の設置の実現にむけ動きだして​います​。​各大学でこうした試みは増加しているもあのの、たいていは常勤教員や​大学に所属している人が対象です。AA研の場合、週末に研究会やワークショップを開催する場合が多いので、小さなお子さんをお持ちの​方、​院生、ポスドク、研究者の方がたが、週末の研究会や打ち合わせへの出席、また東京外国語大学、AA研での資料調査などがしやすいように一時保育を実現できればと考えて​います​。保育所を開かれた場所とするために、AA研をたずねる可能性のある方にも転送歓迎いたします。幼児でなく、小学生のお子様をお持ちの方もお答えいただき、一時託児を利用する可能性があることを記していただけると幸いです。

年末年始のお忙しいなか恐縮ですが、なにとぞご協力のほどよろしくお願い申し上げます。アンケ―トは5分ほどで終わります。

回答のしめきりは2020年1月8日までです。

https://sanda.tufs.ac.jp/childcare/2019/12/20/ichiji/ 

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5.会員の活躍
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1)野中健一さん(立教大学/地理学・生態人類学)
『フィールドワーカーの安全対策』の編者のおひとり、野中健一さんがBayfm『THE FLINTSTONE』1月18日(土)の午後6時~7時に登場します!昆虫食、FENICS,もちろん新刊『フィールドワーカーの安全対策』についても語ります!ぜひお聴きください!
 
2)西原智昭さん(霊長類学者)
FENICS7巻『マスメディアとフィールドワーカー』にご執筆の西原さん。
来る1月8日(水)、「地球が壊れる前に」(ナショナルジオグラフィック社・日本語字幕版)の上映時のトークに登壇。場所は千葉県鎌ケ谷市、時間は15時から。
「ようやく日本人も地球環境異変に関心を持つようになってきましたが、いまだ自分の頭で考えず、流行している対策に疑いも持たず追随したり、一見「エコ」と言われるものが「エゴ」であったり、まだ課題は山積みのようです。上映会のあとのトークでは、そうした点をいくつか指摘しながら会場の皆さんご自身のお考えとともにお話ができればと思っております。」
 
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メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
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